『ライオンの隠れ家』『無能の鷹』など今期のドラマどうだった？オラリーの今期気になる地上波ドラマ～2024年10月期～
『ライオンの隠れ家』（毎週金曜22：00／TBS系）
両親を亡くし慎ましく生きてきた兄・洸人（柳楽優弥さん）と、自閉スペクトラム症の弟・美路人（坂東龍汰さん）の前に突然現れた、”ライオン”と名乗る小さな男の子（佐藤大空さん）。訳も分からず始まった共同生活に戸惑いながらも、3人で助け合い、それぞれが成長していくストーリー。
”ライオン”は行方不明になっていた2人の姉・橘愛生（尾野真千子さん）の息子で、さらには夫のDVから逃げているという事実が判明するのですが、かつて「誰も知らない」でネグレクトを受けていた少年を演じていた柳楽さんが虐待を受けている”ライオン”を守る…という構図に、個人的にはかなりグッときてしまいました。一変した生活に振り回される洸人が、はしゃぐ美路人と”ライオン”を見つめ「疲れるなぁ…」と小さな笑みをこぼすシーン、何度見ても泣けます。皆それぞれに前を向き、同じプライド（群れ）の仲間として自由に羽ばたいていくラストも清々しかった！ 登場人物全員が幸せになってほしいと祈りたくなる、素晴らしいドラマでした！
『無能の鷹』（毎週金曜23：15／テレビ朝日系）
見るからにデキるオーラを纏っているのに実は何にも出来ない無能な新入社員・鷹野ツメ子（菜々緒さん）が、盛大に勘違いされながらなぜか奇跡を起こしていくお仕事コメディ。とにかく今期一番笑いました！
かっこよく出社したと思ったら自分の部署を通り過ぎ、同僚たちが「ちょ、こっちこっち！」と呼び止めるオープ二ングで毎回笑い、なぜか降り立った東武ワールドスクウェアの世界遺産をバックに取引先とリモート商談し、グローバルだと賞賛され商談がうまくいって笑い…。仕事は全く出来ないのに、いつの間にかそこに居てほしい存在となった鷹野。「仕事が出来なくても生きてるだけで皆偉いのでは？」という鷹野の言葉に、雉谷（工藤阿須加さん）が「みんなが鷹野のようにはなれないんだよ」と優しく言い返すシーンがありましたが、どちらの考えも正しくて、両極端なこの感情が自分の中にバランス良くあれば良いのかも、と私は思いました。忙しい毎日の中で時折鷹野ツメ子の精神を心がけ、清々しさを取り戻していくことが大事なのかもしれません。シーズン2、期待してます！
『放課後カルテ』（毎週土曜21：00／日本テレビ系）
訳あって小学校の保健室に常駐することになった小児科医の牧野（松下洸平さん）が、子どもたちや保護者、教師との関わりを通して共に成長していく保健室ヒューマンドラマ。毎話子どもたちの小さな違和感から重大なSOSを見つけ出し、最低限の距離を保ちながら、厳しく、優しく接していく牧野先生。うちの子たちもこういう先生に出会えるといいな…と思わず願ってしまいました。
幼いながらも素直な子どもたちは物事の本質にきちんと気付くことができて、牧野先生を信頼していきます。そんな先生の影響もあって、身体的・精神的な病に心底悩み苦しみながらも、成長していく子どもたち。ほんの少しずつ大人の手を離れていく子どもたちの未来を想えることのありがたさと寂しさを改めて思い返しつつ、これからも多様化していくであろうそれぞれの困難さに、私自身も向き合っていきたいと思える、優しいドラマでした！
『離婚後夜』（毎週日曜24：10／朝日放送系）
他人にあまり興味のない伊織（佐野晶哉さん）が初めて恋をしたのは、バイト先の常連客であった小説家の香帆（久保田紗友さん）だった。香帆は既婚者であったが、モラハラ夫の真也（長谷川慎さん）の浮気現場を目撃し、離婚を決意。家を出ることになってしまった香帆は、新しい家が見つかるまで、大企業の社長を父に持つ伊織の広い家で共同生活をすることに…。年下からの告白、モラハラ夫、突然始まる共同生活…こんなシチュエーションでありながら、キュンキュンドラマではないしスカッと制裁を下すドラマでもなく、終始凪いでいて静かなドラマでした。
なかなかあり得ない状況にも関わらず登場人物全員のトーンが常に少し暗く落ち着いて、こんな状況でも達観しているような空気感が何だか妙にリアルで好きでした。ラストは伊織と香帆のハッピーエンドでしたが、個人的には香帆を失い、分かりやすくダークサイドに落ちていく真也をもっと深掘りしてほしかったな～と思いました！
『マイダイアリー』（毎週日曜22：15／朝日放送系）
社会人1年目となった主人公・優希（清原果耶さん）が、日記を読み返すように過去の大切な思い出を振り返るヒューマンドラマ。大学生活に物足りなさを感じていた優希、ギフテッドであるが故に孤立した過去を持つ広海（佐野勇斗さん）、幼い頃に起きた出来事が原因で心を開くことに不安を持ったまひる（吉川愛さん）、「好き」という恋愛感情がいまいち理解できない愛莉（見上愛さん）、困っている人を放っておけず自分を犠牲にしてしまいがちな虎之助（望月歩さん）。5人とも魅力的なキャスティング、キャラクターで、若さ故の苦悩にもがく姿が淡々と描かれているところは好きでした！
それぞれにフィーチャーした5話くらいまでは結構面白く見ていたのですが、広海と付き合うことになった優希がちょっと自暴自棄になっていくところはあまり共感出来ず…後半からラストにかけて若干失速していった印象でした。自分がこの登場人物たちと同年代だったら、もう少し理解出来たのかも…？ 恋愛ターンはもう少しコンパクトでも良かったかな～と、個人的には思いました！
今期は他に、定時制高校に通う年齢も生い立ちもバラバラな生徒たちが科学の学会発表を目指す「宙わたる教室」（原作本を買うほどハマりました）、突然の共同生活に戸惑う2人が亡き人の思い出の料理で距離を縮めていく「高杉さん家のおべんとう」も良かったです！
illustration：Misa Itoi edit：Kei Kawaura
