その土地で、食べられるものを。 〈按田餃子〉店主の三浦半島での暮らし方。自然豊かな土地で気づいた、食べることの面白さとは?
オリジナル水餃子が人気の〈按田餃子〉。店主の按田優子さんが三浦半島に住まいを構えた。海に入り、土に触る。自然豊かな土地で新しくはじめた生活の中で気づいた、食べることの面白さ。無理なく、楽しく、環境にも負荷をかけない暮らしぶりを見せていただいた。
冷蔵庫に頼らない食品の保存方法を考える。
東京・代々木上原と二子玉川で〈按田餃子〉を営む按田優子さん。並んででも食べたい看板メニューは、ハトムギ配合のもちもちの皮に包まれた水餃子。鶏肉にパクチーとキュウリ、豚肉に大根とザーサイ、豚肉と人参のカレー風味など具材のバリエーションも豊富で、お持ち帰りやオンラインショップも人気だ。料理研究家としても活動し、雑誌でもレシピを提案している按田さんが、東京と三浦半島の2拠点生活をはじめたという。
おいしい食材を求めてのことかと思えば、海が好きだから、というシンプルな理由。「毎日泳ぎたい、海の近くに住みたいと思っただけなんです」と笑う按田さん。海まで自転車で10分という理想の場所を見つけた。「週に3日、都心と行ったり来たりしているおかげで、食材の保存についてより考えるようになりました」もともとは3・11の地震がきっかけ。冷蔵庫に頼らない食生活を実践しているという。冷蔵庫のコンセントを抜いて過ごしたこともあるのだとか。そのとき、食品の保存は「塩」と「干す」ことだと気が付いたそう。
「野菜は塩水漬け、肉や魚は塩漬けにしておけば日持ちするので、家をあけるときも安心です。乾物は長期保存できる便利な食材。お米は秋に収穫して、それを1年間食べますよね?乾物も同じ。場所もとらず、賞味期限を気にすることなく少しずつ使えるので重宝しています」
1.漬物と乾物をフル活用。
漬物と乾物は、日本の保存食の代表。〈按田餃子〉でも作っている塩水漬けは、水量に対して6%の塩を入れ、水と同量の野菜を漬けて数日置き、乳酸発酵させたもの。水が白く濁ってきて、おいしい酸味が出てきたら成功。野菜をどんどん足していくことができ、次の日でも2週間後でも味は変わらないので、家をしばらく不在にしても安心。乾物は、海で拾った海藻を使って作ることも。「海藻は戻すと10倍ほどになるので1食分になります」
2.冷蔵庫やラップは必要最低限。
ふたり暮らしの按田さんの家の冷蔵庫は、驚くほどコンパクト。冷蔵庫に入れるのは最低限のものだけ、料理は食べきれる分だけ作れば保存容器もラップも必要ない。保存したいときは、食品が入っていたパッケージを再利用。「プラスチックフリーをしたくても、食品の包装などに使われているので完全にゼロにすることはできません。せめて、使い捨てるのではなく再利用することにしました。乾物が入っていた袋は、洗う必要もありません」