全国名喫茶エリア&名物グルメ。
川口葉子がナビゲート 後編
日本全国にはエリアごとに独自の発展を遂げた喫茶文化があります。その地ならではの特性と、一度は訪れたい喫茶店と代表メニューをライターで喫茶写真家の川口葉子さんに教えてもらいました。
京都|〈 イノダコーヒ本店 〉
観光都市らしい巧みな「おもてなし」が光る喫茶の町。
京都が繊維産業で繁栄を誇った時代に、人々の日常に喫茶店が定着したといわれています。京都らしさを感じるのは、おもてなしのスマートさ。勝手が分からない観光客には親切に質問に答え、常連客には何も言われなくてもいつものメニューをすっと運ぶ。名店といわれる京都の歴史ある喫茶店に共通する魅力です。〈イノダコーヒ〉で大好きなのが「ハムトースト」。具はシンプルにハムとキュウリのみで、甘くないおやつの位置づけです。
大阪|〈 ニューアストリア 〉
食べやすさ、お得感。真のサービス精神が喫茶にも根付く。
大阪の昔ながらの喫茶店のコーヒーは濃い。その理由は、「薄いとコーヒー豆をケチっとると思われるからや」と、ある喫茶店でうかがいました。おいしさにプラスして、ささやかな心づかいが厳しい大阪人を満足させてきたのです。そのひとつが“食べやすさ”。〈ニューアストリア〉の「カツサンド A 野菜入」は厚みがあり、ひとくち大にカットするのは難しいと思うのです。それをスパッときれいに切って出してくれる。これぞ職人技!
神戸|〈 エビアンコーヒー 〉
明治時代から西洋文化の入口として栄え、外国人居留地ができた神戸は、“舶来”の食文化がいち早く開花。昭和時代には、日本を代表するコーヒー企業も誕生しました。関西で初めてサイフォンコーヒーを出した〈エビアンコーヒー〉は、シフォンケーキなどスイーツも人気。
神戸|〈 フロインドリーブ 〉
また、創業100年になる〈フロインドリーブ〉は、ドイツ人である創業者がドイツパンの魅力を広めたとして有名。オープンサンドウィッチはヘルシーで彩りも楽しい一皿です。
愛媛|〈 島のモノ 喫茶 田中戸 〉
土地の誇る柑橘を使ったスペシャルグルメに出合える街。
土愛が強い愛媛の人々は、みかんやいよかんをはじめとする愛媛産の種類豊富な柑橘類が大好き。喫茶店でも地元産の柑橘類を使ったスイーツやしぼりたてのジュースなどに出合えます。〈島のモノ 喫茶 田中戸〉では、県産フルーツにこだわった氷菓子(かき氷)が人気。オーナーの実家で栽培した柑橘を使ったシロップは、いきいきとした果実感があり、キュッとした酸っぱさと舌に残るほろ苦さが、こたえられないおいしさ。自然の恵みの豊かさに目をみはります。
福岡|〈 珈琲美美 〉
伝統的コーヒー店と最新ショップが並ぶ魅惑のコーヒータウン。
福岡はコーヒーが熱い町。歴史あるコーヒー店もあれば、サードウェーブ前後にオープンして人気を集める若いロースター&カフェも多数あり、層の厚さを感じます。濃くて苦いコーヒーは飲めない…そんな人におすすめしたいのが、〈珈琲美美〉の「冷たい美美風マザグラン」。ワイングラス入りの、生クリームを浮かべたアイスコーヒーです。温かいコーヒーをシェーカーに注ぎ、桶に入れた巨大な氷の上で、素早く手で回転させて冷やしたもの。かき混ぜずにどうぞ。
沖縄|〈 喫茶六曜舎 〉
チャンプルー精神が息づく独自の喫茶店文化が発展。
沖縄ではさまざまな要素をチャンプルー(混ぜること)して、独自の食文化が生まれてきました。米軍基地由来のアメリカの食文化の影響も色濃く残っています。古くからある喫茶店では、ナポリタンを注文すると自動的にトーストが付いてくることが多い。コザにある1979年創業の〈喫茶六曜舎〉の「六曜舎ナポリタン」は、一皿の上にナポリタン、ト―スト、サラダ、目玉焼き(昼のみ)、鶏のからあげを盛り合わせた欲張りなメニュー。あとをひくおいしさです。