なつかしくて、新しい場所へ。ただいま台湾、はじめまして台湾。 【COFFEE】あの迪化街でもっとも注目は、 コーヒーストリート。
気軽に旅に出られる日を、どれだけ待ちわびたことだろう。海外への渡航が緩和されたらすぐに出かけたかった、あの場所。ずっと会いたかった台湾へ。台北散策の定番・迪化街(ディファージェ)が、ふたたび活気を取り戻している。“旗振り役”となったのは裏路地に店を構えるコーヒーショップの存在。心弾む発見と出会いが待つ、新しい迪化街に足を運ぶ。
台湾好きにはおなじみの台北・迪化街。19世紀の中頃に貿易拠点として栄え、やがて台湾随一の問屋街に発展。生活雑貨や乾物、漢方を扱う店がひしめくこのエリアは、地元の人や観光客でにぎわう活気あふれるストリートだった。
ところが、コロナ禍でその様子は一変。行き交う人もまばらになり、なかには閉店を余儀なくされた店もあった。
昨年の秋から外国人観光客の入国規制が大幅に緩和され、台湾に暮らす人々も安堵と喜びに沸いていると話すのは、迪化街で自身のギャラリー&ショップ〈你好我好(ニーハオウーハオ)〉を営む青木由香さんだ。店先に貼られた紙には「祝観光開封!」の文字。「台湾に観光客が戻ってきてくれるのがうれしくて、自分で書いたんです」と顔をほころばせる。
少しずつ、かつてのにぎわいを取り戻している迪化街には、最近もうひとつの変化が。青木さんが店を構える「職人巷(ズレンシャン)」と呼ばれる路地にあるコーヒーショップを目指して、多くの人が訪れるようになったのだという。通りの長さでいえば、50mほどの路地。その一番奥にある〈菸花(イェンファ) Op. 118. 2〉は、台湾のコーヒー好きにはよく知られた存在で、青木さんいわく「台湾コーヒー界のドン」。オーナーの高振御(カウツンユイ)さんは台湾のカフェ文化を牽引してきたパイオニアで、2021年に台北・松山で新しい店をスタートさせたが、コロナの影響で現在の場所に移転。
クラシック音楽を愛する心優しき“ドン”のコーヒーを目当てに訪れるお客が増えて、通りの流れが変わったと話すのは、数軒隣で〈幻猻家珈琲(ファンソンジェ) pallas Café〉を営むBENさんとArtuRoさんだ。「今、台湾では若い世代によって新しいコーヒーカルチャーが生まれています。コーヒーを通して街が活性化するのはとてもうれしい」という。
なぜ、台湾でこれほどコーヒーが盛り上がっているのかと聞くと、「台湾人はあまりお酒を飲まないからね」と茶目っ気を見せる。
「職人巷」は隣り合う店同士の交流も深く、コーヒーや買い物以外にも魅力が。人の流れが活性化するなかで、子どもも大人も楽しめるようにと、みなで相談しながらイベントなども開催しており、その日は、小さな路地が大にぎわい。
迪化街の北側に位置する大稲埕(ダーダオツェン)で〈TWATUTIA Coffee&Co.(トゥワトゥイア コーヒーアンドコー)〉を営む許博軒(シュウヴォーシェン)さんは「北欧やオーストラリア、日本でコーヒーを学び、台湾に帰ってきて店を始める人が増えたこともあり、コーヒー文化がより多彩になっている」と話す。
“つながり”によって生まれる、新たなムーブメント。ますます魅力的に進化している台湾を、今こそ体感したい。
迪化街以外のエリアにも 人気のコーヒーショップが。
台湾のコーヒー文化は年々、広がりを見せており、台北のいたるところでおいしいコーヒーを気軽に味わうことができる。レトロな風情に心癒される喫茶店や山の上のカフェなど、台湾産の豆を扱い、自家焙煎する店も増えており、ますますコーヒー文化が成熟する予感だ。
1. 小吉市場(シャオジェイスーチャン)
通りからは入口が見えないが、建物の間にある路地を入れば何気ない階段が。そこを上っていくと隠れ家的なカフェ〈小吉市場〉がある。
プリンなどの自家製おやつとコーヒーが自慢。
住所:台北市中正區南昌路二段111號2樓 │ 中正
営業時間;12:30~19:30
定休日:日月火休 11席
TEL:0935-504-665
2. CAMA COFFEE ROASTERS(カマコーヒーロースターズ)
コーヒーチェーン店〈cama café〉初のフラッグシップショップ。台北市内からバスで約30分。
日本家屋をリノベーションした店内で、清々しい空気を感じながら飲むコーヒーは格別。
住所:台北市士林區格致路70號 │ 士林
営業時間:9:00~19:30(土日~20:00)
定休日:無休 70席
TEL:02-2861-1218