【カレーときどき村田倫子】 カレー好き必食の人気店が銀座に!〈スパイシーカリーハウス 半月〉の魅惑フレーバーカレーをいただく。
「カレーときどき村田倫子」へようこそ。食べたいカレー屋さんを訪ね、自身でつらつらとカレーに対する想いを綴る、いわば趣味の延長線ともいえるこの企画。今回は、銀座のカレー屋さん〈スパイシーカリーハウス 半月〉を訪れました。
もうそろそろ、私のスパイスゲージは枯渇寸前。拙い自作カレーでは、なんだか物足りなかった自粛期間。近頃はコロナへの対策を万全に、続々と店を開けるお店が増えてきた。あぁ、これでやっとスパイスが伸び伸びと踊り舞う、お店のカレーが食べれるわ!喜びと空腹に目を光らせながら、降り立ったのは銀座。駅から歩いて少し、シックなビルの合間に突如現れたミントグリーンの小さなお店。
扉からは豊潤なスパイスの香り、入り口から魅惑のスパイスに誘われる。ここは本日のお目当て〈スパイシーカリーハウス 半月〉。実は、ここは今年の春にオープンした2号店。1号店は西新宿で店を構えており、すでにカレー好きの間では話題の人気店だ。
新宿とは一味違う空気を孕む銀座の地で第二のスタートを切った半月。腹ペコの私を出迎えてくれたのは、笑顔が素敵なMegumiさん。ヨガ講師も務めるMegumiさんは、銀座店で華麗に鍋をもふるう。
ミントグリーンを基調とした店内、光が柔らかく差し込む窓際のテーブル席、スパイスの香りを鼻腔に惜しみなく取り込めるカウンター。ピリッっと背筋が伸びる銀座のど真ん中、不思議と肩の力が抜けるお店。さて、何をいただこう。
注文は小ぶりなサイズが愛らしい食券機にて。何故だかちょっぴりノスタルジーな気分になる食券システムは個人的にグッとくる。半月のメニューは至ってシンプル。新宿店でも核を担うレギュラー「チキンカレー」と日替わりの「限定カレー」。常にこの2つのみに絞り、その分この選ばれし精鋭への妥協は許さない。
そしてみよ、この良心的すぎるお値段。大都会の真ん中で、この数字を笑顔で提供してくれる場所はなかなか貴重。まさにオアシスね。
まずは、不動のレギュラー「チキンカレー」。ターコイズブルーのお皿に、浮かび上がる黄色の半月。欠けた月を抱き抱える、褐色のチキンカレー。
野菜の甘味とスパイスの鋭角な芳香を纏ったグレイビーソース。異国の空気を纏いながら、日本人の舌先に優しく馴染む絶妙なスパイス配合は、妙に懐かしさと親近感を醸す。
スプーンのタッチでほろりと崩れるフェミニンな身のこなしの大ぶりなチキンは、私の目尻を下げる。
「サバ」に目がない(大好物)な私が、即決でトッピング追加した「サバエッグサラダ」。サバの旨味、玉ねぎの甘味、卵とフライドオニオンのコク、スパイス…黄金比で固められたサバの新形態。これだけでも、ご飯とお酒がのめそうな完成度。看板娘のチキンカレーと、混ぜ合わせたらそりゃもう…禁断の錬金術ね。
半月の魅力はまだまだ序の口。ここは新宿店で培った確固たるベースを軸に、より一層カレーという自由な表現を様々な角度から楽しむことができるアーティスティックな場所なのだ。銀座「半月」の遊び心を特に味わえるのは「限定カレー」とより魅力を引き立てるセンスが咲き乱れる盛り付け。その日の食材の顔ぶれによって、お皿へのメイクアップも都度考えられている。
この連載にて、もっと皆さんに半月の魅力の幅を伝えたい…というわがままに答えていただき、本日は特別に限定二種盛りバージョン。色とりどりの副菜が花開くターメリックライスを境に、「黒ごまキーマ」と「グリーンカレー」が美しく並み立つ。
うっとりする濃厚な黒ごまのコク、コリコリした蓮根の食感、後から追いかけてくる爽快なスパイスの香り。いつもよりちょっぴり妖艶なキーマの表情。
タイの花が咲くエキゾチックなグリーンカレーは、爽やかなスパイスの香りが立ち昇る。気持ち良い辛みと、ココナッツのマイルドな掛け合いが癖になる。
密かに人気の「スパイス玉子」。お月様のような黄金色のそれは、カレーの風味により一層旨味の幅をもたせる。黄色の土手を崩して、混ぜて、それぞれを調和させるとまた新たな魅力の発見が…。はじめの一口から最後まで、飽きさせることなく私を楽しませる。
あぁ、同じ店とは思えないほどカレーの振り幅が広い半月。不動のセンター(チキン)を軸に、伸び伸びと個性を発揮する限定フレーバー達。カレーはやはり無限の可能性を秘める魅惑なフードだと再確認した日。
まだまだはじまったばかりの〈スパイシーカリーハウス 半月〉の銀座での一歩。今後どのように羽を伸ばしていくのか楽しみだ。通っている美容室も近いので、またすぐにでも進化の過程を味わいに訪れよう。
〈スパイシーカリーハウス 半月 2号店〉
■東京都中央区銀座6-4-15 銀座数寄屋橋ビル1F
■03-3573-3001
■11:00〜16:00 不定休
(photo:Kayo Sekiguchi)