LIFEHACK JOURNAL 暮らしを健やかにする知識とヒント[ 冬の不調×漢方編 ]

LEARN 2024.03.19

働く女性に役立つ情報を、月替わりで紹介。今月は「冬の不調」をテーマに、漢方の考えに基づいてこの季節を元気に過ごすヒントをお届けします

INDEX

INTERVIEW 漢方の視点から考える冬の不調対策と、2024年に向けた体づくりの心得。

冷えたり乾燥したりしがちな冬は心身の不調が表れやすい季節。そんな時季を元気に乗り越えられる健やかな体づくりの秘訣を、予防医学である漢方やその考えをもとにした養生から学びます。

漢方とは、中国から伝来して日本独自の発展を遂げてきた伝統医学。植物や動物、鉱物由来の生薬を組み合わせた漢方薬を用いて体の不調を改善するほか、人間が本来持っている強さを引き出し、病気を予防するという考えから成り立っている。
「四季の捉え方にも漢方ならではの考えがあり、その考えに基づくと冬は翌年に向けた体づくりの季節に当たります」と、漢方薬局〈台所漢方〉の漢方栄養士・古尾谷奈美さんは話す。

「春から夏にかけては気温が徐々に高くなり、体に多少の負担がかかってもアクティブに活動できる季節。でも、その結果として知らず知らずのうちに疲労が溜まり、秋冬に入ってからいきなり体調を崩す人も多い。なので冬は、各臓器に溜まった疲れをリカバリーし、かつ翌年を快適に過ごせるようしっかりと力を蓄える期間とされているんです。冷えや頭痛などのちょっとした不調は見過ごしがちですが、我慢できる程度でも体からのSOSだと思ってください。さらに今季は寒暖差が激しいため、血管に負担がかかりやすいのも特徴です。血管が弱まると血が滞る瘀血による冷えや子宮系のトラブルが心配されますので、特に女性は生理の症状に違和感があったり、例年よりも冷えを感じるのであれば放っておかないようにしましょう」

とはいえ基礎体力がある20~30代は、イベントごとも多い季節には、つい無理をしてしまうもの。だからこそ、体への負荷が蓄積されないよう意識したい。
「普段よりもトイレが近くなったり、便秘ぎみになったりといった些細な症状も、私たちからすればれっきとした病気の一歩手前なんです。自然に改善していくこともありますが、少しでも不調を感じるのは体のなかで何かしらのエラーが起きている証拠ですし、そのタイミングで対処すれば良くなる可能性も高い。放置すると30代半ばを迎えたころに一気にそのツケがくるので、体調の変化を感じたらその都度適切なケアをしていくのが大切です。漢方の療法は不調を改善しながら代謝も上げてくれるという利点があるので、免疫力を高めたり老化を防ぐことにも繋がります。これから10年、20年先の未来を健やかに美しく過ごすという意味でも、冬は自身の体に向き合う時間として、無理をせず体のサインに注意して過ごしていただけたら」

冬の不調改善は「腎」に注目。2タイプで異なる症状とは?

漢方には人間の体を「肝・心・脾・肺・腎」の5つに分けた五行説という考えがあるが、冬になるとそのなかの「腎」に不調が起こりやすいのだとか。
「腎は腎臓と膀胱、それらに関わる臓器全体を指します。冬は寒さで腎が弱まりやすいので、薬局にいらっしゃる方にヒアリングしても腎の不調に基づいた冷え性や頭痛、頻尿が多くみられます。腎が冷えると膀胱や腎臓で水分の巡りが悪くなり、先ほど話した瘀血や気鬱を起こす場合も。さらに腎は骨や髪の毛にも関係するので、アンチエイジングを考える上でも、いい状態をキープしたい場所です」

腎が原因となる不調を大きく分けると、冷えにともなうトラブルが顕著な腎陽虚、潤い不足による乾燥が原因の腎陰虚の2タイプがあるそう。そこで、それぞれの特徴的な症状とおすすめの漢方薬を教えてもらった。
「腎陽虚の代表的な症状は冷えや頻尿、足腰のだるさ、生理周期の遅れなどが挙げられます。どの症状が強く出ているかによりますが、基本的には体を温める『八味地黄丸』をおすすめしていますね。腎陰虚は目のかすみやほてり、めまいなどの更年期に似た症状が出るため、目にもいい薬草を含む『杞菊地黄丸』や乾燥も防いでくれる『六味丸』を処方することが多いです。そして腎自体のエネルギーが弱まって活動力が低下している方には、滋養強壮の漢方薬として知られる『参茸大補丸錠』を。こちらは植物性よりも強い動物性生薬が入っており、体全体の不調を助けてくれるんですよ」

冬の養生を生活に取り入れて病気知らずの体をつくる。

そして「冬に限りませんが、心身を元気に保つには胃腸の調子を整えることも大事なんです」と、古尾谷さんは続ける。
「胃腸が乱れると、慢性的な疲労や気鬱も起こります。特に働き盛りの世代をカウンセリングしていると、仕事に集中するあまりに水分補給や食事が疎かになり、胃腸が弱まっている方が多くいらっしゃって。漢方では、漢方薬の処方とともに養生で体をいたわることも重要視するため、そうした方には3食きちんと食べて胃腸の負担を減らすなど、生活習慣の見直しについてもアドバイスします。いくら漢方薬で対処しても、不摂生を続けていると本末転倒なので」

養生とは字のとおり、生活習慣や食生活を整えて生命を養い、体自体を強くしていくこと。
「冬の養生では、いかに体を温めながら次の季節に向けてエネルギーを蓄えられるかがカギ。くわえて漢方における冬は、人間を含む動物は内にこもり、体を休める閉蔵の時期とも呼ばれています。つまり無理をせず、心身の休息を第一に考える期間なんですね。なのであまりアクティブに動かず、外界のサイクルに合わせて早寝遅起きしたり、インドアの時間を楽しんだりと、できる範囲でのんびりしてください。みなさんお忙しいと思いますが、養生を頭の片隅に置いて、少しでも元気に過ごしていただけたらうれしいです。左で紹介している8つのススメも取り入れながら寒さに負けない体をつくっていきましょう」

CHECK LIST

冬の養生、8つのススメ。


温性食品を食べる。
積極的に食べたいのはニンジンやごぼうなどの根菜。漢方薬の原料である生薬に根菜が多いのも、根から土の栄養を吸い上げる力がある野菜=体の力を高めると考えられているからだそう。


火を通して調理する。
豆腐や大根、トマトをはじめとする涼性の食材は、生のままだと体を冷やすため、調理法を工夫して温めてから食べるのがポイント。熱が加わる、煮る・焼く・圧をかけるレシピを選んで。


食事は1日3〜5回に分けて食べる。
ドカ食いや1日1食しか食べない食生活は、胃腸に負担がかかるのでNG! 数回に分けて食事をとり、エネルギーをコンスタントに作りながらゆるいペースで消費するように心がけよう。


激しい運動より軽い運動を。
エネルギーを蓄えたい冬の運動は、負荷のかかる激しいものではなく、体が修復されやすい軽めの内容がグッド。おすすめは、こまめに歩くウォーキング。1日で計1万歩を目指して。


入浴はぬるめで長湯。
一気に汗をかくと体力を消耗し、体内の熱が一度に発散されることで体も冷えてしまう。お湯はぬるめに設定して、じんわりと汗をかきながらゆっくりとエネルギーを消費するのがベターだ。


マッサージや鍼灸を利用する。
冷たくなっている部位をマッサージしたり、自覚している不調に効くツボにお灸をすえるなど、体の外からも冷えにアプローチするとなおよし。ときには鍼灸院を頼ってみるのもあり。


夜は早寝、朝は遅く起きる。
外界のサイクルに沿って寝起きするとエネルギーの消耗を抑えられ、アンチエイジング効果も期待できる。冬は日が昇る時間が遅いため、春夏より30分でも早寝遅起きを意識すると◎。


スパイスを活用する。
シナモンや陳皮(オレンジの皮)、コショウなどのスパイスに代表される熱性の食材は、温性の食材以上に血の巡りをよくする働きがある。料理やドリンクに入れて“温める力”の底上げを!

SHOP 漢方初心者さんも1包から試せて安心。

漢方薬を1包から手軽に買える、漢方薬店の〈LAOSI〉。漢方について知りたいビギナーは、まずは薬膳茶からお試しを。気軽に話をしに立ち寄ってみては?

カフェのような店構えながら、お店のスタンスはふらっと気楽に寄れる昔ながらの薬屋さん。「漢方を生活に取り入れる入り口になれたら」という思いで、食生活などの些細な相談であっても無料でカウンセリングを受け付ける。

漢方薬は滋養強壮や睡眠の悩みなど、厳選したものを7カテゴリーに分けて販売。くわえて紅茶などをベースに飲みやすさと効能のバランスを追求した漢方薬膳茶や、おやつ感覚でそのまま食べられる薬膳茶などのオリジナル商品もここの魅力だ。
訪れる人の心身と向き合い、漢方がある生活をさまざまに提案する〈LAOSI〉は、私たちの強い味方になってくれそう。

DATA 冬の不調と漢方への関心度Q&A。

実際、みんなは冬にどんな不調を感じてどのくらい漢方を取り入れているの? ハナコラボ パートナーに聞きました。

質問 あなたが冬の不調で出やすい症状は?
40件の回答(複数回答可)

LIFEHACK JOURNAL データ1

質問 普段、漢方を取り入れていますか?

LIFEHACK JOURNAL データ2

KEYWORDS 冬の養生で押さえたいキーワード。

養生において、覚えておきたい食にまつわるキーワードはこちら。この2つを意識して、体づくり計画を強化していこう。

KEYWORD

【 黒 】
自然界を木・火・土・金・水の5つに分類した五行説によれば、冬に食べるべきは黒色の食材とされている。黒ゴマやひじきなど、黒い食材には冬に弱まりやすい腎の働きを補ってくれるものが多いので、外食時やスーパーで買い物をするときにも注目を。


【 塩 】
塩辛いものには冷えて固まった体の凝りを和らげる効果も。塩分の摂りすぎはよくないものの、塩は余分な水分を排出してくれる働きがあるため、適度に摂取して体の毒素を出していこう。おすすめはミネラルが豊富な天然塩。自分好みの塩を探してみて。

GOODS 体の内外からしっかり温める。

寒い季節を乗り切るために、入浴剤からサプリまで、冬の養生をサポートしてくれる6つのあったかアイテムを厳選しました。体を内外からじんわりと温めて、冬の不調に負けない体づくりを。

photo_Natsuko Miyagi text_Wako Kanashiro edit_Kana Umehara

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