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信じるものは救われる! 私の開運聖地。
ライター・日高むつみの忘れられない聖地
聖地を訪ねても取材となると気忙しく、その場のもつ力に耳を澄ませるのは難しい。けれど、そんな状況でも目を開かれる場所がある。人智を超えた自然の造形や、こんこんと湧く清水、社叢の澄んだ空気、神話が息づく伝統に触れたとき、思い浮かぶのは西行の一首。「何事のおわしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる」。今生きて、ここにいることのありがたさを、いやでも感じさせられる。そんな、記憶に鮮やかな聖地をピックアップ。あの景色を思い浮かべるだけで、身の内に力が湧いてくる。
1. 鹿島神宮の御手洗池【茨城】
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御祭神は国譲り神話にも登場する武神・武甕槌大神(たけみかづちのおおかみ)。古くは防人が旅立つ前に鹿島神宮に参詣したことから、門出を意味する“鹿島立ち”の言葉が生まれたとか。「そのみそぎの場である御手洗池は水底が見渡せるほど透明。見ていると心がすうっと静かに。迷いを振り切り新たなスタートを切る力が湧くよう」
2. 阿蘇【熊本】
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「田畑が広がる盆地とぐるりと囲む高峰。初めて見た阿蘇カルデラの景色は鳥肌もの。かつての湖が神により人の住む場所になったという神話が目に浮かぶようでした」。外輪山の一画・大観峰から望む雲海の雄大さも、古くから神霊池などと呼ばれてきた中岳火口の不思議な美しさも、まさに人智の及ばぬもの。「この地で2,000年以上の歴史を刻む阿蘇神社も併せ、もう一度行きたい場所です」
3. 美保神社【島根】
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全国のえびす社3,385社の総本宮。御祭神は稲穂を携えて天下った三穂津姫命(みほつひめのみこと)と、その御子神で国譲りに関わりのある事代主神(ことしろぬしのかみ)。「毎日、朝と夕に巫女舞もしくは笛と太鼓の神楽が奉納されます。欠かすことなく連綿と続く神事に、古代からの神と人との結びつきを感じます」
4. 香取神宮【千葉】
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『常陸国風土記』にも記され、朝廷からも国家鎮護の神として重く遇された古社。「御祭神は経津主大神(ふつぬしのおおかみ)。境内に足を踏み入れると、武神を祀る聖域らしい凛とした空気を感じます。社叢の緑も伸びやかで生命力旺盛。朱の大鳥居から社殿へと続く参道は、良い風が通り抜けていくようで、気持ちも軽くなる感じ」