蛙亭イワクラ「猫田とぶっさんとバンビとオジー」 | 連載【即断すぎて周りがとめる】 vol.2
LEARN 2024.01.30
蛙亭イワクラさんは一見おっとりしているようだが、実は意志が強く、即断即決の人(早すぎて周りが「ちょっと待って、一回考えよう」と止めることもあるそう)。でも「イワクラを見ると周りが何かしてあげたくなる」ようなほっとけなさもある。「お笑いが人生を楽にしてくれた、自由にしてくれた」という彼女が見てきた景色、最近思うことについて少しずつ話してもらう連載です。
イラストはコンビの相方、中野周平さんが担当。
♪にゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃー♪ 今でもふと鼻歌で歌うんです、「木更津キャッツアイのテーマ」。
テレビ宮崎の番組(『よかとこ発見!蛙亭イワクラ使節団〜伊藤と肥満とサイダーと〜』)のロケがあるので月イチで宮崎に帰ってます。このあいだも前日に前乗りしました。夜、実家の近所をぶらぶらと散歩して、道にごろんと大の字になって寝ころがって。道のど真ん中ではないですよ、はしっこのほうで。車も通らないし人も歩いてないから、横になっても大丈夫かなって。星がたくさん見えるんですよ。めっちゃきれいなので、仰向けになって眺めたかったんです。
宮崎県の小林市というところで生まれ育ちました。県の南西部にある町で、霧島山と九州山地に囲まれた自然豊かなところなので住みやすい田舎ではあるんですが、いかんせん、ショッピングモールがない。だから、小林の人はわざわざ宮崎市内へ買い物に行く。わたしも友達とよく行ってました。1時間バスに乗って。
田舎の人にとってショッピングモールってめっちゃ大事なんです。特に10代の若者にとってはアミューズメントパークそのもの。洋服を買ったり、マクドナルドで食べたり、映画を観たり。地元には映画館がないんです。小学生のころ、町中の小学生を集めて、地元の文化会館で『千と千尋の神隠し』の移動上映が行われたんですが、それがスクリーンで映画を観た初めての体験でした。そして、「映画館で観る」という文化が小林にはないから、みんな観ながらしゃべってるし、走り回ってるし。上映会がカオスだったのをよく憶えています。
宮崎のショッピングモールといえば、〈イオンモール宮崎〉がいまはいちばん大きな施設ですが、それができるまでは〈宮交シティ〉というモールがみんなの憩いの場。お笑いライブもそこでよく観ました。 “テツandトモ”さんとか“どーよ”さんとか。いまでも憶えているのが、どーよさんが交通系カードの「Suica」と果物の「スイカ」をかけたネタをやり、宮崎の人はSuicaを知らないのでまったくウケなかったこと。観客席に漂う無数の「?」に気づいたどーよさんが、「えー、Suicaっていうカードがありまして、それで電車に乗れるんです」って慌てて説明したのがめちゃくちゃおかしかった。あと、“いつもここから”さんの本が出たときは、サイン会に参加しました。それは高校生の頃だったかな。
そういう場所へいつも一緒に行ってたのは、幼なじみのメグちゃんとシュンゲ。2人は小学1年生のころからの親友で、いまだに仲がいいんです。とにかくわたしは、2人に支えられながら、どうにかこうにか生きてきたようなもので。わたしのことを「面白い!」といちばん最初に言ってくれたのも2人だったし、学校に遅刻するだらしないわたしを毎朝迎えに来てくれていたのも2人だった。わたしは、2人が迎えにきたときにようやく起きるから、「ちょっとまって、朝ごはん食べるから」ってラーメンを食べたりして、その間にメグちゃんはわたしの宿題をやってくれるという。普通はブチ切れるはずなんですけれど。
メグちゃんはいま、宮崎で小学校の先生をやっていて、シュンゲは、福岡で美容師をやっています。小学生のころによく言っていた将来の夢が、わたしは芸人、2人はそれぞれ小学校の先生と美容師。みんな夢を叶えたんです。
夢が叶った!といえば。お気付きの方も多いと思いますが、わたくし、宮藤官九郎さんの新作テレビドラマ『不適切にもほどがある!』(金曜夜10時〜TBS系にて放送中)に「出演」しております。阿部サダヲさん演じる主人公の妻役で。わたしは『木更津キャッツアイ』のころから宮藤さんの大ファン。当時、小学生だったんですけど、笑いと下ネタと感動、そして「死」というテーマが絶妙に合体しているのがめちゃくちゃ面白くて、夢中になったんです。それこそ、メグちゃんやシュンゲと一緒に「木更津キャッツアイのテーマ」をよく歌いました。「き〜さ〜ら〜ず〜♪にゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃー♪夏は潮干狩り〜♪冬はオヤジ狩り〜♪」っていう、ブルーハーツの曲の替え歌。割り箸に丸く切った段ボールをくっつけて、「き」「さ」「ら」「ず」と書いた応援うちわみたいなものを作って、それを「にゃー♪」に合わせて振って。いまだに鼻歌で歌っちゃいます。ふとしたときに出てくるんです。
だから、宮藤さんのドラマのお話がきたときはエグいと思いました。「うわわわわっ!どうしよう!」って。宮藤さんの世界がマジで大好きだから、1ミリでもじゃまをしたくない、という思いと、出てみたいという思いが複雑に絡みあって。でも、「台詞はありません」と聞いたときにめちゃくちゃ安心しました。そう、わたしは、阿部サダヲさんの「死んだ妻」役なので、遺影でしか登場しないのです。
宮藤さんにはまだお会いしていないですが、阿部サダヲさんとは写真撮影のときにお会いしました。めちゃめちゃ緊張しました。「うわわ、猫田がいる!」って。わたしにとって、岡田准一さんはいまも「ぶっさん」のままだし、櫻井翔さんは「バンビ」で、古田新太さんは「オジー」なんです。
宮崎県の小林市というところで生まれ育ちました。県の南西部にある町で、霧島山と九州山地に囲まれた自然豊かなところなので住みやすい田舎ではあるんですが、いかんせん、ショッピングモールがない。だから、小林の人はわざわざ宮崎市内へ買い物に行く。わたしも友達とよく行ってました。1時間バスに乗って。
田舎の人にとってショッピングモールってめっちゃ大事なんです。特に10代の若者にとってはアミューズメントパークそのもの。洋服を買ったり、マクドナルドで食べたり、映画を観たり。地元には映画館がないんです。小学生のころ、町中の小学生を集めて、地元の文化会館で『千と千尋の神隠し』の移動上映が行われたんですが、それがスクリーンで映画を観た初めての体験でした。そして、「映画館で観る」という文化が小林にはないから、みんな観ながらしゃべってるし、走り回ってるし。上映会がカオスだったのをよく憶えています。
宮崎のショッピングモールといえば、〈イオンモール宮崎〉がいまはいちばん大きな施設ですが、それができるまでは〈宮交シティ〉というモールがみんなの憩いの場。お笑いライブもそこでよく観ました。 “テツandトモ”さんとか“どーよ”さんとか。いまでも憶えているのが、どーよさんが交通系カードの「Suica」と果物の「スイカ」をかけたネタをやり、宮崎の人はSuicaを知らないのでまったくウケなかったこと。観客席に漂う無数の「?」に気づいたどーよさんが、「えー、Suicaっていうカードがありまして、それで電車に乗れるんです」って慌てて説明したのがめちゃくちゃおかしかった。あと、“いつもここから”さんの本が出たときは、サイン会に参加しました。それは高校生の頃だったかな。
そういう場所へいつも一緒に行ってたのは、幼なじみのメグちゃんとシュンゲ。2人は小学1年生のころからの親友で、いまだに仲がいいんです。とにかくわたしは、2人に支えられながら、どうにかこうにか生きてきたようなもので。わたしのことを「面白い!」といちばん最初に言ってくれたのも2人だったし、学校に遅刻するだらしないわたしを毎朝迎えに来てくれていたのも2人だった。わたしは、2人が迎えにきたときにようやく起きるから、「ちょっとまって、朝ごはん食べるから」ってラーメンを食べたりして、その間にメグちゃんはわたしの宿題をやってくれるという。普通はブチ切れるはずなんですけれど。
メグちゃんはいま、宮崎で小学校の先生をやっていて、シュンゲは、福岡で美容師をやっています。小学生のころによく言っていた将来の夢が、わたしは芸人、2人はそれぞれ小学校の先生と美容師。みんな夢を叶えたんです。
夢が叶った!といえば。お気付きの方も多いと思いますが、わたくし、宮藤官九郎さんの新作テレビドラマ『不適切にもほどがある!』(金曜夜10時〜TBS系にて放送中)に「出演」しております。阿部サダヲさん演じる主人公の妻役で。わたしは『木更津キャッツアイ』のころから宮藤さんの大ファン。当時、小学生だったんですけど、笑いと下ネタと感動、そして「死」というテーマが絶妙に合体しているのがめちゃくちゃ面白くて、夢中になったんです。それこそ、メグちゃんやシュンゲと一緒に「木更津キャッツアイのテーマ」をよく歌いました。「き〜さ〜ら〜ず〜♪にゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃー♪夏は潮干狩り〜♪冬はオヤジ狩り〜♪」っていう、ブルーハーツの曲の替え歌。割り箸に丸く切った段ボールをくっつけて、「き」「さ」「ら」「ず」と書いた応援うちわみたいなものを作って、それを「にゃー♪」に合わせて振って。いまだに鼻歌で歌っちゃいます。ふとしたときに出てくるんです。
だから、宮藤さんのドラマのお話がきたときはエグいと思いました。「うわわわわっ!どうしよう!」って。宮藤さんの世界がマジで大好きだから、1ミリでもじゃまをしたくない、という思いと、出てみたいという思いが複雑に絡みあって。でも、「台詞はありません」と聞いたときにめちゃくちゃ安心しました。そう、わたしは、阿部サダヲさんの「死んだ妻」役なので、遺影でしか登場しないのです。
宮藤さんにはまだお会いしていないですが、阿部サダヲさんとは写真撮影のときにお会いしました。めちゃめちゃ緊張しました。「うわわ、猫田がいる!」って。わたしにとって、岡田准一さんはいまも「ぶっさん」のままだし、櫻井翔さんは「バンビ」で、古田新太さんは「オジー」なんです。