「おすすめ」はそろそろ卒業。ワインを“自分で”選ぶための基礎知識
ビストロやレストランでワインを注文する時、どう選べばいい? 思い切って買った、とっておきのワイン、合わせるおつまみは何にしよう…。そんな一見難しそうなワインと食事のペアリングも、ほんの少し機転をきかせれば実は簡単。ワインソムリエの齋藤久平さんを講師に招き、ハナコラボメンバーが集う定例イベントで語られた秘訣をシェアします。
店員さん任せはもう卒業。主体的にワインを選ぶには?
例えばレストランで、ワインリストの解説に目を通しても「おすすめでお願いします」としか言えない。そんなほろ苦い経験、誰もが一度はあるはず。専門的な用語や知識がないと自分好みのワインに出合えないかというと、答えはNO。また、食事にワインを合わせる時も“白ワインには魚介類、赤ワインには肉料理”が絶対のルールではないと語るのは、今回開催のイベントで講師を務めた、ワインソムリエの資格を持つ齋藤久平さん。
「ワインと食事を合わせることで新たな風味を生み出す“マリアージュ”という概念もありますが、これは点と点がピシっと合って初めて成功する、いわば1+1=10を目指す難易度の高いもの。一方、ペアリングはもっと気軽で1+1が2や3になればOKという発想のもと、色や味わいなどから組み合わせを考えていく。よってペアリングの方が自由度が高いです」。
正解は一つじゃない。だからこそビギナーでも挑戦しやすく、食事やワインの新たなおいしさに気づくきっかけにもなるペアリング。そのアイデアが湧くまでの道しるべにもなるポイントを、今回は齋藤さんが一つずつ丁寧に解説してくれました。
泡、白、赤。今夜から実践できるペアリングの秘訣
今回のイベントに用意されたのはスパークリングワイン、白ワイン、赤ワインの3種類。それぞれ風味の趣が異なるものを2本ずつ、計6本が揃った。また忘れちゃいけないのが、ワインと一緒に堪能したいアペリティフ(前菜)。今回は家でも用意できる、各ワインに合うものをご紹介。
①スパークリングワインのペアリング
ちょっとしたお祝い事やパーティーの1杯目といえば、スパークリングワイン。
「スパークリングワインは幅広い食事に合いますが、簡単なのは食感を揃えること。スパークリングワインの泡の弾けるぷつぷつした口当たりに、カリっと香ばしいクラッカーやトースト、さくさくのフリッターや天ぷらなどの揚げ物、さらに緩衝材としてクリームチーズを加えると、プチプチとしたいくらなどの魚卵の組み合わせも面白い。あと、カルパッチョやサラダなどの前菜類もやはり相性がいいです」。
1本目は《AWANOHI PEAR BRUT》(原産国は日本)。洋梨の芳醇な果実感と旨み、ほのかなワインの余韻が口の中に広がる。爽やかな口当たりですーっと飲みやすい。
これに合うのが、クリームチーズを塗り、生ハムをひらりと載せたクラッカー。
「洋梨の果汁感に生ハムの塩味を合わせました。“生ハムメロン”をはじめ、生ハムは桃やパイナップル、マンゴーなどたいていのフルーツと相性がいいんです。またクリームチーズはワインの繋ぎ役として万能なので、困った時は塗りましょう!(笑)」
2本目は《クレマン・ド・ロワール ブリュット NV シャトー・ド・ロレ》(原産国はフランス)。ボトル詰めをしてさらに糖を加えることで瓶内二次発酵させたスパークリングワイン。一定期間熟成させることで液体に泡が溶け込み、繊細な泡立ち。
これに合うのが、クリームチーズを塗り、たくあんをトッピングしたクラッカー。
「なぜたくあん? と思うかもしれませんが、たくあんはいわば日本のピクルスです。食感がよく、出汁の味が熟成した泡に合います」。
②白ワインのペアリング
定番の白ワインで自分の好みを明確にしたい時、“目のつけどころ”は主に2つ。
「一つ目は、さっぱりした味わいとしっかりとした味わいのどちらが好みか。二つ目は、酸味があるのとないのではどちらが好みか。前者は、製造工程で樽で熟成させているかどうかがポイントで、樽不使用ならフルーティーでさっぱり、樽を使っていればドシッとした、“バニラ”や“ナッツ”と表現される風味になります。
また後者は、ワインの説明に書かれたフルーツから連想すると分かりやすいです。ライムやレモンとあれば爽やかな酸味がイメージできますし、桃やパイナップルとあれば酸味よりもふくよかな甘さをより感じられるかなというふうに見当がつきます」。
3本目は《ブルゴーニュ・シャルドネ 2021 ル・ブルジョン》(原産国はフランス)。製造において樽を使っていない“ステンレスタンク発酵”により、ブドウ本来のフルーティーさや果汁感をダイレクトに感じられる。
これに合うのが、シンプルなポテトサラダ。
「白ワインの酸味にマヨネーズの酸が合います。樽を使用した白ワインを飲む時は、燻製のニュアンスがあるベーコン入りのポテトサラダが好相性です。また、フレッシュなソーヴィニヨンブランという白ワインには、きゅうりをたっぷりと入れたポテトサラダが◎。ともあれ、白ワインのおつまみにポテトサラダはぴったりです」。
4本目は《シャルドネ 2021 アナヨン》(原産国はスペイン)。完熟したトロピカルフルーツのように濃厚。樽で6か月熟成させておりワイン好きならきっと気に入る一本(ちなみに、今回参加したハナコラボメンバーの間でも一番人気でした!)。
これに合うのが、鶏肉のクリームソースの煮込み。
「白ワインで肉料理を楽しむなら色合わせが大事。クリームソースやバターソースなら肉料理でも合わせやすい。魚料理も同様です。醤油を使ったソースや甘酢あんであれば赤ワインの方が合うでしょう。また、ワインと食事の温度を合わせることも重要です。冷たいワインと温かい食事は口の中でバトルに。今回はクリームソースに合わせて、白ワインも少し温度を上げています」。
③赤ワインのペアリング
しっかり重厚感のある料理に合わせたくなる赤ワイン。
「一概には言えませんが、原産国も一つのチェックポイント。例えば冷涼な地域ではブドウがそこまで熟さず、フレッシュな青みのある味わいになりますし、温暖な地域では熟したブドウを使用した、糖度やアルコール度数の高いジャムのような味わいのものが多いです。あとは樽を使用した赤ワインには、コーヒーやチョコレートのような、樽使用の白ワインでは出てこない香りを楽しめるものもあります」。
5本目は《ブルゴーニュ ルージュ 2021 リュシアン ミュザール》(原産国はフランス)。赤スグリやレッドチェリー、プラムなどの香り。軽やかな飲み口やほどよい酸味が印象的。
これに合うのが、ニンニクを効かせた醤油で漬け込んだまぐろ。
「魚といえば白ワインと思いがちですが、まぐろやかつおは鉄分があり、赤ワインと実は合わせやすい。まぐろやかつおに赤ワインを合わせるなら、ライトかミディアムライトの赤ワインだとペアリングが成功しやすいです」
6本目は《ピノ・ノワール ソノマ・コースト 2020 アントヒル・ファームズ》(原産国はアメリカ)。カシスやブラックベリーなどを思わせる“ジャムっぽさ”が特徴的。軽すぎず重すぎず、ほどよいバランスのミディアムライト。
これに合うのが、赤ワインに間違いなく合うローストビーフ。
「ポイントはローストビーフにかけたソースです。ワインの味わいに合わせて、付属のグレービーソースと冷凍のストロベリーを半々くらいの比率でミキサーにかけて撹拌した、オリジナルのソースをかけました。また同じ牛肉でも、ステーキのような厚みのある料理には質感を合わせて重ためのフルボディが合います」
ペアリングでおうち飲みやホームパーティーに彩りを
専門的な用語などを覚えなくても、ちょっとしたポイントをふまえれば、誰でも実践できるペアリング。親しい人を招いてのおうち飲みや、クリスマスなどのイベントごとも多くなるこれからの季節。今回学んだワインのチェックポイントやペアリングのヒントを念頭に、とっておきのひと時を楽しんで。