暮らしを変える。フルリノベ編

LEARN 2023.06.24

思い切って、一から十まですべて変えてみるのも良し。時間と手間はかかるが、新しい自分に出逢える好機でもある。「いつかは」をそのままにせず実行に移した2つの家を訪問した。
自分はどんな空間でどう暮らしていきたいか。理想の間取り、デザイン、生活動線をリノベーションによって実現した住まいを訪ねました。

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日本の山々を訪ね歩く古谷知華さん。にぎやかな場所に立つ中古マンションを、まるで繭の中にいるような心地よい空間へと生まれ変わらせました。

「いつかは森の中に住みたい」。そう話すのは〈日本草木研究所〉の古谷知華さん。今は仕事の拠点である東京を離れられないから、自宅を自然素材の家具がよく似合う空間へと改修することにしたという。
「窓の外の景色は変えられませんが、家の中だったら思いきり自分の理想に近づけられる。それがリノベのいいところ。もともと、この物件は自分たちの商品を撮影するスタジオ兼事務所にするつもりで購入したんです。窓が多くて好立地、スケルトン状態で売りに出されていたのも魅力でした。しかし、スタジオよりもここを自宅にした方がいいと知人に勧められ、急遽変更。ピンタレストなどで理想の空間の画像を集めて家づくりのイメージを固めました」

78 m2 の空間を2人住まいの家にプランニング。気をつけたのは部屋の印象を軽くしすぎないこと。「空間の雰囲気を決めるのは素材だと思っていて、〝土気ととろみ感〞をテーマに壁や床、天井を決めていきました。ただ、日本は素材のバリエーションが豊富とはいえず、設計士さんの提案が理想と違ったことも。そこで妥協せず、自分でメーカーを探してサンプルを取り寄せたり、ショールームに足繁く通ったり。理想的な素材を見つけても予算に合わなければ、〝高見え〞する材質に変えたり、タイル調のシートを床に張ったりして工夫を。特に意識したのは塗装。キッチンの壁は2種類の塗料を重ねてあえてムラをつけたフレンチウォッシュ、柱の壁は自然光で見た時に陰影を感じられるよう細かい大理石の粉末が含まれた塗料を採用しました。業者の方ととことん話し合いを重ねたおかげで満足のいく仕上がりになりました」

家が完成してからは、そこに合う家具探しがスタート。意外と大変だたのがカーテン選びだったそう。「スタジオにするつもりで窓がたくさんある物件を選びましたが、生活していく場となれば、カーテンを閉める時間は長くなる。分厚いカーテンの手前に柔らかな印象のレースカーテンをつけることで、部屋のムードを損なわないようにしています」

とことんこだわった自宅づくり。住んでみて分かったこともある。書斎に扉はつけなかったのですが、パートナーとオンラインミーティングが重なると、やはり必要だと実感。ここには簾すだれを掛けて、お互いの存在が気にならないようにしています。自分でつくった空間だからこそ、ネガティブポイントも改善していこうと前向きに思える。今は広いテラスの活用方法を思案中。以前より家にいる時間が好きになり、気分も体調も自然と良くなりました」

photo : Yuka Uesawa text : Mariko Uramoto

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