娘から父へ…おいしい日本酒おしえます! 『伊藤家の晩酌』~第一夜4本目/魚介料理に合わせたい! 青森生まれの日本酒「陸奥 八仙 いさり火」~
弱冠22歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?第4本目は、すっきりとした飲み口で、魚介にぴったりな青森の日本酒!
(photo:Tetsuya Ito Hibiki Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)
今宵4本目は、魚料理に抜群に合う食中酒「陸奥八仙 いさり火ラベル 特別純米 火入れ」
娘・ひいな(以下、ひいな)「今回は魚にぴったりな『陸奥八仙 いさり火』だよ。前にお父さんがお店取材して以来、親子で常連になった〈マルコ〉っていう神泉のお店で、いろいろな種類の『陸奥八仙』を取り扱ってて。そのなかでも一番魚に合うのがこのお酒なの。ラベルにも『漁火』が描かれてて、イカ漁の灯りが沖合にぼわっとなっていてきれいでしょ?
父・徹也(以下、テツヤ)「ラベルからして『魚に合うぞ』っていうのがわかるね」
ひいな「この『陸奥八仙 いさり火』は、特別純米っていうジャンルなの」
テツヤ「特別純米って何?」
ひいな「純米酒は、そう名乗るために精米歩合(お米を削って残った部分)の規定はないんだけど、特別純米と呼ぶためには精米歩合が60%以下(ちなみに純米大吟醸の条件は50%以下)になっているか、または何かしら特別な醸造方法で採用しているか、というのが条件に加わるの。たとえば、樽で保管しましたとかね。今回は、精米歩合が60%以下で、同じ青森県産の『花吹雪』っていう米を100%使っているっていうのがポイントになって、特別純米としているみたい」
テツヤ「なるほど」
ひいな「『陸奥八仙』のシリーズは純米吟醸とか、いろいろフルーティな香りのものもたくさん出していて。それとの差別化する意味で特別純米って言ってるんだと思う。特別純米っていう言葉から、お米の味わいとかふくらみとかをイメージできるんだよっていうことを今回伝えたくて!」
テツヤ「つまり、特別純米って付いているお酒は何かあるぞ!って思ったほうがいいってこと?」
ひいな「うん、日本酒好きな人にとって特別純米という言葉は食いつくポイントだね。特別純米ってことは何か特別なことがない限り名乗れないからわけだから、必ずボトルにもそれが明記してあるの。お米が特別だったり、醸造方法が特別だったり、保管方法が特別だったり…その“何か”が気になるから特別純米には反応しちゃう」
テツヤ「そりゃ、知らなかった!知ったかぶりして注文するなら、まずは特別純米だな(笑)。言葉はよく聞くけど、そういえば何が特別なのかはよくわかってなかったな〜」
ひいな「蔵によってその特別さは違うから面白いよね。たとえば純米酒ばかり作っているところが出す特別純米と、純米吟醸、純米大吟醸ばかりを出すところの特別純米は、意味合いが違うかもしれない。蔵の価値観によって造られているのが特別純米だから」
一目惚れした片口とおちょこで、いざ乾杯!
テツヤ「この白いつるっとしたおちょこにしよう!」
テツヤ「よし、じゃ、さっそく乾杯しよう!」
ひいな&テツヤ「乾杯!」
テツヤ「うわ!これ、すげードライだな。すごくさらっとしてる。クセがなくて飲みやすいね。酸も少しは感じるかな」
「陸奥八仙 漁火」に合わせるおつまみは「マグロの海鮮サラダ」
ひいな「『いさり火』に合うおつまみは、マグロの海鮮サラダにしてみたよ」
テツヤ「青森のお酒だからマグロか。合わせて飲んでみよう」
ひいな「マグロとかいわれを合わせて食べてね」
テツヤ「おぉ!これ、マグロと合わせて飲むと、ぜんぜん味が違う!これぐらい味にコントラストあるほうがおもしろいね。魚にも抜群に合うし、飲み疲れないのはこういうお酒なんだろうな」
ひいな「かいわれのピリッとした感じとも合うかなと思って」
テツヤ「たしかに、かいわれの苦味がたまんないね」
ひいな「本来は、白身魚とかイカとかが合うと思うんだけど、脂のあるマグロでも合うでしょ?」
テツヤ「最高に合う!で、かいわれがいい仕事してる!」
日本酒は単体よりも、つまみがあってこそうまさが引き立つお酒!
テツヤ「日本酒ってさ、単品で飲むよりもやっぱりおつまみとの組み合わせでさらにおいしくなるよね」
ひいな「『陸奥八仙』が海鮮に合うっていうのはわかってるけど、店員さんに魚に合うお酒ってなんですか?ってあえて聞くこともあるよ。このお酒も合うんだって、日本酒の知識を広げるために」
テツヤ「間違ってる可能性もあるんじゃないの?」
ひいな「でもね、それはきっとその人にとっての正解なの。それを楽しむのも日本酒の醍醐味かなって」
テツヤ「なるほどなぁ。勉強熱心だねぇ。そうやって知識を増やしていくんだねぇ」
テツヤ「メニューを見て、それに合う日本酒は何ですか?って聞くことが多いの?」
ひいな「そうそう。やっぱり、自分の知識だけだと、視野が狭いままだから」
テツヤ「お酒単体で、おいしいお酒教えてくださいっていうよりも、このお刺身を頼むから、これに合うお酒は何ですか?って聞いたらいいんだね」
ひいな「うん。そうすると、おもしろい答えが返ってきたりするから、聞くと楽しいよ。自分が店員側になったとき、ドギマギしちゃうんだけどね(笑)そういえば、前にお父さんが店に食べに来てくれた時『これに合う日本酒を順番に持ってきて』って言われて、いやだったなぁ(笑)。修行にはなったけどね」
テツヤ「(笑)。しかも飲みすぎて、最後にはお店で寝ちゃったしね」
テツヤ「ねぇ、最初の『仙禽』からもう一回から全部くれない?」
ひいな「(笑)。はいどうぞ」
テツヤ「これができるのが家飲みの良さだよね」
ひいな「でも、もう酔っ払ってきてるんじゃない?」
テツヤ「うん(笑)」
ひいな「違うジャンルのお酒をひとつのテーマで飲むって楽しい!
みんなで試飲会やりたいな!」
テツヤ「いつか公開収録で、読者の人にも比べて飲んでもらいたいね」
ひいな「うん、絶対楽しいね」
テツヤ「みんな遊びに来てくれるかな……?」
(次回は8月18日(日)更新予定です)