学芸員ラジオDJ・DJAIKO62さんがおすすめする、今見ておくべきアートとは? 「東山魁夷の青・奥田元宋の赤―色で読み解く日本画」が 〈山種美術館〉で開催。〜今度はどの美術館へ?アートのいろは〜
ラジオ番組で美術展を紹介するうちに美術館巡りの面白さに目覚めたというDJAIKO62さん。コラム連載第20回は〈山種美術館〉で開催中の「東山魁夷の青・奥田元宋の赤―色で読み解く日本画―」をご紹介します。近現代の日本画を収蔵する美術館は数あれど、〈山種美術館〉はいつもユニークな視点で親しみやすく日本画の楽しみ方を提案してくれます。
東山魁夷の青・奥田元宋の赤 ー色で読み解く日本画ー
個人コレクションから始まった美術館のいいところの一つはお気に入りの絵を見に度々通うことができるということ。山種美術館にも大好きな絵が何枚もあり、展覧会ごとに出品リストをまずチェックしてしまうほどです。今回はポスターにもなっている東山魁夷の「年暮る」(写真左)が出展とあり、心待ちにしていました。
魁夷の青、元宋の赤
日本画はもともと鉱石など自然素材が絵具として用いられます。青で言うとアクセサリーでも使われるラピスラズリ、アズライトといった鉱石を砕いて使うので高価な色でもあるんです。今展では日本画で使われる画材や岩絵の具の展示もあります。(協力:谷中得応軒)
東山魁夷の「年暮る」
見るのを1番楽しみにしていた作品です。仲が良かったと言う川端康成に「京都は今描いておかないとなくなります。京都のあるうちに描いておいてください。」と言われたのがきっかけで四季の連作に取り組みました。「年暮る」は当時の〈京都ホテル〉(現・〈京都ホテルオークラ〉)屋上からの構図で描かれた大晦日の京都の街並み。意外かもしれませんが、京都は新しいものを割と積極的に取り入れながら常に変化をしてきました。なので、今の京都もそれはそれで「らしい」と言えるのです。しかしちょっと賑わいが過ぎるなぁと最近は思いますけどね。この作品が生まれるきっかけとなったお二人が今の京都をご覧になったらどう思われるのでしょうか。
こちらは「白」千住博の「松風荘襖絵習作」です。不思議と絵の前に立つと滝の飛沫が漂い、空間がひんやりと感じられる気がします。
ふり返ると特別展タイトルにもなっている「赤」奥田元宋の大作「奥入瀬(秋)」が。こちらも渓谷に流れる水の音が聞こえてくるよう。 古希を過ぎ、80歳までが大作に取り組める限界と考えた元宋がその後1年に1点と決めて描いた最初の作品だそう。青からはじまり、緑、赤、黄、黒、白、銀、金と色で体感する日本画の世界。画材のこと、作家の言葉にも触れる機会の特別展です。ぜひ足を運んでみてください。
特製和菓子
ここをご紹介する時にはずせないのが特別展毎に出展作品からインスピレーションを受け作られるオリジナルの和菓子たち。通ううちに(黒糖風味大島あん)が気に入り、今では素材から選ぶようになりましたが、絵のそばにあるキャプションに「和菓子になりました」の目印があるので、気に入った絵がどんな和菓子になっているかをチェックするのも楽しいですよ。東山魁夷の「年暮る」は「除夜」に(写真、真中)。青が映える上品な一品になりました。とても美味しかったです!
「東山魁夷の青・奥田元宋の赤―色で読み解く日本画」開催概要
■会期:2019年11月2日(土)~2019年12月22日(日)
■開館時間:10:00〜17:00(入館は16時30分まで)
■会場:山種美術館
■展覧会公式サイト:www.yamatane-museum.jp
チケット情報やアクセス他、詳細は公式サイトをご確認ください。
※作品は全て〈山種美術館〉蔵
※写真は内覧会時に申請・許可を受けて撮影したものです。転用・転載はできません。