第32回 写真家・田尾沙織の『Step and a Step』500gで生まれた赤ちゃん 【田尾沙織のStep and a Step・32】超あせった! 熱性痙攣!
写真家・田尾沙織さんに、500gで生まれて、軽度の知的障害とADHDだと言われている息子、奏ちゃんの子育てと日常について綴っていただくこの連載。
2人の日常を、田尾さんによる色鮮やかな写真と共にお届けします。
実は少し前になりますが、奏ちゃんが初めて熱性痙攣をおこしました。
その日、奏ちゃんが37度から38度くらいの熱を行ったり来たりしていたので、家でだらだらソファに寝っ転がりながら一緒にテレビを見て過ごしていました。すると、15時半ごろ奏ちゃんが寝っ転がりながら突然嘔吐しました。
赤ちゃんの時から嘔吐することがあまりなく、すごく珍しかったので「大丈夫だよ」と声をかけながら掃除をして、また話しかけると、応答しなくなりました。吐いて気持ち悪いのかな、と思ってそのまま話しかけていると、目を見開いて眼球が宙を見上げながら左右に動きはじめました。
様子がおかしい。
「ママのことわかる? 返事して!」
と何度も声かけすると、目線を合わせようとしている気持ちは伝わってくるのですが、目はずっと宙を見たまま。体が硬直してきて、上半身の痙攣が始りました。これはまずいと思い、震える手で何度か押し間違えながらなんとか119に電話をしながら痙攣が始まった時間を覚えておかないと、と思って目の前にあった封筒に時間を殴り書き。
救急車が到着するまでが30分くらいに感じました。声かけしても全く無反応。目は見開いているし、痙攣は全身に。
やっと救急隊到着したと思ったのですが、後から聞いたところ救急隊が到着するまで電話から5分だったそうです。
救急隊が到着と同時に痙攣は治ったので、痙攣の時間が約5分間。救急隊が意識の確認のため、胸を強く押して刺激を与えたのですが無反応。救急車に運ばれて意識が戻って救急隊の方もほっとしていました。最初の意識レベルがかなり低かったと言っていました。
その後も酸素マスクを嫌がって手で振り払うなど、意識は戻ってきたけれど、私が話しかけても右半身が動かず、私は右側にいるのに、目が一生懸命反対の左側を見ようとしていました。
「わかりませんが、脳に何か起きているのかも」
そう救急隊の方から聞いて「このまま右半身が動かなくなってしまったらどうしよう」と思いました。
結局、病院で先生に見てもらったところ、熱性痙攣で間違いなく、一時的に体の一部が動かなくなることはよくあるということで、病院のベッドで4~5時間休んだところ、会話も元に戻り、目も体も普通に動くように。
そのまま「おなかすいたー!」と怒って叫ぶ奏ちゃんを連れて、帰宅になりました。
救急隊員の方が計った時、体温は37.2度。
私は熱性痙攣という言葉は知っていましたが、39度とか40度の高熱でなると思い込んでいて、まさか37度台でなるとは考えてもいませんでした。
本当にこのまま死んでしまうんじゃないかと思うくらいの状態で、もっともっと一緒に遊んであげればよかった。もっともっと優しくしてあげれたんじゃないか。など、走馬灯のように、今まで過ごした時間やついさっきまでうるさいくらい話しかけてきたことや、忙しくてそれに対して適当に返事をしてしまったこと、当たり前に過ごせていた時間に感謝し、後悔しました。
子育てをしているとハプニングの連続で、何が起きるかわからないと思うと、毎日大切に後悔がないように過ごしていきたいと思いました。