花井悠希の朝パン日誌 大注目の2店舗をお届け!夏の京都をご機嫌に楽しむパンホッピング

LEARN 2022.07.07

京都の夏は暑い。わかっているはずなのに行きたくなってしまうのが京都という街の引力。目を閉じれば浮かんでくる静々とした竹林や、太陽に煌めく鴨川に沿って並ぶ川床たちが私を手招きしているよ。それならこっちにも策はある。由々しき日中の暑さを見越して、朝からパンホッピングに勤しめばよいのでは(いつも通り?)…!?街中に泊まり、朝1番に〈小川珈琲 堺町錦店〉のモーニングから参りましょう。

老舗珈琲店が繰り出す新しい一手…〈小川珈琲 堺町錦店〉

京の町屋を活かしたかっこいい店構え。
京の町屋を活かしたかっこいい店構え。

京都で創業70年となる〈小川珈琲〉が“100年先も続く店”をコンセプトに今年オープンしたお店は、町屋を改装したソリッドな佇まい。朝早いとお客様の流れも落ち着いていていいなぁ。
コーヒーはエシカルコーヒーのみのラインナップ。食パンは店内で焼かれ、〈シェルシュ〉代表の丸山智博さんがフードメニューの監修をしているという、お店が示す挑戦を至るところから感じられて、〈小川珈琲〉であってまだ見ぬ〈小川珈琲〉という新しい感覚に「オラわくわくすっぞ(初めて使った)」!
こちらでいただける朝パンは炭焼きトースト。モーニングメニューから「麹バターと季節のポタージュ」のセットをいただきました。

店内で焼かれるオリジナル食パンは、同じく京都発のパン屋〈ル・プチメック〉の創業者・西山逸成さんが開発した京都産小麦を使ったもの。炭でトーストされ添えられるのは麹バターという幾重にもこだわりが重なった一品です。とはいえその味わいは、決して尖っているわけでも高級志向に寄った感じでもないのがなんだかうれしくなっちゃうんだな。毎日食べたくなるような人懐っこい素朴さを纏っているのです。
水分が蓄えられた生地はきめ細やかな口当たり、そこからもったりともたれかかり歯切れはぬっちりと奥ゆかしい。耳はサクリとドライな食感です。でもどことなくスマートさが漂う味わいからは、どうだ、すごいだろ的な見栄は見せずこだわりは忍ばせるという美学を感じます。

別添えの麹バターもついてくるので追い麹バターもできちゃいます。
別添えの麹バターもついてくるので追い麹バターもできちゃいます。

そしてトレードマークの麹バターは、言うなれば塩バター。ホイップバターのようにやわやわふわふわ質感なので、ノーストレスで心ゆくまで塗り込めちゃう危険あり。あまりに無抵抗に塗れちゃうものだから、これは罠か?と不安になります(小心者)。
口に含めば込み上げるみりんのような甘さと香り。これこそが麹の持ち味!余韻には甘酒のような風味がふわりと添い遂げます。塩気と麹の甘さとコクのおかげでバターのしつこさはありません。ぜひ己を信じて全部つかって!罠どころか、たんまりと浸すくらい塗ってもバターのコクに負けない風味が雅に彩ってくれますよ。
ちなみにこちらのポタージュとサラダが目を見張るおいしさだったのも忘れずにお伝えしておきます。レストランでしか頂けないような本格的な味わいなのに身体が欲するような柔らかさがあって、ゴクゴクと野菜の生きた旨みを体が喜んでのみこんでいく音が聞こえてくるようでした。

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