市内の90%が森!岐阜県高山市でわざわざ訪ねたい、手仕事が光るクラフト店3選

市内の90%が森!岐阜県高山市でわざわざ訪ねたい、手仕事が光るクラフト店3選
市内の90%が森!岐阜県高山市でわざわざ訪ねたい、手仕事が光るクラフト店3選
CULTURE 2025.01.22
岐阜県高山市を中心とする飛騨地方。東京都と同じほどの広さを持つ市内のおよそ90%が森だという。豊かな山林資源を背景に育まれた木工技術は〝飛騨の匠〞を生み、中心地の高山には町家建築の町並みが今も残り、伝統的な手仕事が受け継がれている。そんな飛騨地方で訪れたい場所を紹介します。
photo_Tetsuya Ito text & edit_Kana Umehara

1. やわい屋/生活道具店

岐阜のやわい屋の店内
遠方から訪れたお客さんと器を手に話し込む朝倉さん(右端) 。店には沖縄のやちむんや長崎の器なども。

自然と共生するための暮らしの道具を見つめる場所。

暮らしに根付く民芸に心惹かれるなら、訪れてほしいのがこちら。高山市内からは車で30分ほど。町と離れた山間の集落にあるものの、築約150年の古民家を移築し再生したお店からは、飛騨高山の風土が色濃く匂い立つ。「民芸や工芸は土地の成り立ちや暮らし方と密接に結びついています。地域に根差し、伝統あるものを今の暮らしとどうなじませ、伝えていこうかといつも考えています」と飛騨生まれの店主・朝倉圭一さん。店には地元以外のものも置いてあるが、飛騨伝統の木工の品や、高山に工房を持つガラス作家の作品が特に目を引く。店内に積まれた朝倉さんの蔵書を紐解きながら、飛騨高山と民芸の関わりについての話を聞くのも面白い。

〈山上(やまじょう)〉の花器

〈山上(やまじょう)〉の花器

京焼民窯(みんよう)で知られる河井透氏に師事し、民藝陶器の伝統を守る宮崎匠さん(屋号〈山上〉) の器も、朝倉さんのおすすめ。左から3,740円、3,740円、3,960円。

安土草多(あづちそうた)さんのペンダントライト

安土草多(あづちそうた)さんのペンダントライト

父である安土忠久さんに宙吹きを学び、高山市内に築窯・独立したガラス作家。ペンダントライトの人気が高く、〈やわい屋〉 には常時50種ほど並ぶ。15,000円~。

〈奥井木工舎(おくいもっこうしゃ)〉 の木杓子(左)と雪入道(ゆきにゅうどう)

〈奥井木工舎(おくいもっこうしゃ)〉 の木杓子(左)と雪入道(ゆきにゅうどう)

左:随筆家の白洲正子が“杓子の中の王者”と称えた有道杓子を使いやすく改良。ホオノキを丸太から木取りし手作業で作る。 大8,250円。右:江戸時代より続く伝統工芸品の有道杓子(うとうしゃくし)。その伝統を引き継ぐ〈奥井木工舎〉 が、杓子作りの端材を活用し作る新しい郷土玩具。雪入道とは飛騨に口伝で伝わる妖怪。小2,500円、大3,630円。

information
やわい屋

住所:岐阜県高山市国府町宇津江1372-2
TEL:0577-77-9574
営業時間:13:00~17:00
定休日:火水木祝休(事前相談で休日開店可)

屋根裏には「民藝」 や人文学、飛騨の歴史に関する蔵書を置く私設図書館も併設。

2. 風光ル/工芸品店

高山市の風光ル

飛騨高山が受け継ぐ工芸の魅力を知る、茶のひととき。

「飛騨高山の古い町並みを訪れると歴史的な建築物や伝統工芸品を見ることができますが、今活躍する若い大工さんや木地師、塗師(ぬし)たちが生み出した道具に触れる場所があまりない。ここではそんな飛騨高山の美しい工芸の技を紹介できればと思っています」と店主の蓑谷百合子(みのたにゆりこ)さん。大手輸入家具メーカーでの勤務経験を持つ蓑谷さんが飛騨高山に拠点を移したのは2021年のこと。この地の手仕事の豊かさに感銘を受け、茶道具を通じその伝統美を伝えることを思いついた。店の1階には洗練された道具が並び、2階の茶室で点前体験ができる。「茶の時間を持つことで今を生きる工芸品に触れて、その良さを知ってもらいたいです」

〈木地工房 西為(きじこうぼう にしため)〉 のヒノキ曲げ弁当箱

〈木地工房 西為(きじこうぼう にしため)〉 のヒノキ曲げ弁当箱

飛騨伝統の漆工芸「春慶塗(しゅんけいぬり)」 の木地製作を手がける工房に依頼したオリジナル。樹齢100年以上のヒノキを型で曲げる「曲げ技」 が光る。小判型8,800円、2段18,700円。

information
風光ル

住所:岐阜県高山市上一之町98-1
TEL:非公開

木造の町家が連なるさんまちエリアに位置。近くには古い酒造なども。技術の伝承だけでなく地産漆の保護活動なども行う。

※茶道体験は予約制。@kazehikaru_takayama からアポイントを。

3. 遊朴館 HIDA GALLERY/ギャラリー

遊朴館 HIDA GALLERYの外観

木工文化の未来を発信。進化するアートギャラリー。

飛騨を代表する木工家具の老舗〈飛驒産業〉が郷土の作家を中心に紹介していたギャラリー〈遊朴館〉をリニューアル。2024年10月に再オープンを果たした。設計を手がけたのは建築家の中村好文と家具デザイナーの小泉誠。皮切りの展示では“生活工芸”の第一人者である三谷龍二をはじめ信州の木工作家に着目。木とともにあるこれからの暮らしについて考えた。今後も、ベテランから若手まで幅広い手仕事の作り手を取り上げながら日本の木工文化の発信地としての役割を果たす。ギャラリーは2階にあり、1階にはクラフトを扱うショップをオープン予定(現在ポップアップショップとして営業中) 。様々な作家との出会いの場となりそうだ。

松尾吉一(まつおよしかず)さんの木鳥(ことり)

松尾吉一(まつおよしかず)さんの木鳥(ことり)

高山で30年以上にわたり、木鳥を作り続ける松尾吉一さん。木目が美しいオブジェは、台座の年輪にアロマオイルを垂らせばディフューザーにもなる。38,500円。

information
遊朴館 HIDA GALLERY

住所:岐阜県高山市上一之町26
TEL:0577-32-8892
営業時間:10:00~18:00
定休日:水休

ショップにはクラフト作家による生活雑貨が並ぶほか、鑿(のみ)や鉋(かんな)などの木工具も展示販売。その場で刃物の試し削りもできる。

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