注目を集める“日本産ワイン”。 長野・高山村でワイナリー巡り。おつまみにぴったりな生ハム&チーズが買えるショップも。
近年、これまでになく注目を集めている日本産ワイン。高品質のワイン用葡萄の生産地、高山村も本格的なワイン造りに乗り出しました。その未来を覗いて見れば……。
長野・高山村のワインの未来を担う人々を訪ねて。
〈信州たかやまワイナリー〉
長野県の北東部、渓谷の下に広がるのどかな山里の高山村に、今静かな熱気が満ちている。地元の産物を扱う店で「高山村ワイン」の説明をしてくれる店主や、宿の夕食にワインを選ぶ客を見守る仲居さんの、どこか自分の家族を紹介するような慎み深い笑顔が印象的だった。ワインをめぐり、この村で何かが動き出している。村内のワイナリーや葡萄栽培家を訪ねてみたくなったのは、そんなバイブレーションを感じたからだった。
雨が少なく、標高の高い高山村は林檎や生食用葡萄など果実栽培が盛んな土地。そこにワインのための葡萄品種が植えられたのは1996年。そう教えてくれたのは、葡萄栽培から醸造までを村内で担う100%高山村のワインを出荷した〈信州たかやまワイナリー〉の醸造責任者、鷹野永一さんだ。
大手ワインメーカーとの契約で始まった栽培の高い品質が評判を呼び、栽培面積も飛躍的に増加。こうしてついに、生産者13者の合同出資によるワイナリーが誕生した。ここで醸造家として働く鷹野さんの元に、今ワイン造りに情熱を燃やす若者たちが、研修生として集まってきている。
「彼らが目指しているのは、葡萄栽培から醸造までを手がけ、自分のワインを造るワイン生産者。『醸造家』は僕が最後ですよ」と鷹野さんはうれしそうに言う。村内のワイン造りを長年夢見た生産者たちの思いはこのワイナリーを経て、若者たちが未来へ繋ぐ。
〈信州たかやまワイナリー〉
高山村の新ワイナリーに集う多数の若者が修業中。
■長野県上高井郡高山村高井字裏原7926
■http://www.shinshu-takayama.wine
〈ドメーヌ長谷〉
世界中で「ワインは特別な酒」と称されるのは、原材料(葡萄)からワインまでの過程を同じ人が(シャトーやドメーヌの名の元だとしても)その場所で育む稀有の酒だから。つまり畑を持つ生産者の数だけ個性あふれる固有のワインが生まれる!
高山村のその一人が、東京から家族で移り住み、ワイナリー〈ドメーヌ長谷〉を開設した長谷光浩さんだ。
「とにかくワインが好きで。本当に好きなことをして生きていきたい」と、畑を探して各地を回った末、高山村の耕作放棄地に直感的に「ここだ」と感じたと言う。虫も動物もいるこの地の環境に適応する農業をやりたいと、自分なりのワイン造りが始まったばかり。
〈ドメーヌ長谷〉
以前は東京の音楽業界で働いていた長谷光浩さんの長年の夢が叶ったのが、高山村。「葡萄自身がこの環境に合わせて生き抜く力を信じ、自分なりの方法でワインを造る」という。
■www.instagram.com/hikaru_farm/
〈佐藤農園〉
もう一人、高山村のワインを支える名栽培家、佐藤明夫さんにもお話を伺った。佐藤さんはワインは造らない。にもかかわらず、大手メーカーのワインに自身の名が刻まれるほど、彼の葡萄のポテンシャルは高い。
「水はけの良い大地、高い標高、さらに村内の標高差は同じ品種を植えてもその結果はみな異なる。つまり、まだまだ葡萄のために僕らがしてあげられることがあるんです」と力強く語る。高山村に漂う熱気はやはり本物だった。
〈佐藤農園〉
高山村初のワイン用葡萄を植えた父を持つ佐藤明夫さん。「Akio」の名を冠すワインが毎年リリースされるほど、佐藤農園の葡萄は特別な存在。
■長野県上高井郡高山村大字牧字上福井2502-7
■www.nagano-wine.jp/special/winery/807/
ワインにぴったりのおいしいつまみも村内に。
〈見晴茶屋〉米、野菜、チーズも自家製。山田牧場の隠れ名店。
山田牧場前の老舗食堂。そのオーナー一家の食材への情熱に脱帽。村内の生乳を自ら低温殺菌する牛乳からソフトクリームやチーズを作り、熊に会う危険も顧みず山菜や茸(根曲茸など)を採取。
米や野菜も無農薬で自家栽培。何もかもがおいしい!
〈見晴茶屋〉
■長野県上高井郡高山村山田牧場3681-130
■026-242-2804
■10:00~16:00 不定休
■60席/分煙
〈豚家 TONYA〉村随一の葡萄生産者が作る熟成1〜2年の生ハム。
葡萄生産者の佐藤さんはワインは造らない。が、なんとワインにぴったりの生ハムを作る。
冷涼な気候を生かし、指折りの県内産ブランド豚の腿を骨つきのままゆっくり熟成。
しっとり甘味のある本格生ハムはオーナー制度の受注が基本。事前のアポ入れでスライス販売も可。
〈豚家 TONYA〉
■長野県上高井郡高山村大字牧字上福井2502-7
■FAX 026-2859-920
■アポイント制
(Hanako特別編集『心なごむ、日本の宿へ。』掲載/photo : Kenya Abe edit & text : Chiyo Sagae)
【お知らせ】Hanako.tokyoでは基本的に本体価格を掲載しておりますが、2019年10月1日の消費税率改定以前に取材・掲載した記事にある(税込)表記の金額については、旧税率での掲載となっております。ご了承下さい。