潜伏キリシタンの里、外海の集落へ。 海からの風に吹かれて。長崎で世界遺産の旅をしよう!美しい教会堂の歴史とは?
長崎市街から車で約1時間。海を見下ろす斜面に広がる小さな集落の数々は、禁教時代の面影を残し、明治初期にこの地に赴任した神父とキリシタンがともに築いた集落全体が世界遺産の意義を物語る。
海からの風に吹かれて外海地区の歴史を巡る。
天気の良い日は海の向こうに五島列島を望む外海。江戸末期に5000人近い信者が暮らしたこの地区には多くのキリシタンが潜伏していた。「信徒発見」の後、この地に赴任したド・ロ神父によりその多くはカトリックに復帰した。布教の中心として神父と信者が取り組んだ出津や大野の教会堂は、和と洋が溶け合う日本独自のカトリック教会の美しさを携えていて必見だ。土地の資材と信者の手で築いた質素で清廉な礼拝堂に身をおけば、不思議と心が静まっていく。
1.マリア像が見守る集落の高台に立つ石造りの小さな教会堂。〈大野教会堂〉
1893年(明治26年)、出津集落隣の大野地区の信者のための巡回教会。裏山で産出した玄武岩を信者が砕き、積上げた石壁が特徴的なド・ロ神父設計の教会。
瓦に描いた赤い十字架が瓦屋根の上に置かれる。地元の信者の教会守が火木土に駐在。見学は外観のみ。
〈大野教会堂〉
■長崎県長崎市下大野町2619
■095-823-7650(長崎の教会群インフォメーションセンター)/大野集落
■9:00~17:00/月水金休
■見学希望者は〈長崎の教会群インフォメーションセンター〉へ要事前連絡。http://kyoukaigun.jp/
2.瓦屋根に漆喰の鐘楼が映える、木造平屋建ての美しい教会。〈出津教会堂〉
建築、医学ほか多分野に造詣の深いド・ロ神父が1882年(明治15年)自らの設計で私財を投じ、信者たちの労働奉仕により建てられた教会。海からの強い風に耐えられるように屋根を低くした寄棟造の木造平屋建築。
礼拝堂内部の木目が生きる簡素な佇まいも清々しい。
〈出津教会堂〉
■長崎県長崎市西出津町2633
■095-823-7650(長崎の教会群インフォメーションセンター) /出津集落
■9:00~17:00/無休
■見学希望者は〈長崎の教会群インフォメーションセンター〉へ要事前連絡。http://kyoukaigun.jp/
禁教時代に密かにオラショを唱えた「祈りの岩」と神社も。
長い禁教時代、潜伏キリシタンらが密かに組織的に信仰を受け継いだ証が「祈りの岩」。外海のキリシタンが年に一度、復活祭前の「悲しみの節」の夜に山中の大きな自然石の下に集まりオラショ(祈りの言葉)を唱え、次世代へ信仰を伝承したといわれる。近くの〈枯松神社〉は、明治に伝説の伝道師バスチャンの師、サン・ジワンを神社でカモフラージュし祀っている。
(Hanako1160号掲載:photo : Kenya Abe text & edit : Chiyo Sagae)