自分を少し変えてくれる一冊を。 〈かもめブックス〉の店主・柳下恭平さんがオススメ。旅のおともにぴったりな本5選
旅の途中で読みたい本から、帰路で手にしたい一冊まで。本を愛し、本のある暮らしをさまざまに提案する、本屋〈かもめブックス〉を営む柳下恭平さんにセレクトしていただきました。
「旅の荷物は少ないほうがいいから、文庫本に絞りました。」
ひとり旅の醍醐味って、持てるだけの荷物しか持たないことだと思うんですよね。自分のコンディションにあわせて、スーツケースに必要なものを詰める。その過程で、普段の暮らしの中ではつい、いろんなものを持ちすぎているなと気が付くことができるから。そして“旅”とは、外を見ることによって、自らの内側を見つめなおす行為です。だからこそ、読後に何かしらの行動を起こしたくなる5冊を選びました。読み終わると、自分が少し変わっている。それって、まるで“旅”そのものですよね。
1.『ガンジス河でバタフライ』/旅をしながら、冒険が体験できる一冊です。
たかのてるこ著。著者の紀行エッセイ第1弾で、行き先は香港からシンガポール、そしてインド。コミカルに描かれた波瀾万丈な旅の模様に、わくわくする。長澤まさみ主演でドラマ化もされた。(幻冬舎文庫/648円)
2.『路』/仕事に疲れたなと感じてる人は、これを。
吉田修一著。台湾新幹線プロジェクトの着工から開通までの物語に、それに関わる人々の物語が絡み合う。現地の情景描写も素敵。「人生と仕事は絡み合っているのだなと感じる。新幹線でもぜひ」(文春文庫/670円)
3.『何でも見てやろう』/旅のお守りとして。道行に福音を与えてくれる。
小田実著。留学生時代の著者が、ニューヨークやエジプトなど欧米・アジア計22カ国を貧乏旅行した際の紀行。リアルな描写や旅の行程、書き手の声に、ページをめくる手が止まらなくなるはず。(講談社文庫/750円)
4.『スーツケースの半分は』/鞄には、お土産が入る隙間を残しておこう。
近藤史恵著。幸運の青いスーツケースを巡る9つの短編を収録。まずはフリマでスーツケースにひと目惚れし、ひとり旅を決意したアラサー女子のお話。彼女の友人らの元を転々とし、物語を紡ぐ。(祥伝社文庫/620円)
5.『人生の100のリスト』/みなさんも、『100のリスト』を作ってみて。
ロバート・ハリス著。著者が世界放浪中に作った、100の“人生でやりたいことリスト”とは。「読むうちに、僕らのやりたいことは『所有』と『経験』に分かれるんだと気付かされました」(講談社+α文庫/920円)
紹介してくれたのは・・・
柳下恭平/やなした・きょうへい
1976年生まれ。世界各地を旅した後、書籍校閲会社〈鷗来堂〉(おうらいどう)設立。2014年に〈かもめブックス〉、17年に袋とじで本を販売する〈本と珈琲 梟書茶房〉を開店し、さまざまに本との出合いを提案する。
(Hanako1160号掲載:photo : Chihiro Oshima text :Wako Kanashiro edit : Chiyo Sagae)