娘から父へ…おいしい日本酒おしえます! 【にごり酒】プチプチはじける純白のにごり酒「山本 ど 純米」~『伊藤家の晩酌』~第二十二1本目/
弱冠23歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入! 酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは? 第二十二夜は「にごり酒」に注目!1本目は日本酒好きなら知っている有名な秋田の蔵のにごり酒。
(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)
第二十二夜1本目は、はじける発泡感がたまらない真っ白なにごり酒「山本 ど 純米」から。
娘・ひいな(以下、ひいな)「今回のテーマは、にごり酒です!」
父・徹也(以下、テツヤ)「お? 初めて?」
ひいな「そうだね、にごり酒は、実は初めて!」
テツヤ「これ、ちょっとにごり過ぎじゃない(笑)?」
ひいな「真っ白でしょ(笑)?」
テツヤ「すごいね、これは」
ひいな「『山本』ってお酒、知ってる?」
テツヤ「知らないねぇ」
ひいな「結構、有名な銘柄なんだけどね」
テツヤ「どこの蔵なの?」
ひいな「秋田。『山本』って、いろいろなお酒を出していて、その中でもにごりといえば!っていうくらい有名なの」
テツヤ「そうなんだ」
ひいな「にごり酒特集をやるとしたら、これは欠かせない1本!」
テツヤ「そんなに!」
ひいな「その名も『ど』です!」
テツヤ「にごり酒ってさ、ちょっと重いイメージがあるよね」
ひいな「うん、そのイメージは確かにあるね」
テツヤ「次の日、仕事がないことを確認してから、飲みたい感じしない?」
ひいな「(笑)。でもね、今回紹介する3本で、そのイメージが変わると思う!」
テツヤ「へぇ、そうなんだ。新たなにごりの境地に誘ってくれるわけね」
ひいな「そう。楽しみにしてて。じゃ、まず飲んでみますか!」
テツヤ「うぃっす!」
テツヤ「こりゃ、すごいね。どろどろだ」
ひいな「ちょっと神秘的じゃない? この混ざっていく感じが」
テツヤ「初めに混ぜちゃうの?」
ひいな「うん。混ぜちゃう。開けただけで、勝手に中身が混ざっちゃう」
テツヤ「発泡してるの?」
ひいな「うん、すごい発泡してる。生酒だからね」
テツヤ「開けると大変なことになりそう」
ひいな「こういう発泡系のお酒のキャップは、空気穴が空いていて、空気が逃げるようになってるの。だから、横に倒しちゃいけなからね。こういう吹き出る系のお酒を開けるには、2つのパターンがあって。じっくり5分くらいかけてじわじわ開けるか、ボウルとか受け皿をを下に敷いて、吹き出る覚悟で開けるか」
テツヤ「これはどっちのパターンでいく?」
ひいな「いやぁ、ていねいにいきたいね(笑)。じゃ、一旦、落ち着かせてる間に、2週間前に開けたのにまだプチプチ感がすごいやつがあるから、それを飲んでみてほしいな」
テツヤ「おぉ! 飲もう、飲もう」
ひいな「今朝ね、味見してたんだけど、びっくりしたの」
テツヤ「朝からにごり酒飲んでたの(笑)? 飲むヨーグルト飲んでるとみせかけて……?」
ひいな「(笑)」
テツヤ「さわやか!」
ひいな「ね。重すぎないでしょ?」
テツヤ「うん、めっちゃうまい!」
ひいな「でしょ?」
テツヤ「これは、やばいね。グイグイいっちゃうね。甘くないし、ドライだから、するする飲めちゃう。もう待てないからさ、下にお皿を置いて開けちゃおうよ!」
ひいな「やっちゃう? 本当はね、この上澄みだけを飲んでほしかったんだけど。今回は断念するね」
テツヤ「おぉぉ! 勝手に混ざってく!」
ひいな「大丈夫そうだね。吹き出しそうで吹き出さないかも?」
テツヤ「セーフ、セーフ!」
ひいな「生きてるって感じだね」
テツヤ「生きてるね。すごいね」
ひいな「マグマみたい」
テツヤ「温泉みたいに湧き出てきた。秋田の雪深いところでさ、温泉入りながら、にごり酒飲みたいねぇ。湯冷めに岩の上に上がってさ」
ひいな「(笑)」
テツヤ「注ぐ時は普通に注ぐの?」
ひいな「うん」
ひいな「瓶から出てこないくらい固まってるね」
テツヤ「うわ、初めからこんなにどろどろなんだね」
ひいな「もう一回、乾杯!」
テツヤ「うわ〜、炭酸がいいね!」
ひいな「プチプチにはじけてるね」
テツヤ「これ、ぜんぜん重くないじゃない!」
ひいな「見た目と違うよね」
テツヤ「むしろ、さわやかさを感じるよ!!」
ひいな「ちょっとさ、りんごっぽい感じしない?」
テツヤ「うん、たしかに。わ、グラスにもべっとり」
テツヤ「ヨーグルトみたいなさわやかさと、プチプチ感がいいね。これ酔うのかな(笑)?」
ひいな「アルコール度数15%あるからね。酔うよ。飲みすぎ注意!」
テツヤ「新鮮な味わいだよ。飲んだことないにごり酒だな」
「山本 ど 純米」に合わせるのは、「玉ネギの味噌チーズディップ」をパンと一緒に。
ひいな「このにごり酒に合わせるものさ、何が想像できる?」
テツヤ「えー。なんだろうな……。ジビエ?」
ひいな「おぉ、なるほど。そう来たか」
テツヤ「秋田だしさ。今日、熊の鍋とか出てくるのかな?」
ひいな「(笑)。レベル高すぎるよ! これね、めちゃくちゃ悩んだんだけどね。玉ネギを使ったディップとパンです」
テツヤ「??」
ひいな「これは説明なしで、まずは食べてもらおうかな」
テツヤ「うん、いただきます!」
ひいな「どう?」
テツヤ「うん? なんか甘いぞ?」
ひいな「ちょっと甘いでしょ? これ田楽味噌の甘さなの」
テツヤ「味噌の甘さなのか」
ひいな「田楽味噌とクリームチーズ、万能ネギと玉ネギを混ぜてある」
テツヤ「なるほど。複雑な甘さがあるね」
ひいな「これと、このにごり酒がすごく合うの」
テツヤ「口内調味で」
ひいな「うん」
テツヤ「おぉ、合う合う。口のなかでタルタルソースが完成するみたいな感じ?」
ひいな「試作をすごくがんばってたんだけどね。玉ネギのスライスをクリームチーズと田楽味噌を加えて煮詰めてみたり。すごくおいしかったけど、見た目がね……(笑)」
テツヤ「茶色(笑)」
ひいな「それを改良して、パンに合わせてみました」
テツヤ「なるほど」
ひいな「ちなみに、このパンは父のお友だちのジャニーさんのパンです」
テツヤ「大学の頃の同級生なんだけどね。俺よりも先にカメラマンになったんだけど、海外行ってもパン屋ばっかりめぐっててさ。パン屋をはじめて、もう20年くらい経つかな」
ひいな「どこにあるんだっけ?」
テツヤ「八王子にある〈麦むぎ工房〉」
ひいな「これ、パンだけどいいおつまみになるでしょ?」
テツヤ「俺にはちょっと甘すぎるけど、単体で食べるよりも、お酒と合わせた時にめちゃくちゃ合うね」
ひいな「よかった。ペアリング成功だね」
テツヤ「補完しあってる感じがするな」
ひいな「お酒の甘みと合うし、味噌が入ってるから和風味が日本酒に合うのかも」
テツヤ「このにごり酒にパンを合わせるとは意外だったな」
ひいな「パンに合わせるのは前に『ちえびじん』と〈宗像堂〉のパンで合わせてみたから、今回はソースで遊んでみるっていうのをやってみたくて」
テツヤ「なるほど。こりゃ、シャレたつまみだね。てっきり熊が出てくると思ってたから(笑)」
いま、にごり酒がブームに? まさに、冬から春の今がシーズン!
ひいな「このお酒って、海外でなんて呼ばれてるか知ってる?」
テツヤ「雪みたいだからスノーなんとか? うーん……ホワイトアウト!」
ひいな「正解は、クレイジーミルクでした!」
テツヤ「なるほど。酔っちゃうミルクね。確かに、グイグイいってしまったが最後……」
ひいな「危険だよね」
テツヤ「これって、乳酸発酵してるの?」
ひいな「うん。発酵してるからプチプチしてる」
テツヤ「俺、にごり酒好きだなぁ」
ひいな「ほかの2本も、違うタイプのにごり酒を用意してるからお楽しみに。どれも三者三様で違うから」
テツヤ「そうか! これでにごり酒好きとか言ったらダメなんだな。ほかのも飲んでみないと!」
ひいな「いろいろなタイプがあるからね」
テツヤ「にごり酒ってなんか酔いがまわるのが早い気がするね。まだ1本目なのに、なんか酔ってきたぞ……」
ひいな「普通に度数あるからね」
テツヤ「これは冬限定なの?」
ひいな「だいたい、にごり酒のシーズンって冬が多いんだよね。2月から春先までが買い時かな。2020年の最後から2021年頭にかけて、実はにごり酒がすごいブームになってて」
テツヤ「そうなんだ! そのムーブメントはどっから来てるの?」
ひいな「インスタとかですごい人気で、いま出荷量も多いの。いろんな蔵が出してる」
テツヤ「おぉ、楽しいね」
ひいな「どこの蔵が発端なのかはわからないんだけど、いますごくいろいろな種類があって。この波に乗っておかないとと思って!」
テツヤ「さすが!」
ひいな「自粛期間になって、みんな飲んだ日本酒をインスタに載せるようになったんだけど、特に、にごり酒が目立つようになったかな」
テツヤ「でもさ、にごり酒の方がカロリー高い気がしない?」
ひいな「そうだね(笑)」
ひいな「ここの蔵の方針がおもしろくて。ホームページにね『日本酒は頭で飲むな、心で飲め。』って書いてあるの」
テツヤ「いいね(笑)」
ひいな「あと、この蔵は、8時間労働時間がある間、造り手の好きな音楽を流してるんだって」
テツヤ「でも、造り手さんっていっぱいいるだろう?」
ひいな「だね(笑)。日替わりで変わるのかな?」
テツヤ「『ちえびじん』の蔵はクラシックかけてたし。大丈夫なのかな? ロックとかかけちゃっても」
ひいな「あとね、蔵で発見された酵母があるらしいんだけど、その名前は何でしょう?」
テツヤ「ふざけてるんでしょう?」
ひいな「うん(笑)。お父さんがよく言う単語かもしれない。あ、この写真、なんとかだね、みたいな」
テツヤ「この写真、エモく撮れたと思わない?とか」
ひいな「え?」
テツヤ「そんなこといわないか(笑)」
ひいな「言わない(笑)」
テツヤ「なんだろう?」
ひいな「よくさ、自分の撮った写真とか艶っぽかったりすると、色っぽいとかセクシーとか言うでしょ?」
テツヤ「セクシー酵母?」
ひいな「そう。セクシー山本酵母」
テツヤ「芸名みたいだな(笑)」
ひいな「瓶にセクシー山本酵母って書いてあったら笑っちゃうね」
テツヤ「おもしろい蔵だね。秋田行ってみたいね」
ひいな「『ど』もぶっとんでる名前だけど、『ドキドキ』とか『ウキウキ』、『ピュアブラック』『ターコイズブルー』『ミッドナイトブルー』『サンシャインイエロー』『フォレストグリーン』とかもあるの」
テツヤ「それが酒の名前なの?」
ひいな「そう」
テツヤ「おもしろいね」
ひいな「父が好きそうなのもあってね。『ツーアウトフルベース』っていうのと、それを飲み終わってから飲むお酒として『逆転サヨナラ満塁ホームラン』っていうのもある」
テツヤ「(笑)」
ひいな「ちなみに、『ツーアウトフルベース』と『逆転サヨナラ満塁ホームラン』のラベルの裏には野球の豆知識も書いてある」
テツヤ「おもしろい蔵だね」
ひいな「楽しそうだよね。日本酒好きで『山本』は知らない人はいないぐらい」
テツヤ「そりゃ行ってみないと。秋田はほかにもいっぱい蔵あるしね」
ひいな「行こう行こう!」
テツヤ「あれ……? 俺、結構酔っ払ってるかも」
ひいな「さすがクレイジーミルク! 注意しないとね!」
【ひいなのつぶやき】
神秘的かつクレイジーミルクな「ど」を飲んで、楽しく酔いましょう!!!
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