「27年間で3000食は食べてる」YOU常連のカフェ〈BOWERY KITCHEN〉の魅力

「27年間で3000食は食べてる」YOU常連のカフェ〈BOWERY KITCHEN〉の魅力
「27年間で3000食は食べてる」YOU常連のカフェ〈BOWERY KITCHEN〉の魅力
FOOD 2024.08.06
これまで70軒以上の店をプロデュースしてきたレジェンド、山本宇一さんが手がけた第1号店が〈BOWERY KITCHEN〉。創業当初から通う常連のYOUさんと、この店の27年を語っていただきました。
photo_Nobuki Kawaharazaki hair & make_Rumi Suwabe text_Emi Suzuki

山本宇一とYOUが見た、レジェンドカフェの27年間。

〈BOWERY KITCHEN〉オーナーの山本宇一さんとタレントのYOUさん
〈BOWERY KITCHEN〉からも程近い、山本さんが手がけるコーヒーショップ〈Pretty Things〉のオリジナルTシャツをお揃いで着用。示し合わせたわけではなく、偶然シンクロ! さすが長い付き合い。

駒沢公園通りにある〈BOWERY KITCHEN〉(以下バワリー)に入店するやいなや、店のスタッフたちと談笑を始めるYOUさん。その光景を微笑みながら見守る山本宇一さん。お互いのことをういちゃん、YOUちゃんと呼ぶふたりは同世代で、同じ時代を過ごしてきた昔からの遊び仲間。オープン当初から変わらず〈バワリー〉に通い詰めるYOUさんのように、この店に魅了されて長く通う人は多い。「ここはカフェではなく東京の食堂」と山本さんは言うが、〈バワリー〉の存在は、東京のカフェに大きな影響を与えてきた。地元の人がここで日常を過ごし、遠方からもこの店を目指して人が集まってくる。それは27年経った今も変わらない。どうして〈バワリー〉は、こんなにも人々に愛されるのか…。その理由は、ふたりの会話の端々に盛り込まれていた。

〈BOWERY KITCHEN〉の店内でスタッフと談笑するYOUさん
常連客はもちろん、子供やペットの名前まで覚えているという気配り上手なスタッフたち。「みんな本当にいい子ばっかで、家族みたいに仲がいいんだ~」と、スタッフの中に溶け込むYOUさん。
山本宇一
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やまもと・ういち/東京都出身。〈BOWERY KITCHEN〉、表参道〈Lotus〉などのオーナー&プロデューサーで東京カフェ文化の立役者。

YOU
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ゆう/東京都出身。モデル、バンド「FAIRCHILD」のボーカルとして活動後、タレント、俳優として幅広く活躍。

山本宇一
山本宇一(以下、山本)

YOUちゃんとは、共通の友達も多いし、ここができる前からの長い付き合いだけど、こうやって対談するのは初めてだよね。

you
YOU

もう遠い昔のことだし、いつ出会ったかなんて覚えてないよね。みんな同じようなところで遊んでばかりいたから「はじめまして〜」とか挨拶することなく、気づいたら仲間になっていた。うちらが最初に会ったのは、たぶんどこかのクラブか、ういちゃんがバイトしていた青山の〈SARA〉か…。

山本宇一
山本

そうだね。〈バワリー〉を始める前に、飲食業の経験が全くなかったから24時間営業のレストラン〈SARA〉でバイトしてたんだよね。そこは夜遊び好きの人たちが集う場所で、西麻布の〈SPACE LAB YELLOW〉とか、クラブ帰りの仲間たちがどんどん流れてきて、朝の7時ぐらいには知り合いだらけになることも多かった。

you
YOU

当時のクラブキッズはみんな〈SARA〉でごはん食べてから帰ってたよね。踊りまくるからお腹が減るんだよ。〈SARA〉までたどり着けない時は南平台の〈デニーズ〉に行くか。朝方ごはんが食べられる場所は当時本当に少なかった。

山本宇一
山本

でも僕は、渋谷とか西麻布とかで店をやる気は全くなかった。家賃も高いしね。駒沢周辺は幼少期に、父親によく車で連れてきてもらった場所で、なんとなくいいイメージを持っていたからここらへんで物件を探してね。当時は周辺に飲食店はほとんどなかったけれど、この店を内見している時に外車がいっぱい通ったから、感度が高く、遊びが分かる人が住んでいる街だからいけるかもと思った。

you
YOU

そうそう、遊び仲間もこのへんに住んでいる子が多かったから、〈バワリー〉ができた時はみんな「やった!」と大喜びしてた。そしたらあっという間に、人の流れが変わった。

山本宇一
山本

車で来る人も多くて、店の前に車が並ぶの。数えたら30台停まっていたこともあった。

you
YOU

通報されないの?

山本宇一
山本

当時はそこまで駐禁に対して厳しくなかったからね。でもレッカーで移動されないように30分ごとにスタッフが駐禁チェックしてた (笑)。

you
YOU

今じゃ考えられない…。

山本宇一
山本

夜もお客さんが絶えなくて、最初は深夜3時閉店にしたんだけど、深夜2時を過ぎても行列ができていたから、4時閉店に延ばしたんだ。

山本宇一とYOU
「〈バワリー〉がなくなったら飢え死にしちゃうからなくさないでね」とのYOUさんの言葉に、山本さんは苦笑い。「飽きっぽい性格だから27年もやるとは思ってなかったけど、これだけは飽きなかったなぁ」
山本宇一
山本

YOUちゃんは家族や友達と来ることが多いよね?

you
YOU

うん。私の息子がちょうど今27歳だから、生まれた時からカゴに入れて連れてきた。

山本宇一
山本

息子さんはここのごはんを食べて大きくなったもんね。

you
YOU

だって〈バワリー〉は何といってもごはんがうまい!私なんてこの27年間で3000食は食べてると思う。

〈BOWERY KITCHEN〉で食事をするYOUさん
YOUさんがこの日選んだメニューは親子丼。山本さんのお母さんのレシピだそう。「これは初めて食べたけど絶品。お母さん天才」。「自分たちが本当に食べたいものだけをメニューにした」と山本さん。
山本宇一
山本

世間ではカフェブームの草分け的存在とか言ってもらえるけれど、僕が作りたかったのは食堂。メニュー表にも「東京の食堂」って書いてあるしね。

you
YOU

ういちゃんのお母さまが書いた文字なんだよね。

山本宇一
山本

そう(笑)。〈バワリー〉のメニューはパスタもあれば、チャーハンもあるし、スープもある。家庭の献立みたいに。

you
YOU

ジャンルに縛られない自由さがいいの。肉や魚料理も豊富だし。私がよく食べるのはミートソースフィズィリとハンバーグ。これは本当に最後の晩餐にしたいぐらい。それ以外も何を食べてもうまい! 本当何か変なものが入ってるんじゃないかって思うぐらいの中毒性。

山本宇一
山本

何も入ってません(笑)。オープン当初からうちのごはんを作ってくれているふたりのシェフは〈SARA〉で知り合ったんだけど、その前にフレンチのシェフとかもやってたから何でも作れるんだ。メニューは70種類以上はあるんじゃないかな。

you
YOU

ファミレスより多いよね。定番メニューがあって、そこに新しいメニューがぽつぽつ増えていく感じ。そのほかにパンケーキやデザートもあって、アルコールも飲める。お茶しに来て、お腹空いたからごはん食べて、そのままお酒飲んで、気づいたら半日いるとか。様々なシチュエーションで便利に使える。

山本宇一
山本

お客さんが長くいると、お店も寂しくならないでしょ。

you
YOU

その自由さが気に入って、一度来たらリピーターになるから、ファンがどんどん増えていく。我々の遊び仲間が、毎日〈バワリー〉に来たいからってこの近くに引っ越してきたぐらいだもんね。その人は今も1日5回ぐらい来てるんじゃないかな。私もそうだけど、みんなここが自分の家だと思っている。

山本宇一
山本

芸能人もそうじゃない人もみんなフラットで、ここは誰もがニュートラルに過ごせる場所かもしれない。都心から少し離れているし、駒沢公園も近いから、みんなモードがオフになっている感じもいい。

マグカップ
〈BOWERY KITCHEN〉のロゴはいつの時代にもマッチするデザインとして山本さんが考案。店内の照明や家具も、ニューヨークで買い付けてきた当時のまま。
you
YOU

私はクーラーがガンガンあたる入口に近い場所がお気に入りの席。外から丸見えだけど、お客さんも気さくな人ばっかりだから、ここで知り合った人もたくさんいるしね。スタッフの子たちも適度にほうっておいてくれるから居心地もいい。

山本宇一
山本

そういう人間関係が店の中でしっかりできてはいるかな。

you
YOU

ういちゃんの姿勢から学んでいる部分が大きいんだと思う。そういえば昔、3人の新人ちゃんが入った時、赤いストローを店内の壁のあちこちに貼ったことがあったよね?

山本宇一
山本

テーブルごとに赤いストローを貼ることで、それがチェックポイントになり必然的にお客さんが視界に入るから、何か必要なものや、さげるものはないか確認しやすくなるという…。

you
YOU

あれは面白かった。そうやって学んでいくことでスタッフも接客を楽しんでいる感じがしたもん。〈バワリー〉は、「雰囲気がよくて、ごはんがおいしくて、人がいい」。この3拍子が揃う店って、そうそう見つからない。幅広い世代の人はもちろん、子供やペットも来るし、垣根がない社交場みたい。それがカフェというものなのかな?

カフェでおりこうさんにしている犬
〈BOWERY KITCHEN〉はペットもウエルカム。オープン当時、外に犬をつないでコーヒーを飲む常連さんがいて、店内にワンちゃんを招き入れたのがきっかけ。
山本宇一
山本

〈バワリー〉は自分の価値観を持っている人がたくさん集まる場所。職業も世代も異なるけれど、お店が持つ独特な価値や軸に寄り添った人が来るから、偶然隣に座った者同士で会話が弾んだり、何かが生まれたり。来る人が変わっても、27年間それが繰り返されてきた。そういう楽しいことが自然と起こる場所のことをカフェというならば、〈バワリー〉もそうなのかもしれないね。

BOWERY KITCHEN
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住所:東京都世田谷区駒沢5-18-7
TEL:03-3704-9880
営業時間:11:00(土日祝10:00)~24:00
定休日:無休
席数:53席
1997年オープン、カフェブームの草分け的存在。東急田園都市線駒沢大学駅から徒歩約17分という立地ながら、昼夜多くの客でにぎわう。

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