まちをつなげるパン屋さん by Hanako1186 【北海道】おすすめベーカリーのお取り寄せパン。パンラボ・池田浩明さんが選ぶベーカリーとは?
パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まちをつなげるパン屋さん」を掲載。自宅で過ごす時間が増えた。今回は北海道の2軒のベーカリーのお取り寄せパンが届きました。
1.羊蹄山の雪解け水に恵まれた美しいパン。〈ソーケシュ製パン×トモエコーヒー〉/北海道虻田郡
自然の中にある古いドライブインで営業。自家製ルヴァン種を使用、薪窯で焼く。近くで湧く名水や、北海道産小麦、隣接の〈タカラ牧場〉のバターなど地元産の食材を使う。妻のともえさんが焙煎、丁寧にハンドドリップしたコーヒーとパンをイートインすれば心地いい時間が過ぎる。
■北海道虻田郡喜茂別町字中里185-1
■0136-33-6688
■10:00〜17:00 火水木休
■8席/禁煙
■通販:sokeshu.com
2.丘の上にポツンと佇む理想のパン屋〈toi〉/ 北海道河東郡
薪窯でパンを焼きたくて移住、小麦畑のそばの人家もない丘にパン焼き小屋を建てた。生産者から取り寄せた自然栽培・有機栽培小麦を製粉、その粉から種も起こし、パンを焼く。旬の果物で作ったコンフィチュール、交流のある道内の生産者によるチーズもパンとイートイン可。
■北海道河東郡音更町字上然別北6線23-4
■0155-32-9177
■11:00〜16:00 月火休
■8席/禁煙
北海道の風も詰め込んでお取り寄せパンが到着
見上げれば羊蹄山のうつくしい姿が望めることに惹かれ、今野祐介さんは古いドライブインを買った。そこには浅草の名店〈カフェバッハ〉で使用されていた焙煎機も残されていた。妻のともえさんが焙煎したコーヒー、そして隣の〈タカラ牧場〉で作られたバターとともにパンを味わえる、最高に居心地のいいカフェをはじめたのだ。地元の素材を使う。水はわざわざ近くの名水を汲みに行く。「やっぱりうまいんですよね。喉にすっと入ってくる。酵母も調子がいい気がします。羊蹄山の雪が地下を通って湧きだしてくる」
羊蹄山に守られて作られるのが〈ソーケシュ〉のパンだ。自然栽培で小麦を育てる中川泰一さんの畑で、〈toi〉の中西ひろお宙生さんといっしょに草取りをしたことがある。畑を抜ける風で小麦が波のように揺れる中、広大な畑を歩き回って、草を抜いた。「自分が使っている小麦がどうやってできるのか、作業を通して感じたかった」その畑と同じ丘に、中西さんはパン焼き小屋を建てた。快適な都会の暮らしを捨てて、ぽつんと一軒。中川さんなど生産者から送られてきた小麦を自分で挽いて、種も小麦から起こして、薪の火で焼く。草の風味、土の風味、炎の風味。
〈toi〉のパンは、根源的なものに届いている気がして、噛み締めていると目頭が熱くなる。石臼を買い、北海道の中川農場から麦を取り寄せ、挽きはじめた。納得のいくものを焼くのに3年。いま、まるまるふくらんで、麦の香りを120%開花させている。
池田浩明 いけだ・ひろあき/パンラボ主宰。パンについてのエッセイ、イベントなどを柱に活動する「パンギーク」。著書に『食パンをもっとおいしくする99の魔法』『日本全国 このパンがすごい!』など。 パンラボblog
(Hanako1186号掲載/photo:Kenya Abe)