冷蔵庫に入れても安心できない!? 食中毒予防
外出自粛や3密を回避するために、最近は飲食店のテイクアウトを利用する人が多くなりました。また店内飲食が自粛される中、新たにテイクアウトを始めた店も多く、私も応援の気持ちも込めて利用しています。
テイクアウトの需要が増える中、これからの季節で注意が必要なのが食中毒です。テイクアウトした食品を持ち帰ってすぐに食べない場合は常温に放置せず、冷蔵庫で保管していますよね。ただし、冷蔵庫に入れたからといって安心と言うわけではありません。
テイクアウト用の食品はすぐに食べることを前提に作られているので、消費期限が設定されていなかったり、店によっては衛生管理が十分ではないところもあるかもしれません。
また暑い夏の時期は、家まで持って帰っている間に細菌は増殖し、家の冷蔵庫に入れたからと言って、細菌の増殖は止まらないのです。
冷蔵保存も注意が必要
言うまでもありませんが夏場に食品を常温で保存するのは危険です。しかし、冷蔵庫に入れたからと言って安心する事もできません。冷蔵庫で保存すると細菌の増殖スピードはゆっくりになりますが、細菌は確実に増殖しているのです。冷蔵庫内の温度と、細菌やカビの発育限界温度を比べてみましょう。
『冷蔵室は1~5℃』、『冷凍室は-22~-18℃』、『野菜室は5~7℃』
『細菌の発育限界温度は-10℃』、『カビ・酵母の発育限界温度は-18℃』
つまり、冷凍すればカビや細菌は増殖しませんが、冷蔵の温度帯では増えているのです。
詳しく説明すると、食中毒菌の多くは30~40℃の温かい温度で増殖速度が増しますが、低い温度でも菌は確実に少しずつ増殖します。また、低温菌と言って逆に低い温度帯を好み、0℃でも増殖する細菌もいるのです。
いつまでに食べればよいの?
では冷蔵庫で保管した場合、いつまでに食べれば良いのでしょうか。
それは食品にもともと付着している菌数や、食品中の水分量や塩分濃度、冷蔵庫の開閉による温度変化、食品の詰め込みすぎによる冷蔵庫内の温度上昇など様々な条件が関係してくるので、一概にいつまでと断定することはできません。
しかし、異臭や変色等の現象が起こる前段階で、すでに細菌は増殖し始めており、少ない菌数でも食中毒が発症することもあります。
また、ある実験によると低温でも増殖する菌(リステリア菌)を4℃と10℃の温度帯で保管し続けたところ、4℃の温度帯では7日目以降から菌数は増殖し、10℃の温度帯では1日目以降から増殖し5日目には食中毒が起こり得る菌数に達したとの結果でした。
食中毒の3原則
食中毒を防ぐには、細菌を『つけない』『増やさない』『殺す』の3原則が基本です。
『細菌をつけない』ためには、まずは手洗いをしっかりしましょう。
『細菌を増やさない』ためには、食品の温度管理を徹底し、テイクアウトした食品は保冷バックに入れて持ち帰り、なるべくすぐに食べるようにしましょう。
『細菌を殺す』ためには、食品の中心温度を75℃以上で1分以上しっかりと加熱しましょう。テイクアウトしてから長時間過ぎてしまった食品は食べる前に再加熱すると安心です。
新型コロナウイルスの第二波の懸念も残る中、これからテイクアウト需要は益々伸びていくと思います。これから暑い季節になり、細菌の増殖は活発になるので、適切な対応でしっかり予防しましょう。
特に体の抵抗力の弱い子ども(特に乳幼児)は、少量の細菌数でも食中毒を発症しやすく、また重症化もしやすいため注意が必要です。
参考文献
株式会社くらし科学研究所「冷蔵庫内でも増殖するリステリアに注意が必要です!」