花井悠希の朝パン日誌 江古田の洋菓子店〈バトー(Bateau)〉へ。1日2時間だけ開く絶品お菓子への扉! LEARN 2020.12.17

冬至も近づき、1年の間で最もお日様が早く帰ってしまうこの季節。もう夜がすぐそこまでやってきた頃、江古田の街に静かにできる行列があります。そこには一期一会のお菓子との出会いが待っていました。

明日は違うお菓子かも?

江古田 バトー

日も陰り始めた夕方4時、のんびりとした商店街の中に色めく時間がやってきます。少し前から並び始める列が、4時のオープンと共にショーケースに全集中!(言いたいだけ)

江古田 バトー

まずはここで1つ。塩バターキャラメルクレープにご挨拶。その場で出来立てを作ってくれるので、お店の前のベンチに腰掛けて間髪開けずにいただきます!
ほかほかの出来立てクレープにたっぷりかけられた塩キャラメルソース、それに泳がされるバター。熱でどんどんバターは溶けて、気づけば形勢逆転。クレープの方が泳いでいます。お味はこの見た目からお察しのとおりの極上さ。つゆだく(!?)のクレープに言葉はいらない、そう訴えていますね(表現放棄)。

常温でOKの朝パンにできそうなものを中心にセレクトしました。
ゴマさん、最高に気が効いています。しっかりとしたコクのある発酵バターに蜂蜜が混ぜられた蜂蜜バターが、オールグレインビスケットにサンド。バターと蜂蜜、どちらが先に届くか競い合うように畳み掛けてきます。蜂蜜の甘みと溢れ出すバターのねっとりしたコクとテクスチャーが、全粒粉のビスケットのドライなざっくりさと出会い、くっきりと浮き彫りになるのです。

江古田 バトー

全粒粉だけじゃなくゴマや種、ナッツなどもふんだんに混ぜ込まれたビスケットはおせんべい感さえ感じるほど力強く香ばしさを放っています。ビスケットのザクザク食感のワイルドさを活かしながら、自らのうまみを際立たせ冴え渡る。一歩引いているようにみせて、自在に操っているのは蜂蜜バターの方なのです。おそるべし…。あなたも手の平に転がされてみませんか?(謎の勧誘)

「シナモンロール」。
「シナモンロール」。

「シナモン山、失礼します!」そう言いたくなるほど、代々大切にされてきた山のような神々しさ。クリームチーズペーストにシナモンが降りかかる表情なんてもう、秋から冬に向かう静かな山そのものではありませんか?真っ白なお皿にのせれば、雪景色の小さな山村の風景まで見えてくるようです(特技:想像力)。この山をどうするべか、悩みに悩んで温めることに決めました(大袈裟)。

江古田 バトー

生地は厚みしっかりなのに歯切れが良く、たくさん閉じ込められた気泡によって抜け感がある生地。温めるとふわりと緩みほころびます。しっとりというにはしっとりすぎず、ふんわりというにはふんわりすぎずという絶妙にニュートラルな生地。もしあと少し湿度が少ないと口当たりがざらっと固くなるだろうし、逆に湿度が多いとクリームチーズのペースト感に近づきすぎてしまう。〇〇すぎるまでいかない間をねらう加減って実は難しいのでは?生地自体にも甘さがあり、クリームチーズペーストも濃縮した甘さなのに、甘さだってしつこさとは無縁。クリームチーズペーストのヨーグルトのようなコクと穏やかな酸味でたしなめているからなのかもしれません。シナモンの存在感もきっと立役者。

コロっと小さいのにゴツっとたくましい硬派なスコーン。ざくざくっと音が響いたら、たっぷりのバターと小麦粉、手作りの温もりの味を全身全霊で受け止める覚悟はできているか聞かれたような気がして武者震いが。一口目からバターが揺れ動きます。スコーンを自分で作ったことがある人なら分かると思うのですが、想像以上にスコーンってバターを使うんですよね。バターに小麦粉をすり込ませてバターと小麦粉でそぼろを作ってからまとめあげる。そんな手作りの工程がこのスコーンを噛み締めるたび一つ一つ見えてくるのです。小さな小さな塊の中にそんな光景や匂いが濃縮されて詰まっています。全粒粉のたくましい香ばしさに世界が広げられ、じわじわと手作りらしい味わいが心とカラダを満たしていくのを感じたら、もう幸せ充電完了です。

日によって並ぶお菓子が違っていて、季節のお菓子も多い〈バトー〉さん。「今日はどんな子に出会えるだろう」とそわそわしながら列に並ぶ時間も、またいいのです。近所には〈パーラー江古田〉さんなどパン屋さんも多いし、八百屋さんやお肉屋さん、コーヒースタンド、クラフトビール屋さんまで、おしゃれなお店から日常の延長線の気取らないお店までたくさんあり、江古田の懐の深さを感じます。〈バトー〉のあとは、今日の晩ご飯何にしようかな、なんてぶらりと街歩きもおすすめですよ。

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