ハナコラボSDGsレポート 「サステナビリティ・ファースト」で社会実装する会社〈ユーグレナ〉|シナダユイ
ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足!毎週さまざまなコンテンツをレポートします。第76回は、ナチュラルビューティーハンターとして活躍するシナダユイさんが、〈ユーグレナ〉の広報宣伝部 部長・北見裕介さんに話を伺いました。
〈ユーグレナ〉ができたきっかけ
ーー〈ユーグレナ〉と聞くと健康食品のイメージが強いのですが、他はあまり詳しくなく。まずは、どのような会社なのか教えていただけますか。
「〈ユーグレナ〉という会社は社長の出雲 充が創業したのですが、きっかけは元々、彼が国連の職員になろうと思ったからなんです。その中で、インターンシップとして訪れたバングラデシュで目の当たりにしたのは栄養失調に苦しむ人たち。バングラデシュといえば、食うに困る人、飢餓に苦しむ人たちがとても多いイメージでしたが、実際は“栄養の問題”でした」。
ーー栄養が足りなかったんですね。
「ただ、その国では電源も確保ができない。ということは、冷蔵などの環境も担保できない。そうなると、新鮮な物を届けるということが簡単ではない。『豊富な野菜を届けましょう』というのは難しいんです。だからこそ、みんなの中で当たり前になっていない食材や食品を何か探さないといけないと思い、日本に帰ってきたんです」。
ーー現状の課題と強い使命感を感じる体験だったんですね。
「そのときに、ノーベル平和賞を受賞されたモハメド・ユヌス先生に出会い、ソーシャルビジネスという考え方に触れたことで、会社を作り、大きくしていきながら社会問題を解決していくという想いに至りました。当時、出雲は東京大学に通っていたのですが、校内で『何か栄養豊富な食材はないか』と周囲に聞いてまわり、その中で藻の仲間であるユーグレナ(和名:ミドリムシ)は可能性があるかもと聞きました。ただ、ユーグレナは栄養豊富であるがゆえに、他の微生物などの食料になってしまい、人が食べる食品になるための量を作るのがむずかしい。でも、何が何でも食用の屋外大量培養を成功させるぞと思い、実はまだ培養方法が見つかってないタイミングで起業しました。そのとき作ったのが〈ユーグレナ〉という会社です」。
ーーまだ誰もやってなかったからこそ、生物名「ユーグレナ」を社名にできたんですか?
「そうですね。当時は色々な大学の先生たちがチャレンジしている中で不可能だと言われていました。その後、ユーグレナが育ちやすい温暖な気候の中でやれば成功するという仮説をもち、チャレンジし続けた結果、屋外での大量培養という技術を石垣島で初めて確立しました」。
ーー石垣島が好きだという理由(私の浅はかな思い込み!)ではなかったんですね。さすが日本最難関大学の問題解決能力です。
「どちらかというと、そんなにアウトドアなタイプではなかったと思いますが(笑)。気候が適していたのと藻類を培養するノウハウとスペシャリストたちが既にいたので、協力して成功させることができました。一定量生産できるようになってから、サプリメントや食品を事業化していきました」。
ーー食品という形になり、ソーシャルビジネスへの第一歩が始まったんですね。
「まだ少量しか出来ていない食品をバングラデシュの人たちに買っていただくのはむずかしいので、まずは日本国内でこの栄養をみなさまにお届けし、売り上げの一部をバングラデシュに支援するという『ユーグレナGENKIプログラム』を始めました」。
ーーなるほど。最初はクッキーを届けていましたが、最近はふりかけも出たとお聞きしました。
「そうなんです。日本の売り上げの一部から、バングラデシュの小学校の子どもにクッキーを配っているのですが、そうすることで学校に行く理由ができる。親からすると将来、農業しかさせないのであれば学校に行かせる必要はありませんが、給食(クッキー)があれば行せることができる。そうなると識字率が上がり、子どもたちは良い学校に進学できたり職に付ける可能性が出てきて、経済が発展します。ただ、クッキーは2つの課題があり、1つ目はクッキーという形状上、1日2食とか食べる気になれない」。
ーーそうですね...。
「2つ目は、クッキーはあくまで日本の売り上げの一部からで、どれだけ売ったとしても先進国から途上国にという形が変わらず、例えば、先進国の経済状況が悪化したら途上国への支援が止まってしまうのでサステナブルではない。一方で、最近開始したふりかけは現地で作られ、現地で食される。現地でビジネスを作ることで、さまざまな企業から補助が入ったりしながらビジネスを大きくし、ソーシャルビジネスの新たな形を作りました」。
ーーそこまで考えられてるんですね。SDGsの1.貧困、2.飢餓、3.保険、4.教育などたくさん当てはまりますね。ちなみに藻の味ってどんなものでしょう。
「海苔やワカメなどの仲間で栄養価が高く、結構濃い味ではあるのですが『バングラデシュでも日本でもおいしくないことには日常的にならないよね』ということで、2021年に当社のコーポレートシェフに就任した、ミシュランガイド東京2020~2022一つ星掲載店「sio」オーナーシェフの鳥羽周作氏と共同開発し、トロピカルフルーツオレなど3商品を発表しました。やさしい甘さで飲みやすいですよ」。