シリーズ「大銀座老舗手帖」 手紙を書くなら、日本橋の老舗和紙舗〈榛原〉のレターセットを。竹久夢二のデザインも。
戦前より、東京随一の高級繁華街として国外でも名高い、大銀座エリア。近年は新しい商業施設が増え、街の景色や訪れる人にも変化がありますが、昔から愛され続けている老舗が、いまもなお、数多く軒を連ねています。今回は、100年以上続く日本橋の老舗和紙舗〈榛原〉が守り続ける伝統と新しい挑戦を感じさせる魅力的な品をご紹介。
そのときどきの手紙のあり方に寄り添って、豊かな時間を提供する。
江戸時代後期、日本橋で和紙舗として創業し、200年以上の歴史を持つ〈榛原〉。当時の手紙は大切なコミュニケーションツールのひとつで、直接会話をする前にまず手紙を送る、ということも。そのため、便箋選びや字の美しさは、自分の印象を演出するキーポイントでもあったそう。そんななか〈榛原〉の「雁皮紙」という良質な和紙は、なめらかな筆あたりで、細い字でもきれいに書けると評判に。ほかにも和紙に木版摺りで装飾を施した千代紙、団扇、便箋などが、粋を好む江戸の人たちに愛された。
〈榛原〉は和紙の伝統を重んじるのと並行して、時代の流れにも敏感に反応。文明開化を迎えると、ウィーンやパリなど各国で開催された博覧会にいち早く参加して、和紙の魅力を発信。その一方で日本でも西洋紙を扱い、紙の楽しみ方を広めていった。また国内の芸術活動をサポートして、数々の一流画家と交流を深め、〈榛原〉製品のデザイン原画を依頼。お得意さんだったという竹久夢二もそのひとりで、こうした原画は現在もさまざまなアイテムに取り入れられている。「木版摺 色ふちレターセット」は、白和紙に木版摺りと刷毛引きという伝統的な手法を使って縁取り。アーカイブされているオリジナルの図案をもとにした「ちいさい蛇腹便箋」は、折り目がミシン目になっていて、文章の長さに合わせて切り取り可能な、現代の巻き紙に。手紙のあり方や意味合いは、メールのなかった頃と今とでは大きく変わっている。送る相手の顔を思い浮かべて、一言一句考えながら丁寧に文字を書く時間の豊かさに、こうしたアイテムは気づかせてくれる。
変わらないもの 木版摺 色ふちレターセット(右)
便箋は、縁の部分にブラシで色を乗せて生み出す刷毛引きの手法。封筒は木版摺りで鮮やかに仕上げている。古くから愛されてきた定番アイテムの技法はそのままに、サイズをやや小さくしている。赤、青、橙、緑の4色展開。1,200円
新しいもの ちいさい蛇腹便箋(左)
ぽち袋とセットになった手のひらサイズの蛇腹便箋。麻の葉(右上)と松竹梅(右下)は〈榛原〉千代紙の図案。山みち(左下)は、竹久夢二が〈榛原〉のためにデザインした作品がもと。ちょっとしたメッセージカードとしても。各500円
〈榛原〉
店舗の壁は「色硝子」がモチーフ。光の加減で、表情豊かな菱型文様が浮かび上がる。
■東京都中央区日本橋2-7-1 東京日本橋タワー1F
■03-3272-3801
■10:00~18:30(土日~17:30) 祝、年末年始休
(Hanako1177号掲載/photo : Nao Shimizu text :Akane Watanuki edit : Seika Yajima)
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