いいね!は社会の映し鏡。 カルチャー発ソーシャル行Meet #7/
この部屋から東京タワーは永遠に見えない+サイバーパンク:エッジランナーズ

CULTURE 2023.02.24

映画、小説、音楽、ドキュメンタリー…あらゆるカルチャーにはその時代の空気や変化が反映されています。そんな「社会の写し鏡」ともいえる、秀逸な作品を編集部Sが紹介。

タワマン文学に寄せられた、大量のAmazonカスタマーレビューの中身とは。

SNSで大きな話題を呼んだ短編集『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』。物語は、いわゆる難関大学を卒業し、外資系やIT企業など高給の職に就き、家庭を持ち、タワマンに住む、中流階級すごろくの理想的な上がりをした男女の出口なしの空漠が描かれている。令和の『なんとなく、クリスタル』(古!)とか、“ゼロ成長世代”のアンチ・ビルドゥングスロマン文学など、キャッチフレーズ(らしき)ものを考えていたら、Amazonのカスタマーレビューを見てぶっ飛んだ。「これは僕の物語だ」「これは私の人生だ」。自己と作品を同一化したようなシンクロ率100%の熱狂的なレビューが大量に連なっている。作品のフォーマットを借りて、自分の東京物語を綴った文章を投稿している人まで。これは令和の(一見)恵まれた層の「電車男」なのかも。

『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』麻布競馬場・著/昨年末スタートしたツイッター小説が反響を呼び単行本に。匿名の著者は31歳の会社員。執筆はスマホだとか。(集英社)公式サイトAmazon

巨大都市における格差社会を舞台にした物語をもう一つ。アニメーション『サイバーパンク:エッジランナーズ』。お金のない者の命や安全が軽く扱われ、圧倒的格差と危険が同居する近未来の巨大都市で、傭兵として自らの体を改造しながら生き残ろうとする主人公と仲間の物語。音と映像と物語の3つがシンクロ率100%で疾走。このジェットコースターを途中で降りられるわけもなく、全10話イッキ見で翌日睡眠不足に。聞けば、世界でも大ヒットとのこと。大納得。

サイバーパンク:エッジランナーズ』/ゲーム『サイバーパンク2077』をベースに、ポーランドのゲーム会社〈CD Projekt RED〉と日本のアニメ制作会社〈トリガー〉による合作。(Netflix)公式サイト

[今月の担当]編集部S/ドキュメンタリー好き。今年のベストはETV特集『ぼくは しんだ じぶんで しんだ 谷川俊太郎と死の絵本』(Eテレ)。NHKオンデマンドで視聴可。

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