ROUND TABLE OF ART 【アートの円卓】コグレチエコ個展『午後』が1月23日まで開催。
毎回、編集の大池明日香さんがアーティストと会って作品のことなど四方山話をします。本誌連載『アートの円卓』よりお届け。
本日のアーティスト…コグレチエコ
イラストレーター。武蔵野美術大学映像学科卒業。書籍、雑誌などにイラストを提供するほか、草木や動物などのモチーフと、模様や図形を組み合わせたペインティング作品を発表。
大池:映像学科の出身なんですね。
コグレ:高校時代、デヴィッド・リンチの『イレイザーヘッド』のような単館上映系の実験映画を観るようになったんです。自分でも家にあったホームビデオで撮ってみたり、何かものづくりがしたいと思っていました。思い返せば、小さい頃から視覚効果みたいなものがやけに好きだったんですよね。ぐるぐる回転して目を回らせたり、目玉を押して網膜に模様を浮かべたりして。映像にも感覚的に惹かれたのかもしれません。大学に入った頃はデジタル全盛期でしたが、アナログな質感が好きで、アニメーションの素材としていまのような絵を描き始めました。結局、アニメでも、最終的な成果品がデジタルなのが嫌だったんですよね。
大池:確かに、作品にも不思議な視覚効果を感じるような。草花や動物、目がついた何かというのは、どういったモチーフなんですか?
コグレ:作為的にではなく、無意識に近い状態で思い浮かんだものを描いています。まるで誰かに発注されたかのような平らな気持ちで図案化してから、予定調和にならないことを大切にして仕上げています。手描きすることで想定外のズレや歪みが出て、それが視覚効果にも似た、うねりやリズムのようなものになったら嬉しいなと。顔を描くのは、それが観る人にとって作品とのせめてもの対話の窓口になればと思っているからです。
大池:影響を受けた人はいます?
コグレ:特に好きなのは、画家のローラ・オーウェンスさん。何度も試作を重ねて作品と出会える瞬間を探すと言っていたのに共感しました。一見ほんわかとした動物をさらっと描いているようで、実はいろんな技法を使っていたり、いまは抽象画に到達しているところもついて行けなくて好きです。
大池:今回の『午後』とは?
コグレ:いつもは家で描きますが、今回は午後にお気に入りの公園に行って思い浮かんだものを作品にしました。午後の光の中で浮かんだアイデアを、空間的にも楽しめるように展示できればと思います。
コグレチエコ個展『午後』
キャンバスや立体に新しい手法も用いて描いた作品を展示。2022年1月23日まで神田〈TETOKA〉にて。東京都千代田区神田司町2-16-8103-5577-530916:00~22:00水、12月31日~1月6日休
Navigator…大池明日香(おおち・あすか)
編集・執筆・展示など。東京の東と、酒が好き。「駿河台と先輩」インスタ(@surugadai_)で神田を発信しています。