新型コロナウイルスの発生源? 今だからこそ知りたい、ジビエ (野生鳥獣の肉) のリスクと対策
新型コロナウイルスの発生源は海鮮市場で売られていた野生動物が発生源になったかもしれないと考えられています。
また中国政府はコロナウイルスの感染を抑える方策として、野生動物の取引を一時的に禁止しました。
人間にとって新たな感染症の多くが動物、とくに野生動物に由来するとみられています。
今回の件に限らず野生動物の肉や肉製品を食する際には注意が必要です。
そこで、野生の鳥や獣の肉を食べる時に気を付けなければならないことをお伝えします。
ちなみに、新型コロナウイルスの“発生源”は野生動物の可能性が指摘されていますが、“感染経路”は飛沫感染と接触感染で、食品を介して新型コロナウイルスに感染したという事例は報告されていないとのことです。(厚生労働省新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)より)
ジビエとは
ジビエとは、狩りの対象となる野生の鳥や獣の肉のことで、日本では主に猪、鹿、熊、鴨、キジなどを捕獲し調理したものをジビエ料理として食べています。
ヨーロッパではジビエは貴重な高級食材で、鹿、ガチョウ、鴨、アヒル、ホロホロ鳥などを使った料理は、貴族の伝統料理として古くから親しまれてきました。
また中国では、野生動物は栄養価が高く新鮮であると認識している人もいるようで、アナグマやタケネズミなどの料理を好む人が多いのだそうです。
ジビエ料理が増えている理由
猪や鹿などの野生の肉は脂肪分が少なく身が引き締まっており、高たんぱくで栄養価も高いので、ヘルシーな食材として日本でも人気が出てきています。
また近年、猪や鹿などの野生動物が増えて田畑を荒らし、農作物を食べてしまうなどの深刻な被害が増えていますが、その対策として野生動物を捕獲してその肉を食用として利用しようという取り組みが行われています。
このように、環境保全を良くしながら捕獲した鳥獣の肉を有効活用する取り組みが全国各地で広がっていることが、ジビエ料理が増えてきている理由でもあります。
ジビエのリスク
猪や鹿などの野生の動物は、牛や豚などの家畜動物とは異なり、健康管理や獣医師による検査が行われていないため、ウイルスや細菌・寄生虫などに汚染されているリスクがとても高いです。
そのためしっかり加熱していない野生動物の肉を食べると、食中毒や感染症を引き起こす可能性が大いにあります。
ジビエが原因の感染症の事例は毎年発生しており、過去には生の猪の肝臓を食べたことが原因でE型肝炎を引き起こし、死亡した事例もあります。
その他にも、日本においてこれまでにジビエが原因で発生した感染症で有名なものとしては、腸管出血性大腸菌(O157)感染症やサルモネラ症などがあり、注意が必要です。
資格制度や法規制が整っていない
猛毒のあるフグの調理にはフグ調理師免許が必要です。
また、豚や牛などの家畜や鶏などを食肉にするには「と畜場法」や「食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律」が適用されます。
しかし、野生動物の取り扱いには特に必要な免許制度は無く、また「食品衛生法」は適用しますが、「と畜場法」や「食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律」の対象ではありません。
事業者は厚生労働省が作成したガイドラインに則って衛生管理を行っていますが、小さな飲食店や個人が提供するジビエ料理は、衛生管理や殺菌消毒が徹底されているのか、やや不安が残ります。
ジビエを食べるときに私たちが気を付けること
私たちは全国各地の飲食店でジビエ料理を食べることができます。
安全な食品を提供することは店側の責任ですが、資格制度や法規制が整っていない中では、ジビエ料理を食べる私達自身が食中毒や感染症を引き起こさないように気を付けなければなりません。
野生動物の肉や肉製品は中心部まで十分に加熱(75℃で1分間以上)することで、ほとんどの有害微生物が死滅します。
よってジビエ料理を食べる際には、きちんと中心部まで火が通っているかを確認しましょう。
また海外旅行をした際にも、珍しいからと言って衛生環境の悪い市場などで何の肉が使われているか分からない現地の料理を安易に食べることは控えましょう。
そして、大人よりも病気に対する抵抗力が低い幼児には食べさせない様にしましょう。
参考文献
一般社団法人日本ジビエ振興協会HP
厚生労働省ジビエ流通に関する注意喚起について
厚生労働省新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
内閣府食品安全委員会ファクトシート「ジビエを介した人獣共通感染症」