小池栄子のお悩み相談室 /第6回:「友人や同僚と比べて、私の思考は 普通で平凡 。努力や後天的なもので挽回したり、新しい創造性などを身に付けたりできますか?」 (28歳/人事)
仕事、プライベート、家庭生活含め、日々頑張っている人ほど悩みは尽きず、誰かに聞いてもらいたい、いいアドバイスが欲しい…そう思っている女性たちの声がHanako編集部に寄せられています。そこで、女優としてひときわ存在感を放ち、かついつもスパッと気持ちのいい発言をされている小池栄子さんに、人生の先輩としてアドバイスをしていただくこととなりました! 隔週更新でお届けします。
――あっと驚く思考法や才能を周りから見せられてしまうと、自分が平凡な人間に感じて、落ち込んだり焦ったり 。そんな経験をしたことがある人は、多いはず。
本日のお悩み
友だちと話しているときや、仕事で企画を出すとき…。どんなときでも“私はいたって平凡だな”と感じてしまいます。友人や同僚から、普通の人が見ている景色とは別の景色を見ているような視点やアイデアがポッと挙げられると、私もそんな思考の飛躍が欲しい、別の角度から物事を見られるようになりたい、と比べてしまうのです。本を読んだり、芸術に触れてみるなど努力はしているのですが、そもそも努力でどうにかなるのかも疑問です。小池さんは、独創性のようなものは後天的に身につけられるものだと思われますか? また、どうしたら他人と比較せず、自分は自分と思うことができるようになるでしょうか?(28歳/人事)
――この問題は、明確な答えや解決策が見つかりにくく、短期間で解決できるものではないからこそ、余計に悩み続けてしまうのかもしれませんね。
第4回目のお悩みにも通ずるところがあって、その時にもお話ししたんですが、私もいたって平凡な人間なんです。私のいる芸能界を見回すと、本業だけじゃなく実は絵もうまくて、個展を開いたり、絵の賞をいただいている‥みたいな方も多い。そういう才能や能力の持ち主を、すごく羨ましいと思っています。
――仕事の才能があって、絵もうまくて、なんなら歌もうまくて…みたいな方、いますよね。でも、私たちから見たらさまざまな才能を持たれているように見える小池さんも、“羨ましい”と感じられているんですね。
思っていますよ! 自分に才能はないし、遺伝的にも持ち合わせていないんだろうなぁ…って思うから。ただ、もしひとつ挙げるなら、子供の頃から喋ることが好きだったんです。なので、それを活かせる仕事に出合えたことは、よかったかな。ただし、得意ではあったけど、仕事を最初からうまくできたわけではなくて。私は経験しながら、少しずつ学んできたんですよね。その観点から答えるなら、その人にちょっとでも芽があるなら、後天的に伸ばすことができると思っています。
――“普通で平凡な自分を変える”って難しいですもんね。
でも、そもそも平凡って全然悪いことではないんじゃないかな? 独特な考え方をしたり、奇抜なファッションや、新しい視点での発信をする人って羨ましいし、楽しそうだとは思うけど、平凡こそ王道であり、ゆるぎない王者な気がするんです。
――“ゆるぎない王者”だなんて強そうだし(笑)、素敵な表現です。
芸能界で言えば、奇抜な存在感を持つ人とか、変化球を投げてくる人は一瞬注目されますが、私はむしろそういう人よりも、王道を歩きながら何十年もスポットライトを浴びて輝き続ける方が絶対に難しいと思うんです。だって、見てくれる世代が変わっても、ずっと表舞台に立ち続けているんですから。例えば、出川(哲郎)さんとか、ダチョウ(倶楽部)さんとか。私が小さい頃からテレビに出ているし、今もずっと求められているなんてすごい。ほんと尊敬しています。
――確かに。時代が変わっても変わらずに活躍しているって、最強です。
だから、王道こそ王者であると。そして、“普通”って大事な気がするんですよね。だって世の中、普通で平凡な人が多いわけで、自分が普通であることで、大勢の普通の人の気持ちや感覚がわかるんだから。
――マスの気持ちがわかるということですもんね。
そうそう。私は平凡だ、普通だ、個性がない…なんて落ち込むまずに、平凡だと言われても、心の中でしめしめ…と思っておけばいいと思います。普通や平凡って、そんなに悪いもんじゃないですから。
――そもそも相談者は人事職だし、普通の感覚はより求められそうです。
そうですよね、まさに適した仕事をしていらっしゃると思います。そして、本を読んだり、芸術に触れるなどの努力をされているのは素晴らしいこと。なにかをコツコツ続けている人って、ある日突然才能が開花するわけではないかもしれないけど、必ず身につくなにかはあるんじゃないかな。それが人に評価されるほどのことではなかったとしても、のちのち自分の役に立ったり、努力したことが発揮できる機会もくると思います。
――平凡は武器になるという発想、素敵です。
奇抜な人は、奇抜な人としかいられないし、平凡がいるからこそ奇抜が目立てたり、前に出て来れるんですよ〜。なんなら感謝してほしいぐらいです(笑)。
――あははは(笑)。
大衆の上に突然奇抜がポンと現れるから、注目されるんですから。ちなみに、芸能界に限らず、社会で長く活躍できる人って、大衆や平凡にも感謝やリスペクトの気持ちを持っている人だと思うんですよね。
平凡であることは周りが見えていて、バランサーになれる。
――小池さんも平凡とか言われたりすることあるんですか?
最近までやっていた舞台で、子役時代から“無難”と言われ、現在はママタレントになっているという役を演じていたんですが、ある日その“無難”が、私のあて書きのセリフだと知ったんです。そのときの恥ずかしさと寂しさと言ったら!(笑)。それ以降、セリフで「無難」と言われるたびに、いいじゃん、無難でいいじゃん! と心を強く持って毎公演演じていました(笑)。
――いやいや、普通こそ王道であり、王道こそ王者ですから。
そうでした(笑)。平凡で無難で、コツコツやり続ける才能が自分の中にあるとすれば、そこを重宝していただいていると信じようと思っています。そして、平凡だからこそバランサーになれる。どの現場に行っても、バランスを取ってうまく立ち回れている気がするのは、自分を平凡で無難だとわかっているし、だから周りが見えているんだよな、って。
――自分のことがちゃんと見えている、って大事ですね。
自分の才能に溺れることは絶対にないですからね。逆に、自分は人と違ってすごいんだと思った瞬間に、周りが見えなくなるような気がします。それこそ、この相談者の方の人事という職業は、バランス感覚が必要だし、平凡はものすごい強みだと思いますよ。
――もうひとつ、どうしたら他人と比較せず、自分は自分と思うことができるようになるのでしょうかという相談もあります。
もうこれは、経験と年齢ですね。28歳ならまだ他人と比較してしまったり、焦ったりしてしまうのは当然だと思います。それに、誰かと比較して「なにクソ!」って思うのも、活力にもなる感情だから、決して悪いことではないし。焦らなくていいですよ。いろんな経験をしながら年齢を重ねていけば、そのうち自信もつくし、いつの間にか周りを気にしない人間になっていると思いますよ。だから今は、自分がやるべきことや、やれることをコツコツやるに限るんじゃないかな。