「ハナコラボ宇宙部」発足! “宇宙暮らし”はそう遠くない!?宇宙と地上の暮らしを考える「THINK SPACE LIFE」ワークショップに潜入。

LEARN 2020.07.30

私たちが宇宙旅行に普通に行くようになる日は、もうそこまで来ているらしい。これまであまり語られてこなかった「宇宙での暮らしの困りごと」は、宇宙飛行士だけのものではなくなるのだ。そこで、JAXAと民間事業者の共創プログラム「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」の中に、宇宙と地上双方の暮らしをよくする「THINK SPACE LIFE」プラットフォームが始動。そしてこのたび、ハナコラボはその活動を追っていくことが決定!宇宙飛行士の向井千秋さん、山崎直子さん、〈ワコール〉などが登壇したワークショップに参加して、そのスタートを切った。

JAXAと民間事業者が共創する未来を、ハナコラボも考える。

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ワークショップ会場の〈宇宙ビジネス拠点X-NIHONBASHI〉へ。今回レポートするのは、バイオリニストであり自身のブランド〈PANORMO〉でデザイナーを務める花井悠希さんだ。「宇宙は遠い遠い世界だと思ってきました。私たちの暮らしと宇宙が繋がるなんで、まだ想像がつきません!」

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今回のワークショップは、たくさんの民間企業がオンラインで視聴し、商品・サービスの開発の参考にするブレインストーミングのようなもの。宇宙飛行士の向井千秋さん、山崎直子さんのほか、極地建築家の村上祐資さん、スイスで登山ガイドをする西村志津さん、ANA宇宙事業化プロジェクトメンバーの江島まゆみさんなどが座談会に参加し、さまざまな視点から宇宙空間と地上の暮らしの未来を考えていく。宇宙で必要なものは、地上での災害時、新しい生活様式にも応用可能。この日は、生活のメリハリや身嗜みなどのモチベーション、入浴やオーラルケアなどのパーソナルケア、フィットネスの3テーマで議論された。

宇宙空間での生活のメリハリについて。

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別室で行われた座談会。最初の問いは、「おうち時間の多いこの時期にたくさんの方が経験したと思いますが、閉鎖空間の中でオンオフの切り替えはどうしていましたか?」と、まさに宇宙空間と地上の共通課題について。「外の景色を眺めたり、オンラインでのアクティビティでメリハリをつけていました。だらっとする時間を意識的に入れ込むのは大事ですね」と向井さん。「宇宙に持っていけるものは限られていますが、ないものを数えるよりもあるものを使っていかに工夫するか、とポジティブに考えていました」。香りで気分を変える方法もあるが、他のクルーのことも考え香水などは使わないという。向井さんは柑橘の皮、山崎さんは桜茶の香りを嗅いでリフレッシュしていたそう。昭和基地などで活動した村上さんの「着替えは他人のためというより、自分のために。衣食住を丁寧に過ごすことを心がけていました」という答えは、ステイホーム中の暮らしのヒントにも。

体のケアには、いつものアイテムも活用。

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続いて、「宇宙船内は乾燥すると聞きましたが、対策はどのようにしていましたか?」と体のケアに関する質問が。「宇宙船内は湿度20%〜30%と乾燥しているので、アルコール入りの物など持ち込めないものもありますが、市販のクリームなどでケアしていました。地上では気にしていない男性も対策していましたね。無重力空間だと体液が上半身に集中してしまい、脳が水分過多だと錯覚することも。水は貴重でしたが、意識的に補給していました」と山崎さん。肌のケアでは、日焼け止めも欠かせなかったとか。特別なものでなく、地上でも使っていたアイテムを持ち込めるのは意外かもしれない。

「乾燥するという意味では、飛行機も同じ。機内の湿度は10%〜20%と言われていて、美容液やクリームが必須です。宇宙と違って水はたくさん飲めるので、中からも保湿を心がけていました」とは、ANAの江島さん。宇宙船と飛行機の中の環境は似ている部分もあり、ともすると飛行機の乗務員の方が大変な場面も。「緊張感が長時間続くフライトで、ほっとできるひとときは、お客様と自由にお話しできる時間です」(江島さん)。宇宙飛行士も昭和基地で過ごす極地建築家もフリータイムがあり、それぞれのリラックス法を身に付けていた。

フィットネスもメンタルケアに。

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「山でも乾燥や日焼け対策が大事ですよ」と話す登山ガイド・西村さん。「ヨガや瞑想で、安定した自分に戻すことも大切。私も在宅続きで実感しましたが、閉鎖空間にありがちな呼吸の乱れはヨガで整えることができます」。ここで座ったままでもできるヨガを教えてくれ、花井さんも体験した。

これには宇宙飛行士の二人も反応。「自律神経をコントロールする実験は宇宙でも実施されました。本来自分の意思とは無関係に作用するのが自律神経ですが。ストレッチなど身体的なことだけでなく、念じることで精神的に鍛えていく実験で、先ほどのヨガにも通じますね」(向井さん)「宇宙では体の不調がわかりづらくなるので、運動の時間が設けられています。ヨガのように呼吸を意識することも大切だと思います」(山崎さん)

宇宙で快適に過ごせるのはどんな服装?

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プロジェクトに参画する〈ワコール〉担当者からは「地上と宇宙では身体のありようはどう違うのですか?」という質問。近年”無重力状態がバストに良い”という結論のもと、「重力に負けないバストケアブラ」を発表した〈ワコール〉。宇宙空間での美容やヘルスケアへの研究を進める。

「例えば、地上でのリラックス体勢は大の字ですが、無重力空間では赤ちゃんのように膝や背骨を曲げ、浮いている状態が楽なんです。指で壁をタッチすれば移動できるので、歩くことも必要ありません。慣れれば水中を泳ぐようにスイスイ動けるんですよ」(山崎さん)。「重力がないということは、背筋を伸ばして体重を支える必要がないということ。水中のような水圧もないので随分楽です」(向井さん)。

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ここで、座談会を聞いていた視聴者から「服の締め付けが気になったり、好まれる衣服が地上と違ったりするのでしょうか?」という質問。物をなくしやすい宇宙空間では、ポケットのある服が便利という話も聞くが、他にどんな特徴があるのだろう?

「襟ぐりの開き具合や、ストンと落ちたシャツの形など、地上で着こなせる物は重力が前提とされています。宇宙ではカッコ良くならないし、ぴっちりとしている方が安定感があります。座高や身長が伸び、体液が上半身にいくことでウエストが細くなるので、調整できる服が良いですね」と向井さん。楽だけどホールドしてくれて、筋力を上げるような機能的なものがあると理想的だそう。

今回のワークショップはここで終了。座談会の後、花井さんから山崎さん、向井さんへの個別インタビューが実現した。

ハナコラボが直撃!宇宙のあれこれ。

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任務中は仕事に追われ、自由な時間はあまりない宇宙飛行士。花井さんは「宇宙旅行が可能になればフリータイムが増えると思いますが、何をしたいですか?」と聞いてみた。「船内から見ると地球は90分で一周するのですが、それをずっと眺めていたいですね。あとは、任務の時と同じように植物や動物を連れて行って、観察するのも楽しそうです」。インターネットもどんどん便利になっているので、地上との交流も満喫したいそう。

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向井さんにも音楽のことを聞いてみると、「パーソナルスペースが限られているので、イヤホンで聴いていました。ベートーベンの『英雄』の壮大さが景色にぴったりですし、地球を見ていると『兎追いし・・・』の『故郷』の歌詞が心に沁みました」とのこと。フリーな時間があったら、地球を見ながら小説を書いたり、絵を書いたり、クリエイティブなことをしてみたいそう。宇宙旅行の持ち物には、真っ白なノートがおすすめかも?!

「ハナコラボ 宇宙部」は今後も活動していきます!

座談会とインタビューを終えた花井さん、「向井さんが度々『宇宙が特別なものだと思わないで』とおっしゃっていたのが印象的でした。今まで本当に遠い存在だった宇宙と宇宙飛行士が近くに感じられた気がします。宇宙空間に順応できる人間の体ってすごいなとも思いました」。今回だけで、宇宙に対する印象が随分変わったよう!

花井さんをはじめとしたメンバーで結成されるハナコラボ 宇宙部の活動は始まったばかり。J-SPARCのイベントレポートなど、今後もお楽しみに!

(photo:Natsumi Kakuto)

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