濱田友緒さんと巡る益子旅。民藝のまちで作陶体験、濱田窯の器で地元の美味を味わう 有名陶芸家が案内する 「あたらしい益子焼ツアー」。 作陶体験や、民藝に触れる旅 TRAVEL 2024.03.28PR

これまで各地で新しい旅の提案をしてきた〈NICHER TRAVEL(ニッチャートラベル)〉。陶芸のまち、そして民藝の聖地である益子で行われたツアーに参加してみました。(PR/NICHER TRAVEL)

濱田友緒さん自らが案内する贅沢な1泊2日ツアー

日本を代表する焼きものの里、栃木県益子町。毎年、春と秋に開催される益子陶器市は、全国から約60万人が訪れることで有名だ。その益子で、土地の歴史をたどり、いまの益子に触れる「陶芸家が案内する、あたらしい益子焼ツアー Vol.1 濱田友緒」(以下、「あたらしい益子焼ツアー」)に参加してきた。

濱田友緒さんは、民藝運動の中核を担った濱田庄司のお孫さん。今回は館長を務める〈濱田庄司記念益子参考館〉や〈濱田窯〉の見学だけでなく、ツアー全体をフルアテンドしてくれるという貴重な機会。作陶体験、益子の人気寿司店の寿司を味わう夕食と交流会からナイトツアー、城内坂通りでの買い物フリータイムまで、2日間、盛りだくさんの行程だ。

〈濱田庄司記念益子参考館〉館長であり、陶芸家の濱田友緒さん。
〈濱田庄司記念益子参考館〉館長であり、陶芸家の濱田友緒さん。

この「あたらしい益子焼ツアー」は、“旅を介して、地域の活性化や人々の交流に貢献する”ことを目指す〈NICHER TRAVEL(ニッチャートラベル)〉が主催する旅のひとつ。ニッチャートラベルは、2022年6月にスタートした、旅行会社の〈阪急交通社〉とナビゲーションサービス〈ナビタイムジャパン〉の共同プロジェクトで、「愛する地元を盛り上げたい」と願う地域の人々と一緒に、ユニークな旅の提案を行っている。

「あたらしい益子焼ツアー」は、益子の日常の魅力を広く伝え、陶器市以外の時期にもまちを訪れる人、リピートするファンを増やすのが狙いだ。

栃木県 益子 「あたらしい益子焼ツアー」

陶芸のまちの核となる〈参考館〉をくまなく見学

ツアー初日、前半の舞台は〈濱田庄司記念益子参考館〉だ。益子は江戸時代から続く焼きものの産地だが、今日の繁栄は昭和初期に濱田庄司がこの地に拠点を構えたことで築かれたことはよく知られている。

作陶を行いながら、柳宗悦や河井寛次郎とともに民藝運動の中核を担った庄司。その自宅の一部と工房跡を活用し、古今東西から蒐集した美術品、手工芸品を展示した博物館が濱田庄司記念益子参考館で、5棟の建物と庭園からなる施設は、益子観光では外せないスポットなのだ。

ニッチャートラベルの恒例で、ツアーはアイスブレイクからスタートする。通常、行程説明と主催者や参加者の自己紹介で約1時間以内のところ、1時間45分の拡大版となったのは、友緒さんによる施設の概要説明と、濱田庄司と民藝運動に関する解説の時間が含まれていたからだ。

孫であり陶芸家でもある友緒さんの話から、ひとりの陶工として、あるいは夫や父として、つまり人間としての濱田庄司の素顔が浮かび上がる。やはり友緒さんのガイドはこの上なく贅沢で、期待値ははじまりから最高潮。面白おかしいエピソードの数々に、会場の雰囲気も一気に温まった。

民藝運動の概要を、濱田庄司と益子との関連のなかで解説する友緒さん。
民藝運動の概要を、濱田庄司と益子との関連のなかで解説する友緒さん。

会場となった4号館、通称「上ん台」は、益子町内の邸宅の母屋を昭和17(1942)年に購入・移築したものだと説明がある。移築に際し、庄司が加えた意匠や展示品も見事で、栃木県の有形文化財にも指定されているのだという。音楽などのイベントも不定期で催され、通常の開館日には、庄司が蒐集した展示家具の一部を実際に使って体験できる場としても人気だそうだ。

この日はアイスブレイクからの流れで、この4号館でランチがふるまわれた。メニューは、濱田家に代々伝わる「ぱぁすちー」がメインのセットだ。

こちらが「ぱぁすちー」。
こちらが「ぱぁすちー」。

「ぱぁすちー」は、イギリス南西部コーンウォール州の名物、コーニッシュ・パスティにルーツを持つ半月形のミートパイ。英国人陶芸家、バーナード・リーチに同行してイギリスに渡り、4年間を過ごした庄司が愛した味で、レシピを妻の和枝が再現したといわれる。

中力粉にラードを練り込んだ生地はオリジナルに忠実で、具材に大根が入るのが濱田家流のアレンジなのだそうだ。味つけは塩こしょうとシンプル。提供された「ぱぁすちー」は、益子の人気ブーランジェリー〈パン工房Boulange770〉によるものだったが、会場では友緒さんの妻・雅子さんによるつくり方の実演も行われた。

雅子さん(右から2番目)の指導の下、ぱぁすちーづくりにチャレンジする。
雅子さん(右から2番目)の指導の下、ぱぁすちーづくりにチャレンジする。

牛肉と野菜の旨みがたっぷりの、どっしりとした素朴なパイと野菜のスープに、胃袋が満たされ身も心も温まる。昼食を終えたら、いよいよツアーの本番だ。

艶やかに焼き上げられた生地の中には、大きめにカットされた肉と野菜がたっぷり。
艶やかに焼き上げられた生地の中には、大きめにカットされた肉と野菜がたっぷり。

作品と膨大な蒐集品から濱田庄司の足跡をたどる

4号館から外に出ると、陽ざしに春を感じる温かさ。最初に案内されたのは、益子の古い工房を移築し庄司が使用した細工場だ。手回しろくろと合わせ、いまでは珍しい蹴(け)ろくろも展示されている。「いまは電動ろくろがほとんどだけれど、蹴ろくろには独特のゆっくりとしたリズムがあり、それは作品に表れる」と、現在もそれを愛用するという友緒さんが話してくれた。

細工場にて。蹴ろくろについて、実際に操作をしながら説明する一幕も。
細工場にて。蹴ろくろについて、実際に操作をしながら説明する一幕も。
現在の濱田窯。80代の大ベテランから1年目の新人まで、年齢やキャリアもさまざまな職人が働く。
現在の濱田窯。80代の大ベテランから1年目の新人まで、年齢やキャリアもさまざまな職人が働く。

次に案内されたのは、登り窯。8室が連なる益子最大級のもので、昭和18(1943)年に築造されたものだ。大口と呼ばれる入口に近い部屋が最も高温で最高1300度、そこから少しずつ温度が下がる構造や、その特性を生かした焼成について説明を受ける。この登り窯をはじめ、参考館の各施設は、2011年3月の東日本大震災で大きな被害を受けたが、翌年、館長に就任した友緒さんが中心となり再建を果たした。

窯元の命ともいえる登り窯。油脂分が多くよく燃える松薪を使用する。
窯元の命ともいえる登り窯。油脂分が多くよく燃える松薪を使用する。

「寄付金を募ってなんとか登り窯をつくり直し、2015年に『濱田庄司登り窯復活プロジェクト』を開催しました。益子を中心に約80名もの作家が集まり、それぞれの作品をこの登り窯で焼いたんです」と、友緒さん。

復活プロジェクトは2018年に第2回目も開催されている。話を聞くと、再生した登り窯は、制作の場であると同時に、自然と、土と共に歩む濱田窯や益子という産地のあり方を示すモニュメントのように思えてくる。

このあと、敷地内を下り、参考館の入口にあたる長屋門に集合。いよいよ本格的な展示の見学が始まる。長屋門の東側では、企画展示を行っている。

この日は「雑誌『工藝』の中の濱田庄司」展が開催中だった。1930年の創刊から20年にわたり120巻が刊行された日本民藝協会の機関誌『工藝』がずらりと並ぶ様子は圧巻で、染色家・芹沢銈介ら、民藝の同人による装丁は、マテリアルまでさまざま。贅沢な造本にうっとりとなる。

大谷石でつくられたふたつの石蔵を見学。終日、最高の晴天に恵まれた。
大谷石でつくられたふたつの石蔵を見学。終日、最高の晴天に恵まれた。
芹沢銈介、河井寛次郎など、庄司と親交が深かった作家の作品が数多く展示されている。
芹沢銈介、河井寛次郎など、庄司と親交が深かった作家の作品が数多く展示されている。
庄司に多大な影響を与えた英国人陶芸家、バーナード・リーチの大皿作品(中央)。
庄司に多大な影響を与えた英国人陶芸家、バーナード・リーチの大皿作品(中央)。

大谷石でつくられた石蔵2棟を活用した展示室にも、庄司が古今東西から蒐集した品が並ぶ。時代も古代から近現代まで幅広く、民藝運動の礎を築いた、独自の審美眼を感じることができる。森に囲まれた一帯はしんと静かで、窓が切り取る緑の景色も、室内に射す光もすべてが美しい。庄司がなぜこの地を愛したか、その理由の一端に触れられた気がした。

もうひとつの濱田窯の茅葺の長屋門。豪農が富の象徴として築いた長屋門は、北関東の農村文化を伝える貴重な資料でも。
もうひとつの濱田窯の茅葺の長屋門。豪農が富の象徴として築いた長屋門は、北関東の農村文化を伝える貴重な資料でも。
長屋門の一部が展示室になっているのもユニーク。
長屋門の一部が展示室になっているのもユニーク。
庄司がバーナード・リーチと並んで作陶を行った作業場が残されている。
庄司がバーナード・リーチと並んで作陶を行った作業場が残されている。

作陶にもチャレンジ。夜は交流会で大盛り上がり

参考館での半日の行程を終え、作陶体験が開催される〈益子焼つかもと〉へバスで移動する。創業160余年のつかもとは、広大な敷地の中にギャラリー兼ショップと体験工房を併設する窯元で、友緒さんの作品を含め、濱田家3代の作品も展示・販売している。

体験工房では、平皿づくりに挑戦した。用意された粘土を手と棒を使って成形する作業は、パンなどの生地づくりに似ているが、長く形が残るものとなれば、“よりよく”と力が入る。プロの指導の下、約1時間で器の成形が終了。焼き上がった皿が自宅に届くのを楽しみに、つかもとを後にした。

〈つかもと〉での作陶体験。みんな真剣で、室内は心地よい緊張感にあふれていた。
〈つかもと〉での作陶体験。みんな真剣で、室内は心地よい緊張感にあふれていた。

その後、いったん各自ホテルにチェックインし、つかの間のフリータイムを過ごす。内容の濃いツアーに時間があっという間に過ぎ、気づけば日没が迫っていた。初日の行程は、夕食兼交流会、さらに参加自由のナイトツアーを残すのみ。

18時、夕食会場となる〈ヒジノワcafe&space〉へバスで向かう。夕食のメニューは、友緒さん行きつけの〈寿司冨〉のケータリングで、器はすべてデザインの異なる友緒さんの作品。テーブルにずらりと並ぶ色とりどりの器と、盛りつけられた端正な寿司の美しさに、全員から歓声が上がった。

東京の江戸前鮨の名店で腕を磨いた主が営む〈寿司冨〉の寿司。友緒さん作の大皿に盛られ、美しさもひとしお。
東京の江戸前鮨の名店で腕を磨いた主が営む〈寿司冨〉の寿司。友緒さん作の大皿に盛られ、美しさもひとしお。

アイスブレイクの自己紹介を聞いてわかったが、今回の参加者は陶芸や工芸に関心が深い人がほとんどだった。益子を何度か訪れている人、全国の焼きものの産地を巡っている人、関西を拠点に外国人向けの工芸ツアーガイドをするグループから、50年前に濱田庄司の講演を聞いたという人まで!

栃木県 益子 濱田友緒

見学ツアーの間も、友緒さんへ踏み込んだ質問がいくつか飛び出したが、ビールで乾杯し、おいしい寿司に舌鼓を打ちながらの交流会で、質疑応答はよりフランクに、深く広がっていく。家族である友緒さんから聞く庄司の意外なエピソードに驚き、笑いが巻き起こる。

楽しい時間は瞬く間に過ぎ、名残りを惜しむ多くの人が希望者のみ参加のナイトツアー、和食店〈杣-Soma-〉での2次会へと向かい、益子の深い夜が更けていった。

自分の“お気に入り”を探して、城内坂通りフリー散策

翌朝は、バスで陶器市のメイン会場のひとつ、〈益子焼窯元共販センター〉に集まり、まち歩きのフリータイムに。初日は午前10時の集合から盛りだくさんのプログラムで、少し慌ただしかったけれど、その分、2日目はゆったりとしたスケジュールがうれしい。

益子のランドマーク、共販センターのたぬき。
益子のランドマーク、共販センターのたぬき。

益子のメインストリートである城内坂通りには、約500メートル続く道の両脇に、伝統的な益子焼の販売店からギャラリーショップやカフェのような新しいスタイルの店まで、個性豊かな店が軒を連ね、散策にぴったりだ。

混雑もなく、一軒一軒をじっくりと見て回れるのも、“普段の益子”の魅力。前日遅くまで続いたナイトツアーでも、最後まで楽しい話を聞かせてくれた友緒さんがバスを迎え、締めの挨拶をして、まちへ出かけるのを見送ってくれた。

館長として参考館を案内することはあるけれど、今回のようなツアーのガイド役を務めたのは初めてのことだったという友緒さん。感想を尋ねると「とても楽しかった」との答えが。

「参考館でご案内するのは、専門家やジャーナリストなどが多いのですが、一般の観光客の方や陶芸好きの方が、どんな旅の時間を望まれ、どんなことを知りたいと思っていらっしゃるか、直に聞くことができたのは、私にとっても貴重でした。また参考館にもご来館いただきたいですし、次は個人でも何度でも、益子を訪れてほしいですね」(友緒さん)

長屋門の前で記念撮影。「はい、ぱぁすちー」の合図で全員笑顔に。
長屋門の前で記念撮影。「はい、ぱぁすちー」の合図で全員笑顔に。

言葉を聞いて、参考館の見学中、庭園について「展示品に負けない、唯一無二の美しさ」と話されていたのを思い出した。新緑の季節に、紅葉の時期に。季節を変えてまた訪れたい。

ここからはフリータイムで巡った3軒をご紹介しよう

益子らしいお土産ならここ〈民芸店ましこ〉

木枠の大きな引き戸など、設えにも歴史を感じる。
木枠の大きな引き戸など、設えにも歴史を感じる。

昭和27(1952)年創業、益子で初めての益子焼専門店。店名は濱田庄司の命名によるもので、現在も濱田家との縁は深い。イギリスのスリップウェアから着想を得たまんじゅう皿をはじめ、〈濱田窯〉の作品も多く並ぶ。

益子を代表する作家の作品が並ぶ。
益子を代表する作家の作品が並ぶ。
濱田窯の代表作「まんじゅう皿」も。
濱田窯の代表作「まんじゅう皿」も。

民芸店ましこ

住所:栃木県芳賀郡益子町益子2901
TEL:0285-72-2231
営業時間:10:00~18:00
定休日:火休

伝統的なものから現代の作家まで幅広く揃える〈陶庫〉

大谷石とガラス張りのコントラストがモダンな印象。
大谷石とガラス張りのコントラストがモダンな印象。

創業から半世紀、益子焼を中心に伝統とモダンが融合した器を揃えるギャラリーショップ。ツタの絡まる大谷石の米蔵と大正時代の商家を生かした建物も、城内坂通りでひと際目を引く存在感を放っている。

栃木県 益子 陶庫
自然光が入る店内。企画展なども随時開催。
自然光が入る店内。企画展なども随時開催。

陶庫

住所:栃木県芳賀郡益子町城内坂2
TEL:0285-72-2081
営業時間:10:00~18:00(11~2月は17:00まで)
定休日:無休(年末年始を除く)

古道具からアクセサリーまで洗練されたプロダクトが並ぶ〈Pejite〉

城内坂通りからややある閑静な一角に立つ。
城内坂通りからややある閑静な一角に立つ。

職人の魂がつくり上げる家具や、年月に磨かれた古い生活道具、手仕事の器や衣類など、衣食住にまつわるプロダクトを紹介。時期や商品の入れ替えに合わせて変える空間の設えにも美しい暮らしのヒントが詰まっている。

ディスプレーに使われている什器もすべてが商品だ。
ディスプレーに使われている什器もすべてが商品だ。
栃木県 益子 Pejite

Pejite

住所:栃木県芳賀郡益子町益子973-6
TEL:0285-81-5494
営業時間:12:00~19:00
定休日:不定休

ほかにも各地でさまざまなツアーを企画・催行している〈NICHER TRAVEL(ニッチャートラベル)〉。「あたらしい益子焼ツアー」は今後シリーズ化していく予定なので、興味のある人は参加してみては。

photo_Ryosuke Kikuchi text_Kei Sasaki edit_Ichico Enomoto

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