今期のドラマどうだった?オラリーの今期気になる地上波ドラマ
〜振り返り 2023年7月期〜
この夏は、伏線回収モリモリの話題の超大作をはじめ、さまざまなドラマが放送されましたが、みなさんはどのドラマが心に残りましたか?
毎クール10作ほどのドラマをチェックし、朝ドラや配信作品にも目がないドラマラバー・オラリーさんが、2023年夏期のドラマを振り返ります。前回記事はこちらから。
『こっち向いてよ向井くん』(毎週水曜22:00/日本テレビ系)
初回から数話は予想通り、赤楚衛二さん演じる向井くんが身近な女性たちに翻弄されていくコメディという印象でしたが、妹夫婦の離婚危機問題をきっかけに、友達・恋人・夫婦・家族とは?という、改めて考えてみると何だか曖昧な、その不思議な関係性について迫っていきました。
妹の麻美を演じる藤原さくらさん、結婚という不平等な制度に疑問を抱いているにも関わらず、時に妻という権利を行使してしまう自分もいる…という複雑な心情をしっかり演じきっていて、素晴らしかったです!
向井くんは今流行りの“タイパ”とは無縁なキャラクターで、とにかく時間をかけて、たくさん考えてたくさん対話していましたね。その姿は効率が悪く不器用にも見えるけど、相手を思いやっているからこそ。末長く一緒にいるために時間をかけて向かい合って、お互いの最善策を常に対話し続ける気持ちが大事なんだな~と、改めて思える良い作品でした。
『初恋、ざらり』(毎週金曜24:12/テレビ東京)
今期の中でも特に感情移入して、胸が締め付けられたドラマでした。小野花梨さん演じる軽度の障害を持った有紗が、いつも一生懸命で本当に愛おしかったです。風間俊介さん演じる優しい岡村や職場の面々と有紗の思いが少しずつずれていくにつれ、度々襲う深い水底のような音は、幸福だった水族館デートを思わせるものではなく、いつしか息苦しい世界を表すものになってしまいました。
ラスト、岡村は有紗のためではなく、初めて自分自身のためだけに行動します。自分と居ると有紗がつらい思いをする、けれども、有紗が居ないと自分がつらい。世界から必要とされていないと思い込んで生きてきた有紗が、一番大事な人に必要とされた、という最高の結末。清々しく泣けました。
ドラマを見終えてから原作漫画も読みましたが、ドラマでは描かれなかった岡村の母と有紗のその後のやりとりが読めます。かなりおすすめです。
『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(毎週土曜22:00/日本テレビ系)
毎話、生徒と松岡茉優さん演じる九条先生の長台詞対話の熱量が凄まじく、クラスそのものが実在しているかのような説得力がありました。ただ中盤、毎話きれいに全員更生するな~とも思ってしまい、皆の理解力の良さに少し違和感もあり…そんな気持ちに応えてくれた、奥平大兼さん演じる星崎の最終話。
何に対しても無感情で心が動かず、変われないと諦める星崎。九条先生を突き落とすことに殺意や快楽もない。次々に更生していくクラスメイトと同調できない苦しさ、世界が白黒で色がつかないと、淡々と話す星崎のうつろな眼差しが本当につらそうで、悲しくて泣けました。
説得も虚しく死を選ぼうとする星崎、そこへ駆けつけたクラスメイトたちを見て、「色がついてるわ、みんなに」と半笑いで言うシーン。号泣でした。ここまでのストーリーはすべてこの最終話のためにあったと言っても過言ではありません!タイトルの■に入る文字ははっきりと明示されませんでしたが、個人的には”託された”、”生かされた”、あたりかなと思っています。
『真夏のシンデレラ』(毎週月曜21:00/フジテレビ系)
交錯しまくる恋愛模様がメインストーリーではありましたが、個人的には男子3人、女子3人それぞれの友情関係が好きでした。特に萩原利久さん演じる修は極端にデリカシーも思いやりもないヒドい役柄でしたが、間宮祥太朗さん演じる健人と白濱亜嵐さん演じる守だけはそんな修を見放さず、良いところも悪いところも理解し信頼し合っている関係性が良かったです。
その修からひどい言葉をかけられた森七菜さん演じる夏海をかばい、吉川愛さん演じる愛梨がブチ切れるシーンも好きでした!ロケーションも気持ちよく、旅行のような気分も味わえました。ただ色々と未回収な部分も多く、もうちょいそれぞれのキャラクターを深掘りしてほしかったというのが本音です、、!
『紅さすライフ』(毎週月曜24:59/日本テレビ系)
終始爽やかでかわいらしい主演のお2人、最後まで微笑ましかったです!基本はメンズコスメブランド設立を目指す2人の話ではありましたが、随所に世の中のジェンダーバランス問題が組み込まれていてなかなか見応えがありました。
実力は十分あるのに、女であるという理由だけで助教授になれなかった井桁弘恵さん演じるすっぴん女子・頼子が、フルメイクをするのは1度きりで、最後までリップのみというところも個人的に好きでした!
メイクをするかしないかは個人の自由、性別も生い立ちも関係なくそれぞれが好きなことに向き合っていくストーリーはいつでも胸を打ちますね。期待していたコウメ太夫さんの演技も素晴らしかったです。ラストの紅を差そうとして苦笑いする姿、哀愁たっぷりで渋かった!今後の活躍も楽しみです!
『ハヤブサ消防団』(毎週木曜21:00/テレビ朝日系)
とにかく終始不穏で画面の空気が重く、予想以上にホラー要素強めで引き込まれました!都会から移住した中村倫也さん演じる三馬太郎が田舎特有のしきたりなどに縛られていく話かな~と思いきや、ハヤブサという土地と住民たちを愛し、それらを脅かす新興宗教団体から守っていくという意外な話でした。
初回からずっと怪しかった古川雄大さん演じるルミナスソーラー営業マンの真鍋がしっかりと黒で、且つさらに狂人となって登場するラストが最高でした。キャストが本当に豪華で全員素晴らしかったのですが、浩喜演じる一ノ瀬ワタルさんの存在感が特に凄すぎました!第1話で即死んでしまうのに、生い茂る緑の中でぬりかべのように大きい身体で黙って睨んでいるシーンが強烈すぎて、死んでもなお、何度も頭の中をよぎりました。浩喜の過去を描いたスピンオフ、期待してます!
上記6作品以外では、後半の展開が予想外すぎた『彼女たちの犯罪』、ASMR的心地よさがあった『量産型リコ -もう一人のプラモ女子の人生組み立て記-』、ラジオ好きな高校生の青春模様を描いた『僕たちの校内放送』も良かったです!