別居をしたら夫婦喧嘩がゼロに。私が別居婚を選んだ理由【前編】|私を生きる、ワタシの選択 Vol.4
結婚や妊娠、家庭とひと口に言っても、その在り方は人それぞれ。“普通”とされる選択“じゃない方”がしっくりくる人だってたくさんいる。そして、そのどれもが正解であり、自分らしい生き方。カップル間でのコミュニケーションや心理学を学んでいる、工藤まおりさんが、そんなあらゆる価値観や選択を掬い上げ、言葉として綴ります。今回は、別居婚という生き方を選択している櫻林さんに話を伺いました。
「夫と別居をしてから、私生活での喧嘩はゼロ。関係性が良くなりました」そう話すのは、コロナ禍をキッカケに2021年から婚姻関係を継続した状態で別居を始めた、会社員兼DJとして活動している櫻林さん。
現在櫻林さんは、息子さんと2人でマンション暮らしをしており、すぐ近くのマンションで櫻林さんのパートナーが1人で暮らしている。夫婦で住んでいる場所はバラバラだが、必ず毎晩櫻林さんの自宅に3人が集まり、夕食を共にしながら家族団欒のひとときを過ごしている。
結婚生活は、夫婦が一緒の家で生活するイメージが根強い。その中で、なぜ櫻林さんは別居という形で婚姻生活を行っているのだろうか。
前編となる今回は、結婚をしてから別居に至るまでの話。櫻林さんは26歳の時に、現在のパートナーと知り合いお付き合いを開始。それからすぐに同棲を経て、28歳の時に妊娠&結婚することになった。そんな二人の関係性に変化が生じたのは子どもが生まれたことがきっかけだったという。
親になったことで、パートナーとの関係性が変化した
──初めてパートナーさんと出会った時の印象を教えてください。
「夫とは、クラブでDJをしているときに出会いました。私の夫、めっちゃ癒し系なんですよ。笑福亭鶴瓶さんのような福の神様みたいな顔立ちで、見てるだけで人を幸せな気持ちにするような顔なんです。初めて出会った時も、ずっとニコニコしていてそこに惹かれました」
──出会ってから、すぐに付き合い始めたんですか?
「彼もDJをやっていて共通の趣味があったからか、すぐに意気投合して付き合うようになりました。付き合っていた当初は下北沢で同棲していたので、2人でよく下北沢のレコード屋さんをめぐったりしてましたね」
──共通の趣味を楽しむ素敵なカップルですね。これが思い出のレコードですか?
「はい。私は彼に出会うまでは、主にヒップホップやR&Bを結構聞いてたんです。でも夫の好みはもうちょっと渋めの60年代70年代のソウル系と呼ばれる音楽。夫と一緒にソウル系の音楽を聞いているうちに私も好きになって、その時の思い出のレコードです」
──すごく仲が良さそうですが、同棲期間の時は別居したいとは思わなかったんですか?
「2人で暮らしていた時は、大きな喧嘩もなく仲良く暮らしていました。関係性が変わってきたのは、私が子どもを出産してからです。関係性がカップルから親という立場に変わってから、今までと何も変わらない夫に対して不満を持つようになってしまって」
リモートワークで家にいる時間が増え、関係性が悪化
──子供が生まれると、2人の関係性は大きく変わりそうですよね。因みに、喧嘩の主な原因は?
「育児の負担が私にばかりかかっていることが不満で、それでよく喧嘩になっていました。夜中に起きてミルクあげたり、あやしたりするのも私だけ。私は睡眠細切れの状態なのに、夫はその間ずっと寝てる。そんなのってずるくない?って思ってしまって…。
夫から見ればすごく積極的にやってたみたいなんですけど、私から見たら足りないと思ってて。私が私が俺が俺がみたいな状態で、よく喧嘩してました。毎日イライラしてて、鬼嫁みたいになってました(笑)。今思えば、アンガーマネジメントが全くできてなかったなと思います」
──出産直後はホルモン変化によってメンタルが安定しないですし、イライラしてしまうのは仕方ないと思います。でも、当時は喧嘩しながらも別居までは考えていなかったんですよね?
「そうですね。毎回両親に間に入ってもらって、どちらかが謝ったりしながら同居生活は継続していました。それに、子供が大きくなるにつれて喧嘩の数は徐々に減ってきたので。
でも、2019年頃から新型コロナウィルスが流行によってお互いがリモートワークで家にいる時間が増えたことで、再度夫に対してイライラすることが増えてきてしまいまして…」
──当時は「コロナ離婚」という単語も出てきたほど、夫婦間で揉めている人たちも増えていたように思います。
「家がリモートワークに最適化していなかったんですよね。一緒にいればいるほど、一緒にいる時間が長ければ長いほど、夫がイライラの対象物になっちゃって。24時間一緒に視界にいる状況が本当にキツかったんです。
今までは、少し喧嘩してもなるべく相手のいいところに目を向けて、嫌なところは目を瞑って過ごしてきてたものが、一緒にいる時間が長くなったときに、嫌なところに目を瞑れなくなってきたんです。どんどん自分の気持ちに嘘はつけないという感情になってしまって、最終的に家を出ていくことに決めました」
──別居することに対して、パートナーさんはなんと言ってたんですか?
「何度か離れて暮らしたいという相談をしても、夫はずっと3人での同居を希望していました。なのでもう強行突破しかないと思って『私、もう家出ていくからね』と夫に伝えて息子と一緒に家を出ることにしました。引っ越したと言っても、夫が住んでいるマンションの通りを挟んで向かい側の場所なので、すごく近いんですけどね」
別居してから、家族3人笑って暮らせるように
──別居するという決断について、ご自身の中で葛藤はありませんでしたか?
「今まで私が見てきた夫婦って、結婚して同居してるか、離婚してシングルマザーになるかのどちらかしか見たことがないんですよね。婚姻関係を継続しながら別居するなんて事例は聞いたこともなかったので、この決断は単なる私のわがままなんじゃないかと、すごく葛藤がありました。
でも、結果的に別居により夫婦関係が改善したので、これで良かったんだなと思っています。世の中には別居に対して、『離婚の一歩手前』みたいなイメージもありますけど、前向きな別居もあるということを伝えしていきたいです」
──そうですね。住まいを分けることで、揉め事が避けられるケースもあると思うので、『前向きな別居』がもっと浸透してもいいと思います。
「離れて暮らしたいけど、夫のことは大切に思っているし離婚したいというわけではないという私にとっては、婚姻関係を継続しながら別居をすることが最良の選択だったと思います」
──因みに、強行突破してからパートナーさんからの連絡はありましたか?
「出て行った日の夜に『本当にいなくなったんだね』と連絡がきて、数日後に私の気持ちが落ち着いたタイミングで、夫に引っ越した場所を伝えました。『ご飯食べに来る?』と私が誘ってから、徐々にご飯を食べにくるようになって、今では夕食を食べる毎日2時間は、必ず3人で過ごすようにしています。別居したことで、私が夫に対してイライラすることがなくなりました」
──ちなみに、お子様は別居に対して不満があったりはしなかったんでしょうか。
「子供には事前に『パパもママもお互い大好きなんだけど、別々で暮らすことにしたんだよ』と話をして、受け入れてもらいました。
最初は環境の変化に戸惑いがあったかもしれませんが、同居してた時に比べたら今の方が断然笑顔が増えているし、楽しそうにしています。今では『俺のお家、2つあるんだよ!』って友達に自慢したりもしています」
──家族3人幸せそうに暮らしていて、別居を決断されて良かったですね。
「今では私生活での喧嘩がゼロになって、ストレスフリーで生活できています。私たちは別居してるからこそ、夫婦関係が上手くいってると思っています」
別居当初は「自分のわがままなのでは」という葛藤があった櫻林さんだったが、別居してから夫婦仲が改善され、家族の笑顔が増えたという。夫婦間での別居に対して世間から賛否両論あるかもしれないが、夫婦が仲良く過ごすための一つの選択肢として、住まいを分けるというチョイスも良いかもしれない。
後編記事では、別居してから大きく変わった夫婦の関係性と、今後の生活について話を聞いていく。