すべては、“気”のいい場所から。 宗教人類学者・植島啓司さんが語る!幸せをよぶ、開運聖地とは?

LEARN 2023.01.19

30年以上をかけて地球を巡り、聖地の根源や古い信仰の痕跡を訪ねて実地調査してきた宗教人類学者・植島啓司さん。多くの人が祈りを捧げる神社仏閣、圧倒的な存在感を示す巨石や奇岩、清らかな水が流れる湧き水や滝、古来、独自の文化と自然を継承してきた島…。日本列島には、世界でも類を見ないほどパワースポットが集結している、と語ります。いい運を引き寄せ、明日への人生を拓くアクションを起こしてみましょう。Hanako1217号「開運聖地」特集からお届け。

写真は、対馬〈烏帽子岳展望台〉。和多都美神社から車で5分ほど。駐車場から120mの階段を上ると、浅茅湾(あそうわん)に点在する島々が一望できる。ぜひ晴れた日に訪れたい。
写真は、対馬〈烏帽子岳展望台〉。和多都美神社から車で5分ほど。駐車場から120mの階段を上ると、浅茅湾(あそうわん)に点在する島々が一望できる。ぜひ晴れた日に訪れたい。

真の聖地とは、人が“気持ちいい”と感じる場。

「聖地とは“神の降り立つ場”深山の巨石群や滝など特別な気配を感じさせる場なのですが、行き着くのに不便なため、里に祈りの場が設けられることが多く、これが神社仏閣となったわけです。現代では両者とも聖地と呼びますが、やはり真の聖地に立つと感覚がまるで違います。温かい何かに包まれているような幸せな気分に。文字通り“気”のいい場所なのです。水平線を見渡す海辺や創作物に触れられる美術館なども、現代の聖地といえるのでは」(宗教人類学者・植島啓司さん、以下同)

不変にして万物の根源。石は聖域を示す目印。

「聖地の目印は“石”。地上にある多くのものは、時とともに変化します。川は流れを変え、森も環境によって様子を変えます。しかし石は変わりません。しかも地球の記憶をたどれば大気層も水も、岩石であるマグマの働きから生まれたもの。太古の人々も石に万物の根源たる力と、不変の生命力を感じたのでしょう。世界中で巨岩や奇岩は神の降り立つ目印とされ、中には命の危険を感じるところも。修験者や僧侶にとっては、それを押しても聖なる力を感得したい場だったに違いありません」

すべてを清め包み込む、懐の深い水の力。

「石に次ぐ要素は“水”です。日本ではことさらです。調査で訪ねた聖地の多くで“水”の気配を感じました。清らかな流れはすべての穢れを洗い清めるものとされ、湧き水や滝、川は古くから禊の場に。中でも滝は特別な存在です。地層のズレである断層にできることから、水と大地の力を同時に感得できると、その多くが聖域とされています。実際に滝の聖地に行ってみるとマイナスイオンに満ちていて、とても気のいい場所。水しぶきを浴びていると心が洗われるようです」

聖地では心静かに。情報に頼らず五感を開く。

「聖地を巡るようになって、感覚が鋭くなった気がします。真の聖地か否かピンとくる。場の力を感じるためには、自身の身体感覚に集中することが大切です。おしゃべりは意識を日常に引き戻してしまい、気が散るので禁物。事前の下調べも必要最低限に抑え、白紙の状態で現場のリアルを感じてください。往復の時間を含め、できればスマホも手放して。徒歩しか手段がなかった昔ほどではありませんが、遠く不便な道のりを経てたどり着く頃には、素の自分と向き合うことができているはずです」

祈りと願いは異なる。聖地で人生を拓くために。

「今や神社仏閣は、学業成就や縁結びなど願望を口にする場となっていますが、本来は祈りを捧げる場。願いと祈りは似て非なるものです。願いが自分のためであるのに対し、祈りは世の中全体や他者のためのもの。聖地に立ってまっさらな気持ちで場の力を感得すると、不思議と生かされていることへの感謝と世の平安を祈る気持ちが湧いてくる。それがまわりまわってあなたの運を開き人生を拓く力となる。そんな原初の信仰の姿に立ち戻ることが、混迷を極める今の時代こそ大切です」

photo:MEGUMI text:Mutsumi Hidaka

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