構想から60年を経て、パリの凱旋門が包まれた! 『クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”』六本木〈21_21 DESIGN SIGHT〉で開催中。

LEARN 2022.06.28

凱旋門といえばエッフェル塔と並ぶパリのシンボルです。その凱旋門が2021年9月18日から10月3日までの16日間、銀色の布で包まれました。現代美術作家クリストとジャンヌ=クロードが60年前に構想し、実現したこのプロジェクト。その記録を六本木の〈21_21 DESIGN SIGHT〉で見ることができます。

地球をキャンバスにしたといわれるクリストとジャンヌ=クロード。

現代美術作家クリストとジャンヌ=クロードは、1935年6月13日、同じ年の同じ日に別々の場所で生まれました。2人は1958年秋のパリで運命的に出会い、公私ともにパートナーとして共同でモニュメンタルな環境芸術作品を制作します。

クリストとジャンヌ=クロードは、絵画や彫刻、建築といったこれまでの枠組みを超越した作品を作ってきました。『包まれた海岸線、100 万平方フィート、 オーストラリア・シドニー、リトル湾、1968–69』、『ヴァレー・カーテン、コロラド州ライフル、1970–72』など、地球をキャンバスにするといわれるほど壮大です。

『アンブレラ、日本=アメリカ合衆国、1984–91』という作品では、アメリカと日本の茨城県の両方に、たくさんの巨大な傘をインスタレーションする作品を手掛けました。

アーティストが他界した後に実現した悲願のプロジェクト。

パリのエトワール凱旋門を布で覆う『包まれた凱旋門』は、クリストとジャンヌ=クロードがパリで出会って間もない1961年から構想を始め、60年もの時を経て実現しました。クリストとジャンヌ=クロードにとっては悲願のプロジェクトでしたが、2009年にジャンヌ=クロードが逝去。その後もプロジェクトの実現に向けてクリストは創作活動を続けました。

六本木 21_21 DESIGN SIGHT

『包まれた凱旋門』は、当初2020年に実現予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大のため延期に。残念ながら、クリストは完成を見ることなく2020年5月に他界します。クリストが亡くなった後もたくさんの協力者によって2021年9月に実現の日を迎えると、周囲は人々の歓声に包まれたそうです。

今回の展覧会『クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"』では、2人がパリで出会って、ニューヨークに移り住むなどしながら、『包まれた凱旋門』が実現されるまで約60年間という長い道のりを、構想、準備、設置、実現の段階に沿って展示しています。出会った頃からの2人の写真、凱旋門を包むための緻密なドローイング(レプリカ)、凱旋門を中心としたパリ市街の模型など、プロジェクト全体を俯瞰して見ることもできる構成になっています。

壮大なプロジェクトに携わった人、見守る人の様子が映像に。

歴史的な建造物でもある凱旋門を布で包むという壮大なプロジェクト。携わった数多くのプロフェッショナルたちが、高い技術力を結集させた結果、プロジェクトが実ったことがわかります。

凱旋門に複数ある彫刻を保護し、布で覆ったあとの形に影響が出ないように、金属でフレームを作って取り付けたり、布が風によって飛ばされることがないように計算したり。設置の段階では、布が下側に広げられていくのに合わせて、ロープでぶら下がって作業する人の様子がいくつもの写真に収められ、現場の緊張感も伝わってきます。

記録映像では、プロジェクトが進む様子や、プロジェクトに参加した人たちの思いやクリストとジャンヌ=クロードへの敬意を語る姿、作業が進む様子をパリの人たちが見守る姿を見ることができます。いつも変わらずそこにある存在の凱旋門が布に包まれてしまう様子をパリの人たちはどんな気持ちで見ていたのでしょうか?

クリストとジャンヌ=クロードの長年の夢が実現したプロジェクト全体をありありと感じられる展覧会です。

『クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"』
■東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウンガーデン内 21_21 DESIGN SIGHT
■03-3475-2121
■~2023年2月12日(日)
■10:00~19:00 (入場は18:30まで)
■一般1,200円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料 ※ギャラリー3 は、入場無料
■火・年末年始(12月27日~1月3日)休
公式サイト

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