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30代のわたしたちが知っておきたい、更年期のこと

HEALTH 2023.11.15

女性特有の不調として知られる「更年期障害」。30代からすればまだまだ先のことのようにも思えますが、不安を抱えている方も少なくないかもしれません。
いつか来る更年期のために、今のうちからできる・知っておくべきことを、産婦人科医・女性ヘルスケア専門医の小川真里子先生にうかがいました。

知っておきたい女性のライフステージと体の変化

女性のライフステージは、「女性ホルモン」の変動と大きく関係しているのだそう。

小川先生:女性ホルモンには、エストロゲンと、プロゲステロンの2種類があり、妊娠出産の準備をするために毎月脳の指令で卵巣から分泌され、月経のサイクルをつくっています。

また、一生の中でも女性ホルモン(特にエストロゲン)の分泌量は大きく変化します。月経を迎える思春期から増えはじめ、20代〜30代になると安定し、妊娠や出産に備えます。ところが、40代後半〜50代のいわゆる更年期になると、急激に減少。閉経後には、女性ホルモンはほとんど分泌されなくなります。

エストロゲンは、乳房や生殖器の発達に関わっているだけでなく、全身に作用し、心身の健康にも大きく影響しています。そのため、更年期にエストロゲンの分泌が急激に減少すると、脳は「大変だ!」とばかりに、卵巣に指令を出します。エストロゲンの分泌はそれに合わせて増えたり減ったり乱高下を繰り返すことに。この“ゆらぎ”による負担が、更年期の不調に大きく影響していると考えられています。

人によってさまざまな更年期障害

女性ホルモンの分泌が大きくゆらぐ更年期に起こりやすい不調は、「更年期不調」や「更年期障害」とも言われ、その症状や出方は人によってさまざまだと言います。

小川先生月経周期が短くなったり、出血量が変わったりしだしたら、更年期の前段階のサイン。エストロゲンの分泌が揺らぎ、月経にも乱れが生じている状態です。その頃から、心身にもさまざまな不調が起こりやすくなります。

更年期不調の主な症状

更年期に出る不調の典型的な症状としては、「ホットフラッシュ」と呼ばれる、急なほてりや発汗があります。メンタルに不調が出る人も多く、「不安感」をはじめ不眠や鬱になるケースもあります。意外と多いのが、「尿もれ」です。更年期になると骨盤の筋肉や骨が老化することもあり、尿周りのトラブルが増えてきます。ただ、なかなか人に言えない悩みとあって、一人で抱え込んでしまったり、気にするあまり外出できなくなってしまう人も。よくある症状として覚えておいていただきたいですね。

更年期障害の治療法

病院での治療法としては、ホルモン補充療法と漢方が二本柱です。合わせて生活習慣の改善を促したり、メンタルの症状で悩んでいる場合には、抗うつ剤やカウンセリングを行うこともあります。ただし、この時期に起こる不調は他の病気が原因である場合も多く、更年期障害だと決めつけないことが大切です。

気になる不調があれば、ぜひ一度産婦人科を受診するようにしましょう。「日本女性医学学会」のWEBサイトで近くの専門医を探すことができます。また、受診を迷うようなときには、「女性の健康とメノポーズ協会」の健康電話相談などもありますので、気軽な相談先として利用するのもいいかもしれません。

更年期は、女性の一生の中でも大変なことが重なりやすい時期

仕事、育児、介護…更年期は、女性の一生の中でも大変なことが重なりやすい時期だと小川先生は言います。さまざまなストレスが更年期症状を悪化させてしまうこともあるそうです。

小川先生:更年期の症状は、女性ホルモンの変動、社会的・環境的なストレス、その人の性格の3つが要因となって起こると考えられています。

女性の一生の中でも更年期は、大変なことが重なりやすい時期。例えば、子どもが自立したことで心にポッカリと穴が空いてしまう「空の巣症候群」。子育て一筋だった女性が陥りやすいと言われています。また、仕事ではキャリアを重ねてきたことで昇進を打診されるなど、責任ある立場を任されることも。一方で、この年代の女性は不正規雇用である人も多く、経済的な不安で悩むケースも少なくありません。また、最近目立つのは、介護問題です。それをきっかけに夫婦の意見が割れて家族関係が険悪になってしまう場合もあるようです。

ただでさえ体に不調が出やすい時期に、次々とこうした問題が降りかかってくるのは、肉体的にも精神的にもかなり大変なこと。特に、もともと性格的に几帳面で真面目な人ほどストレスを感じやすく、更年期症状が重くなりやすいといわれています。

30代で起こる不調は、PMSの症状であることも多い

30代のうちから、更年期障害の不調が起こることはあるのでしょうか?

小川先生:30代後半あたりから、ほてりや不安感、気分の落ち込みなど、更年期によくみられるような不調を抱える人が増えるのは事実です。ただ、実際に診察してみると、PMS(月経前症候群)の症状であることが多いです。特に30代は、仕事と育児の両立で本当に忙しく、無理をしている人が多く、そのストレスからPMSを引き起こすケースは珍しくありません。ただ、なかには、早発卵巣不全(早期閉経)という病気によって症状が出ている場合も。いずれにせよ、月経の変化や、これまでにない不調を感じるときは、まず一度、産婦人科医に相談してみるのが安心です。

30代のうちからできること

いつか来るかもしれない更年期のため、30代のうちからできることを小川先生に教えてもらいました。

1.有酸素運動+筋トレ!運動習慣を身につける
習慣的に運動する人のほうが、更年期の不調が軽いというデータがあります。これまで何もしてこなかった人が、50歳から運動を始めるのはなかなか難しいもの。ぜひ今から習慣にしていただきたいと思います。おすすめは、「有酸素運動+筋トレ」。まずは無理なく、散歩と自宅での軽い筋トレで十分。大切なのは続けることです。

更年期、骨密度を保つ働きがあるエストロゲンが急激に減ることで、骨粗相症になる人がグンと増加します。運動習慣を持つことは、骨粗鬆症予防につながると同時に、将来寝たきりになるリスクを下げることにもつながります。

2.食事はバランスよく、豆類を意識的に
食事はバランスよく、楽しくが第一。その上で意識的にとりたいのが、カルシウムが豊富な乳製品や、豆類です。特に大豆はエストロゲン様作用があることから、女性に嬉しい食品と言われています。日本人はアメリカ人と比較して更年期障害が軽いのですが、それは、昔からよく味噌や納豆を食べてきたことが関係しているとも言われています。

3.自分に合ったリラックス法や趣味を見つける
育児に仕事に、多忙な生活を送っている人は多いと思いますが、できる範囲で睡眠時間を確保し、規則正しい生活を意識してほしいですね。ホッとくつろげる自分だけの時間や、夢中になれる趣味など、自分に合った気分転換法やリラックス法を見つけておくといいでしょう。そこから広がる人間関係なども含め、今後の人生の大切な支えになります。

4.月経や体調についてメモする習慣が役に立つ
日頃から体調やメンタルの状態、月経の様子などをメモする習慣を身につけておくと、いざ何か不調が起こったときに役立ちます。不調で不安になったとき、メモを見返せば、生理前に体調が悪くなるからPMSかもしれないと予想がつく。それ以上不安を大きくせずに済むこともあるでしょう。

5.かかりつけ産婦人科医を見つけておくと安心
毎年の健康診断に加え、1、2年に一度は必ず婦人科検診を必ず受けるようにしてください。同時に、ちょっとした不安や心配も気軽に相談できる、かかりつけ医を見つけておくと、今後更年期を迎えるにあたって心強いはず。事前に、更年期症状を診てくれる病院かどうかを調べておくと安心です。

更年期について、ほとんどの場合学校では何も習わないので、いざというとき不安になってしまう人はたくさんいます。でも、知識があれば必要以上に慌てずにすみます。
20代や30代のうちから積極的に情報を集めておくこと、自分の体について知っておくことはとても大切です。日頃から自分の体調の変化や生活に目を向け、整えておくことも、来たる更年期への備えとなるはずです。

text_Rennna Hata illustration_Rei Kuriyagawa

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