昨年のリニューアルで、より華やかに。 “日本ミュージカルの聖地”、〈帝国劇場〉をもっと知りたい!定番人気の老舗サンドイッチも要チェック。

LEARN 2019.10.22

歴史的な建造物が点在する、東京の中心「丸の内」。時代を超えて愛される建物の歩みをたどると、そこに息づくスピリットと街との関わりが見えてきます。今回は、〈帝国劇場〉をご紹介します。

街を娯楽で活性化した日本を代表する大劇場。

昨夏の改装で劇場名の看板を刷新し、正面玄関に間接照明を増設して反射光の輝きが増した。
昨夏の改装で劇場名の看板を刷新し、正面玄関に間接照明を増設して反射光の輝きが増した。

東京宝塚劇場、日生劇場、シアタークリエ、オルタナティブシアター……。新旧さまざまな劇場や映画館が集まる「エンタメの街」、日比谷・有楽町エリア。その礎を築いたのが〈帝国劇場〉だ。開場は明治の終わり、1911年にさかのぼる。日本初の本格的な西洋式劇場として登場した〈帝国劇場〉は、国内はもちろん海外からもすぐれた劇団を招いて多彩な公演を行い、また専属女優を育成するなど、演劇文化の発展に貢献した。

エントランスを入ってすぐのところに、東宝の創業者、小林一三の銅像や帝国劇場の設立趣旨を記した銘板、旧帝国劇場時代のシンボルだった「翁の面」がある。
エントランスを入ってすぐのところに、東宝の創業者、小林一三の銅像や帝国劇場の設立趣旨を記した銘板、旧帝国劇場時代のシンボルだった「翁の面」がある。

1940年には阪急東宝グループの創始者、小林一三によって東直営の劇場に。日本で初めて「ミュージカル」と表記される作品を上演したほか、ワイドスクリーンによる「シネラマ」の上映でも話題を集め、最先端の娯楽を発信し続けた。その後、老朽化などで劇場は一旦閉場し、1966年に〝新生帝劇〞としてリスタート。

観劇以外でも非日常に浸れる空間。猪熊弦一郎作のステンドグラスや彫刻家・本郷新が手がけた仮面が飾られている。
観劇以外でも非日常に浸れる空間。猪熊弦一郎作のステンドグラスや彫刻家・本郷新が手がけた仮面が飾られている。
ロビー正面の階段にある、水引をかたどった電灯装飾「熨斗(のし)」。こちらも猪熊弦一郎の作品で1966年から設置される。
ロビー正面の階段にある、水引をかたどった電灯装飾「熨斗(のし)」。こちらも猪熊弦一郎の作品で1966年から設置される。
世界でも屈指の舞台機構により、スペクタクルなショーも楽しめる大型劇場。昨夏の改装で場内の絨毯と客席を一新し、エントランスの照明を増やしたことで、より華やかになった。
世界でも屈指の舞台機構により、スペクタクルなショーも楽しめる大型劇場。昨夏の改装で場内の絨毯と客席を一新し、エントランスの照明を増やしたことで、より華やかになった。

美術館さながらのロビー、約1800席の客席、大小4つのセリ(舞台床面の昇降装置)と回り舞台を持つ舞台機構など、帝劇の核は現在まで継承され、50年以上の歴史の中で『レ・ミゼラブル』『エリザベート』『Endless SHOCK』などのバラエティに富む作品を上演してきた。昨夏には「より快適な観劇空間を提供するため」に、客席やロビーを中心に改装を行った。

明治から令和へ、時代を超えて上質な娯楽を発信。

内壁のタイルは陶芸家・加藤唐九郎の作品。大量のタイルを制作するために自ら土を掘り、毎日焼きあげたといわれている。劇場への扉は、作品の演出に重要な役割を果たすことも。
内壁のタイルは陶芸家・加藤唐九郎の作品。大量のタイルを制作するために自ら土を掘り、毎日焼きあげたといわれている。劇場への扉は、作品の演出に重要な役割を果たすことも。
歴史を感じさせる席番表示のプレート。昨年のリニューアルで新しく設置した館内表示にも、クラシカルなフォントを使い、統一感を出している。
歴史を感じさせる席番表示のプレート。昨年のリニューアルで新しく設置した館内表示にも、クラシカルなフォントを使い、統一感を出している。

「歴史ある劇場だけに、環境面でもサービス面でも高い質でお客様をお迎えしたい」と、副支配人の鈴木美和さん。もちろん、作品も同様だ。繰り返し上演する名作を磨き続け、さらに〝帝劇ならでは〞の新しいエンターテインメントを創出することを常に意識しているそう。昨年上演された『ナイツ・テイル―騎士物語―』は、そのいい例だろう。

「この公演は長年、帝劇で座長を務めてきた堂本光一さんと井上芳雄さんの初共演であり、以前『レ・ミゼラブル』を手がけた世界的演出家、ジョン・ケアード氏が作り上げました。帝劇の歴史の積み重ねがあって船出した新作だったと思います。今後も新鮮な驚きを感じていただけるエンターテインメント作品をご提供していけたら」(鈴木さん)

昨年から売店のフードメニューが充実。気軽につまめる老舗のサンドイッチは定番人気。右・天のや玉子サンドイッチ 700円、左・赤トンボプチミックスサンド 550円。
昨年から売店のフードメニューが充実。気軽につまめる老舗のサンドイッチは定番人気。右・天のや玉子サンドイッチ 700円、左・赤トンボプチミックスサンド 550円。

東宝を創業した小林一三は宝塚歌劇団を作ったことでも知られる実業家。「よい設備で快適に、芝居を大衆に楽しんでもらう」ことを理想に掲げ、観客目線のサービスを徹底して劇場運営に邁進していたという。そのイズムがたしかに息づく〈帝国劇場〉を中心に、この街は新しい時代も、上質な娯楽を私たちに届けてくれるはずだ。

〈帝国劇場〉

明治末期、近代国家と肩を並べるべく、財界の重鎮を中心に設立された民間の劇場。
■東京都千代田区丸の内3-1-1 
■03-3213-7221 
■営業時間は上演作品により異なる 不定休

(Hanako1177号掲載/photo : Megumi Uchiyama text : Asami Kumasaka)

【お知らせ】Hanako.tokyoでは基本的に本体価格を掲載しておりますが、2019年10月1日の消費税率改定以前に取材・掲載した記事にある(税込)表記の金額については、旧税率での掲載となっております。ご了承下さい。

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