まちをつなげるパン屋さん by Hanako1170 麻布の街に愛される、和と洋をミックスしたパン屋さん〈Comète〉へ。
パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まちをつなげるパン屋さん」を掲載。今回は、麻布の街に愛されるお店〈Comète(コメット)〉をご紹介します。パリで出会ったご夫婦がつくる、日本人のための小麦×米ぬかのパンとは?
1.小麦×米ぬかのパンで、和食の席を華やかに。
世界的ブーランジュリー〈デュ・パン・エ・デジデ〉でスーシェフを務めた小林健二さんと、翻訳家でもある妻のさやかさん。2人はパリで出会い、結ばれ、将来開く夢のパン屋について語り合った。フランス人にとってのパンとは、食卓に料理と並ぶ、日常に欠かせないもの。それと同じ役目をこの日本で果たすようなパンを店に並べたい。和のお惣菜にも合う、日本人のためのパンを。
そうして生まれた和製ブーランジュリー〈コメット〉。座布団みたいにでっかく焼いたパンは、店名と同じ「コメット」と名づけた。〈デジデ〉を世界的名店へと押し上げたシグニチャー「パン・デザミ」のように、水分を多めに、長時間発酵で小麦を溶かして甘さと旨味をたっぷり作り、高温でこんがり焼いて、香ばしい風味をパンに思いきり込める。
フランスのパンがフランスの小麦をおいしく食べる知恵であるように、「コメット」も日本の小麦、そして米ぬかから作られる。口に入れたときに感じられるのは、新米のような清冽な香りと甘み。旨味はおしょうゆをもほうふつとさせ、和食によく合う。このパンをブレッドボードにのせて料理といっしょに供せば、食卓が明るく華やぐことまちがいなしだ。
おやつに食べたいぐるぐる渦巻きのデニッシュ「エスカルゴ」。「バゲット」は、お手本として示したいほどの傑作。皮をかりかりにして、中身もっちり。心地よい小麦のささやき声が聞こえてくる。麻布の人たちにもっと愛されるべく、さやかさんと相談しながら、サンドイッチや焼き菓子など、ランチやおやつにうってつけのメニューが続々と登場。昨年秋に生まれた葵ちゃんともども、お店の成長をずっと見守っていきたい。
シグニチャーの「コメット」をはじめ、バゲット、フォカッチャなど食事パンが充実。サンドイッチやデニッシュを買い、芝公園で食べるもよし。
〈Comète(コメット)〉
■東京都港区三田1-6-6
■03-6435-1534 麻布十番
■10:00~売り切れ次第終了 日月休(Facebook・インスタ要確認)
上品なクリームと黒豆のコントラスト。
仲のいい2人が休みに出かける、麻布十番の菓子店〈しろいくろ〉。古民家が、白と黒のツートンでリノベされている。「塩黒豆ロールケーキ」は、クリームに混ぜた黒豆の香りのうつくしさにはっとした。古さと新しさ、洋と和が交錯する麻布の街らしい一軒だ。
店内で黒豆茶といっしょに。建築家とデザイナーが手を組んだ内外観も注目。
〈しろいくろ〉
■東京都港区麻布十番2-8-1
■03-3454-7225
■10:00~18:00 不定休
■10席
■禁煙
池田浩明 いけだ・ひろあき/パンラボ主宰。パンについてのエッセイ、イベントなどを柱に活動する「パンギーク」。著書に『食パンをもっとおいしくする99の魔法』『日本全国 このパンがすごい!』など。 パンラボblog
(Hanako1170号掲載/photo:Kenya Abe)