いいね!は社会の映し鏡。 カルチャー発ソーシャル行 Meet #1/
クィア・アイ:ドイツ編+プリズン・サークル

CULTURE 2023.03.13

映画、小説、音楽、ドキュメンタリー…あらゆるカルチャーにはその時代の空気や変化が反映されています。そんな「社会の写し鏡」ともいえる、秀逸な作品を編集部Sが紹介。

人生の喪失や自己放棄から“回復”する人々の物語。

Netflixのリアリティ番組『クィア・アイ 外見も内面もステキに改造』が好きだ。舞台はアメリカ。“ファブ5”と呼ばれるクィアな5人組が、離婚や失職など人生の踊り場で苦しむ人を、ファッション、美容、料理、マインドと多角的に改造することで再出発の手助けをする。そこには「ザ・変身〜!」なカタルシスもあるが、この番組が高い共感を得るのは誰もが陥る可能性のある、人生の喪失や自己放棄からの「回復」を真正面から描いているから。 そのドイツ版が今年登場した。控えめで寄り添うケアのスタイルは、ポジティブワードのシャワーで押し切るアメリカ版と異なる新鮮さが。

『クィア・アイ:ドイツ編』(Netflix、2022年)/大人気シリーズがドイツでリブート。「教えてあげる」のではなく「一緒に考える」のがドイツの“ファブ5”流。公式サイト

“回復”といえば、初めて日本の刑務所にカメラを入れたドキュメンタリー映画『プリズン・サークル』(2019)が忘れられない。自分は加害者ではなく被害者だ、という意識の強い受刑者が少なくないことに驚く。幼少期、DVや貧困など過酷な環境で育ったことが原因に多く、彼らに必要なのは処罰ではなく回復である、として受刑者同士の対話をベースに更生を促す「TC(回復共同体)」プログラムの実践に密着。監督の坂上香さんがその撮影過程と後日談を綴った書籍『プリズン・サークル』では出所後の受刑者との交流や、監督本人が抱えていた傷が書かれる。

『プリズン・サークル』坂上 香・著/なぜ彼らは犯罪を起こしたのか、どうすれば更生できるのか。取材許可まで6年、撮影2年、10年超の制作の軌跡。(岩波書店/2,200円)公式サイト

どちらにも共通するのは、人は誰かと話し、共感することで回復していくということ。

[今月の担当]編集部S/ドキュメンタリー好き。夜は配信を観ながらだいたい寝落ち。Twitter:@bakatono72

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