諸岡なほ子の『おいしいのりもの旅』第11回 「あかいくつ」に乗って満開の横浜めぐり(前編)
横浜の街を歩いているとよく見かけるのが、レトロでかわいらしい赤いバス。その名も「あかいくつ」。横浜市交通局の横浜観光スポット周遊バスで、2005年から運行中。これで、赤レンガ倉庫も元町も関内も中華街も簡単にアクセス可能。今回は、「あかいくつ」に揺られながら、のんびり横浜のおいしいもの探し!
都心からアクセスもいいからと、ついつい何も準備しないで車で行ってしまい、駐車場の混雑でなかなか止められず、買い物も食事も終わって移動しようとしたら思いのほかお高い駐車料金に「ヒエ〜」と絶叫した経験のある方に是非お勧めしたいのが、横浜市交通局が発行している「みなとぶらりチケット」500円。横浜みなとエリア内の市営地下鉄と市営バスが1日乗り放題!もちろん、レトロかわいい「あかいくつ」も利用可能です。
今回は、横浜駅で「みなとぶらりチケット」を購入し、市営の路線バスで桜木町まで移動。桜木町から「あかいくつ」に乗車してみました。ちなみに、横浜市交通局が運行している観光系のバスには、他に3種「ぶらり三渓園BUS」「ぶらり赤レンガBUS」「ぶらり野毛山動物園BUS」があり、どれも「みなとぶらりチケット」利用可能。さすが横浜。観光資源豊富。
じゃあ、手はじめにと訪れたのが、初夏の花が咲きほこる山下公園。眼前に広がる東京湾。左手には大桟橋。目を転じれば横浜マリンタワー。どこを見ても港町横浜らしい眺め。後方にはホテルニューグランドの文字。皇族やイギリス王室などの賓客や多くの著名人も利用したクラシックホテルで、「ドリア」「ナポリタン」「プリンアラモード」発祥の地なんです。
しかし、今回のおいしいものは、山下公園から少々歩いたところにある、中華街の中に。写真は目印の善隣門。隣国や隣家と親しくするという「親仁善隣」という言葉が書かれています。この善隣門から歩くこと1分ほど。
はい、こちらが今日の目的地。「馬(マー)さんの店 龍仙 本店」。朝7時から営業している、上海料理のお店です。こちらに、おいしい中華粥をいただきに。店内には他に常連さんと修学旅行の学生さんの姿が。私も早速オーダーすると、すぐ後ろにある厨房に中国語で伝えられ、ジャーッと調理のはじまる音が聞こえてきました。
こうして出てきたのがこちら、ピータン粥。どんぶりになみなみと純白のおかゆが入っていて、食べきれるのか!?と一瞬たじろいでしまいます。…が、杞憂でございました。
体にしみこむ鶏ガラだし。舌で簡単にすり潰されてしまうお米。真っ白だったおかゆの表面が、ピータンを発掘する度に何かおいしいソースの色に染まり、酸味とカリカリ食感のザーサイが味に変化を与え、あっという間の完食。
で、おかゆを食べきる直前ぐらいに運ばれてきたのが、ついついオーダーしてしまった小籠包。だって私の大好物。乾いて見えた皮に「ん?」と思いつつ、アルミホイルに乗っているニュータイプに「はじめまして」のご挨拶。ホイルごと左手で持ち上げて、右手の箸で口の中へ。薄いながらもモチッとした皮の食感に、「なるほど!」と思った次の瞬間、スープが口内で波打ち、餡の大きさに仰天。肉っ。じっくり咀嚼して飲み込んだ後、鼻から抜ける生姜の香り。至福。
しかし、オーダーした2品が到着していたことで油断していた私は、もう一品運ばれてきて思わず店員さんの顔を見上げてしまいました。「コーヒーです。」
ほ、ほんとだ。コーヒーだ。すごい、食後にコーヒーをサービスしてくれるなんて、なんて素敵。朝ごはんもこれでばっちりシメられます。
胸もお腹もいっぱいでお代を支払うべくお姉さんに声をかけると、「1188円です。あ、縁起のいい数字ね」とチラリとこちらを見て一言。わぁ、そうなんだ♡ お釣りをくれる時にも、「なんかいいことあるかもね」と中国訛りの日本語で言ってくれ、なんだか私もすっかりその気に。ご機嫌で「ありがとう」と言ってお店を出ると、今度はそこに、店内の有名人との写真に映りまくっていた女性、馬(マー)さんその人が。
私が、観光客みたいにあちこち写真を撮ったりしていたからか、「どこから?」と尋ねてくれました。その時の笑顔が、ふくふくとしていて、柔らかくて、可愛くて、あったかくて、こちらまで目尻がさがってしまう。なんかもう幸運の塊という感じの人。会えてよかった。「また今度、家族で来ますね〜」と言って手を振ると、「は〜い」とニコニコ手を振り返してくれました。
縁起の良さそうな1日のはじまりに心も体もホカホカで、私は再び「あかいくつ」に乗車。何かいいことありますように〜♪