エレクターラックを食器棚として代用! 料理のプロのオシャレなキッチン収納術 LEARN 2024.06.13

大阪府内でケータリング、料理教室、フードコーディネートなどを手掛ける料理家の吉島幸代さん。築80年の2LDKの一軒家をDIYしたキッチンアトリエを紹介してもらいました。

道具や器も配置を考えて美しく心地よく収納

ミシュラン二ツ星レストラン〈ラ・テンダロッサ〉などイタリアの名店で料理人として10年間腕をふるった後に帰国、現在は関西を中心に活躍するsacciこと料理家の吉島幸代さん。彼女が友人の建築家と共にDIYを駆使してアトリエを作ったのは2018年4月のことだ。

古民家を2年の歳月をかけて全リフォームし、作り上げたアトリエ。廃墟だった家屋の中で、窓際をキッチンにすることを最初に決めたそう。
古民家を2年の歳月をかけて全リフォームし、作り上げたアトリエ。廃墟だった家屋の中で、窓際をキッチンにすることを最初に決めたそう。

「その1カ月半後に大阪府北部地震が起こったんです。食器はほぼ割れ、アトリエも大打撃を受けました。そんな時、困った私を見かねた陶芸家の鈴木智尋さんが器を譲ってくれて…ほかにも多くの友人たちから支援を受け、助けられました。そのおかげもあって、新たに器を集める楽しみができた! なんてすぐに前向きになれたんです」

sacciさんは、アトリエ作りでも料理作りでも人との繋がりを大切にしている。例えばダイニングテーブルは、芸大教授の友人から学校で使わなくなったテーブルを買い取りリペア。スタッキングできるハイチェアは木工職人に注文した特製だ。

「経年変化しているものが好きなので、錆びた部分はあえて残しています。勝手口の扉は、大きなダイニングテーブルが入るように、廃校になった小学校から大きな扉を譲り受け、再利用しました」
「経年変化しているものが好きなので、錆びた部分はあえて残しています。勝手口の扉は、大きなダイニングテーブルが入るように、廃校になった小学校から大きな扉を譲り受け、再利用しました」

「食器棚は、とりあえずエレクターラックで代用してみたら、めちゃ便利やん! と思ってそのまま愛用。奥行きがあるので、奥側にレンガと板で高さをつけて取り出しやすく工夫しています。ほかにも、至る所にDIYのものだらけです」

オープンの食器棚には、器を色ごとに分けて見た目も美しく収納。「料理の映える器が好きなので無地が多いです。益子焼やツヤ消しのマットな風合いが好みですね」
オープンの食器棚には、器を色ごとに分けて見た目も美しく収納。「料理の映える器が好きなので無地が多いです。益子焼やツヤ消しのマットな風合いが好みですね」

では、肝心の作業を司るキッチン部分へのこだわりは?

「火口は5口、オーブンは2つ。1人で大人数のケータリングを任されることも多いので、どれだけ効率よく料理ができるかを最重要と考えました」

キッチンとダイニングをさりげなく仕切るように置かれた棚は〈KOKUYO〉のスチールラック。「棚の幅を調整したり、見えるところは木の板を張ったりカスタマイズ」
キッチンとダイニングをさりげなく仕切るように置かれた棚は〈KOKUYO〉のスチールラック。「棚の幅を調整したり、見えるところは木の板を張ったりカスタマイズ」

また、仕事柄、自然とツールは多くなる。例えば木べらは、お菓子用、ミートソース用、ホワイトソース用などに分ける。鍋はもちろん、オーブンもお菓子用と肉用の2つを設置する徹底ぶり。

パスタ、砂糖、雑穀、コーヒーなどの食材は、ジャンルごとにケースに収納。イタリア語で書いたシールを貼って、中身がわかるように工夫している。
パスタ、砂糖、雑穀、コーヒーなどの食材は、ジャンルごとにケースに収納。イタリア語で書いたシールを貼って、中身がわかるように工夫している。

「料理をする上では匂いや香りに注意しているので、自然とものが多くなるんです。イタリアでの修業時代に、玉ネギを切った包丁で、誤ってイチゴを切ってしまったことがあって。シェフに〝匂いがつくだろう!〞ってめちゃくちゃ怒られたんです。その時、料理は香りが大事! ということを叩き込まれました」

レードルやターナーはすぐ使えるように吊して収納。数が多くあるのは、匂いがつかないように料理の種類によって使い分けるため。
レードルやターナーはすぐ使えるように吊して収納。数が多くあるのは、匂いがつかないように料理の種類によって使い分けるため。

シンク周りに置かれるキッチンツールは、用途別の木べらのほか、ホイッパー、トング、ハサミ、包丁、ザルなど多種にわたる。それらを混ぜる、切る、水を切るなどの用途ごとに分けて、動線に無駄がないように配置。

用途ごとに仕分けされたキッチンツール。収納場所を決めることで散らからずに、大量の作業も効率よく進められる。汚れが拭き取りやすいように壁はタイル張り。
用途ごとに仕分けされたキッチンツール。収納場所を決めることで散らからずに、大量の作業も効率よく進められる。汚れが拭き取りやすいように壁はタイル張り。

「あと、毎日ちょっとずつ、さらに週1回はしっかりと掃除しますね。まとめてやらずに日々きれいにするのがモットーです」

〈コーナン〉で買ったすのこで作った本棚。20代から集めている国内外の料理本が数え切れないほど並ぶ。
〈コーナン〉で買ったすのこで作った本棚。20代から集めている国内外の料理本が数え切れないほど並ぶ。

愛着を持って使い込まれた道具やインテリア、ピカピカに磨かれたキッチンに、sacciさんの人柄が表れている。

photo_Yoshiko Watanabe text_Midori Nagase

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