伝えたかった、言葉たち。 山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」第33回
乃木坂46を卒業し、ラジオパーソナリティ、タレント、そして、ひとりの大人として新たな一歩を踏み出した山崎怜奈さんが、心にあたためていた小さな気づきや、覚えておきたいこと、ラジオでは伝えきれなかったエピソードなどを自由に綴ります。
(photo : Chihiro Tagata styling : Chie Hosonuma hair&make : Ayumi Nakaitsu)
「また会いたい人」
先日、とある人生の先輩に「またラジオでお話しできたらうれしいです」と勇気を出してご連絡したら、直後に「いつでも呼んでください!」とお返事をいただき、喜びのあまりベッドの上で本当に「わーーー!」と声が漏れてしまった。その方がお忙しいのはもちろんのこと、以前お会いしたのはすべてスタッフ間の連絡で決まった対談だったので、私から「またお話ししたいです」なんて言っていいものなのかと、何週間もメッセージを打っては消して、打っては消してを繰り返していたのだ。
ようやくメッセージを送る決意ができたのには、2つの理由があった。ひとつめは、前回お会いした直後と、そこから半年ほど経った時の2度も、「また呼んでください」と連絡をくださっていたから。1度なら社交辞令やその場の流れだったりもするけれど、期間を空けて2度も言ってくださる方はなかなかいない。自分と話した時間が、相手にとっても楽しい思い出として記憶に残っているのかもしれないと思うと、こんなにありがたいことはない。
もうひとつは独りよがりな理由。会いたい人がいると自分が頑張れるから。少しくらいのことには「まあいいや」となれて、しばらく前向きに過ごせてしまう。物欲も名誉欲もない今の私の原動力は、話していると楽しくて、もっと知りたくなってしまう人に会いたいだけ。屈託のなさ、ためらいのなさ、妥協のなさ、フットワークの軽さ、意志の強さ、自分を信じる力の強さ、そういうものを目の当たりにするたびに、引き続きよろしくお願いいたしますと、心から思う。お会いするまではあまり詳しくは存じ上げなかったけれど、今回ご連絡した先輩も、そんな自由で風通しのいい素敵な方。おそらくご本人は普通にいつも通りの言葉で話し、いつも通りに行動していただけなのだろうけど、初めてお会いした時から私にはとても新鮮だった。多くの人を惹きつけ、憧れられている理由が、少し分かったような気がした。どなたの話をしているのかは、いつか対談が実現した後に。
一方で、会いたいけど一体どうすれば会えるのか分からなくなってしまった人や、心の距離は近いはずなのに連絡先を知らず、さっぱり音沙汰のない人のことも、ときどき思い出す。ニュースで芸能人の訃報を見るたびに、会いたい人たちに会えなくなったらどうしようかなどと考えるし、(縁起でもないけれど)ちょっとでも想像すると一瞬で泣けるくらいさみしい。これを書いている今も、涙が目の奥から上がってきて、お腹がぎゅっとなっている。会いたい人に「会いたい」と言わずに、会いに行こうとせずに後悔するのはもうたくさん。お金も気持ちも出し惜しみして、そのまま死んでしまうのは避けたい。だから来年は、人に会って話を聞くために、海外にも行ってみようと思っている。思い立ったが吉日。円安でびっくりするほど高くなった飛行機の往復チケットも、もう買ってある。話したい時に話せる尊さを、忘れずにいたい。オンラインで顔を見ることも声を聴くこともたやすい時代になっても、会って、時間を一緒に使わせてもらうことは、ずっと贅沢で特別なことだから。そして私も、誰かから「また会いたい」と思ってもらえる人になりたい。