焼菓子がある時間。PART #2 ( STORY )
カフェの名店が放つ、心にしみる焼菓子。
「カフェって素敵。カフェで過ごす時間って豊かだ」と教えてくれた名店に、焼菓子が増えている。シンプルだけど、食べるとしみじみおいしい。この店を愛してやまないスタッフの思いが詰まっている。
栃木県黒磯の街角にある大きな駐車場に次から次に車がやってくる。お目当ては〈1988 CAFE SHOZO〉だ。カフェブームの先がけとなった名店中の名店である。店名通り、35年前にオープン。進展を続け、現在6店舗。黒磯は、このカフェができたことで周囲に店が増え、通りがにぎわい、街に活気が戻ってきた。「2時間かけて来てくださったお客様には、2時間は楽しんでもらいたい。そういう街にしたかったんです」と、店主・菊地省三さん。せっかく来てくれたのに、2階のカフェで30分お茶を飲むだけでは申し訳ない。店を開く前に各地を旅したからこそ思うことだ。店のあちこちに、そんな旅人の視点がある。
1階のショップを覗くと、棚にずらりと焼菓子が並ぶ。開店当初からスコーンはあったが、ここ数年、種類が増え、多彩になった。「コロナ禍になったでしょ。通販を始めたんです。お客様からの要望もあり、また、スタッフたちも、もっといろいろ作ってみたくなったりで、どんどん増えていったんです」
これまで訪ねてみたいと熱望していたにもかかわらず、なかなか機会がなかった人でも、〈SHOZO〉のおいしさ、楽しさに触れられるようになった。ありがたい話である。年末には、期間限定のしゃれたクッキー缶も登場。これからもワクワクするような限定品が現れそうだ。焼菓子は店舗によってオリジナルがあり、そこに行かないと買えないものもあるそうだ。これまた、ワクワクである。
丸とか四角とかシンプルな形が並ぶ中で目立つのが、シンボルでもある象さん形のチョコクッキー。カリッカリなのに、口の中でだんだん滑らかになり、濃厚チョコに変わる。
「僕は広げていくタイプではなくて、狭めてストイックに突き詰めていくタイプ。だから、こんなに多様になっていいのかと思ってしまう(笑)」と、省三さん。いいんですよ、それがみんな楽しみなんですから。
世田谷にも〈SHOZO〉がオープンし、 早くも多くのファンが。
昨年7月、〈SHOZO〉の新しいお店が都内に誕生した。かわいらしい焼菓子店〈POPPY〉だ。那須の〈SHOZO〉からやってきた松本海央さんと東京の〈SHOZO〉で働いていた石田香月さんの二人が切り盛りする。ここで作られる焼菓子はお店での販売のみ。バナナブレッドやバターミルクビスケット、季節のガレットなど8種のお菓子でウインドーが飾られる。