【参宮橋でひとりのみ】全国の“あの名店メニュー”が味わえるお店と、肴になる絶品パンが楽しめるお店
今日は、あの街でひとりのみ vol.03
“よそ行きの私”に少し“素”が混ざったような、どっちつかずの自分で楽しむ時間は外呑みならでは。そんな外呑みの醍醐味、たまには “ひとり”で味わいませんか。誰にも気を遣わなくていい。自分と対話をする。いつもじゃない人と出会う。知らない世界に飛び込めるひとり呑み、女性ひとりでも気負いなく楽しめる場所を、お酒業界の広報歴14年の児島麻理子さんが“あの街”で探索します。今回の街は参宮橋。
明治神宮の西参道への入口でもあり、代々木公園も近い緑あふれる参宮橋は、独特の気の良さとゆったりとした雰囲気がその魅力です。
東京の東側へも西側へもアクセスがいいという場所柄、さまざまな人が暮らし、カルチャーが交じり合い、デザイナーやファッション業界の方など、高感度の方も多い参宮橋。
この街だからこそ生まれる新タイプの店舗と、地元に愛されるレストランで一人呑み!
1軒目:各地の話題の店の逸品がオンメニューされたカウンター居酒屋〈寄〉
カウンターでの立ち飲みがブームとなるなか、新しいカウンター居酒屋の可能性を感じさせてくれるのが、昨年、参宮橋に突如として現れた〈寄〉(よせ)です。
お酒は、日本酒、クラフトビールからワイン、テキーラまでジャンルを超えて、そして料理は日本各地の美味しいものが“寄せ集め”され、フードカルチャーの発信基地となっています。
「酒 そば お食事」と書かれた老舗感すら感じる看板を通ると現れるのは、なんとレコードや洋服のショップ、そして、その奥に飲食を提供するカウンターがあります。
ここで味わえるのは、クリエイティブディレクターの南 貴之さんが自ら繋がったお店の看板メニューを集めた「あの店の逸品」です。
京都の木屋町の立ち食い蕎麦の名店〈suba〉や、四条大宮の酒場〈OKUTE〉など、知る人ぞ知る全国の味がセレクトされています。
そこにならぶレコードやアートブック同様、センスの良さが光る店舗がラインアップされていて、メニューをみるだけで気持ちが高まります。
今回のお目当ては、保存料無添加の熟成餡ともちもちの特注皮で人気の、富山「ミッちゃん餃子」。焼き餃子と揚げ餃子のなかで、今回はコクのある〈寄〉のオリジナルクラフトビールに合わせて揚げ餃子を。身が限界までパンパンに詰まった野菜の旨味もしっかり感じる餃子に、一口目から大満足です。
また、蕎麦メニューも充実した〈寄〉ならではの、炒った蕎麦の実をつかったフムスなど、オリジナルのおつまみもひと捻り効いたものが揃います。
また、ちょっと冷たいものが食べたいときに嬉しいのが、甘みではなく旨味のアイスクリームを提供する松江を拠点としたアイスクリーム専門店。蕗の薹、マッシュルーム、焼き茄子など、季節の味覚をアイスクリームに取り入れて、驚きある味わいを作り出しています。お酒と合うのが有難い!
そして、カウンターの後ろにずらり揃っているのは、それぞれのお酒のジャンルの専門家が取り揃えた、ナチュラルワイン、クラフトビール、フルーツブランデー、そして日本酒や本格焼酎。プロが選んでいるだけに、これは!というセレクションになっていて、自分が詳しくないジャンルのお酒も安心して選ぶことができます。
また、さまざまな楽しみ方ができるのも〈寄〉らしさ。
アイドルタイムがなく、終日使えるカウンターは、仕事が早く終わったときにさっと立ち寄るなど、いつでも一人呑みに開かれた場所です。
複数人できたときには、ガレージにあるハイカウンターや、縁側のような小上がりもおすすめ。畳張りの小上がりにはテーブルが置かれ、冬にはこたつになることも。参宮橋をベースにする人々の寄り合いスペースとなっています。
“自分たちが出合ったものを伝えて、みなさんにも発見してもらいたい”という想いから、これまでに福岡の手巻き寿司〈金時〉などのゲストレストランを迎えるほか、「あなたの知らないアチャールの世界」など、テーマを立たせたイベントをしています。2024年7月17日(水)には南九州を味わう「大焼酎祭」も。
〈寄〉の活動をみるだけで、いまのフードカルチャーがわかるはず。
これからの取り組みにも期待が高まります!
場所:東京都渋谷区代々木3-38-10 1F
営業時間:11:30〜23:00
定休日:水曜日
TEL: 03-6381-6131
公式インスタグラム:@yose_tokyo
2軒目:ベーカリー併設のナチュラルワインと料理を楽しむイタリアン〈LIFE son〉
駅に抜ける小道を歩いていくと現れる、緑に囲まれたテラス席のある半地下のレストラン。階段を降りると、焼き立てのパンの香りが漂い、入る前から幸福感が溢れます。
ここは代々木で20年以上愛されるレストラン〈LIFE〉の姉妹店の〈LIFE son〉。イタリアンをベースに山をテーマとしたジビエやキノコの料理が揃い、隣には自家製酵母を主体に国産小麦を使った焼き立てパンの〈TARUI BARKERY〉が店舗をシェアする形で入っています。内装には木材が多用され、山にあるお洒落な別荘のような雰囲気。
仲間とわいわい楽しむ飲み方も良いのですが、実は一人呑みがしやすいスポットです!その理由のひとつが、入口を入ってすぐのところにある小さなカウンター。
カウンターテーブルは常に一人呑みの味方ではありますが、テーブル席が回りにあったり、両端をカップルに挟まれたりするとちょっと落ち着かないもの。スタンディングでも気軽に立ち寄れるようなこの小さいカウンターなら、気兼ねなく、堂々と一人呑みが楽しめます。
〈LIFE son〉で揃えているのは、フランスを中心としたナチュラルワイン。セレクトを担当しているのは音楽家でもあるマネージャーの小木戸寛さんです。
「僕が入った10年前、まだ今ほどナチュラルワインは流行っていなくて、自分にとってはナチュラルワイン=インディーズという感じがしたんです。自分がやっていた音楽と重なる部分があったし、飲むとほんとに美味しくて、ナチュラルワインに出会ってワインが好きになりましたね」
生産量が少ないものも多いので、お店にあるかどうかは一期一会。好みを小木戸さんに伝えればぴたりと合うものを選んでくれます。
また、パンとワインを合わせる“パン飲み”ができてしまうのも、ベーカリー併設の〈LIFE son〉ならではの楽しみ方。美味しいパンってそれだけで最高のつまみですよね。
〈TARUI BARKERY〉の店主、樽井さんは実はワインがお好きで、小木戸さんのワインの師匠でもあります。ときに樽井さんのお店もワインバー営業をすることもあるとか。そんな樽井さんのパンがワインに合わないわけはない!
石臼挽きの全粒粉で作られたハード系のパンは酸味もあって、中身がぎっしりつまっています。自家製酵母もワイン用のブドウからおこしたものだそう。
天気のいい日にはテラスでのパン飲みは最高の贅沢になります。
お店で感じるのは参宮橋のコミュニティにしっかりと根付いていること。ご夫婦から子供連れまで客層は幅広く、Tシャツのユニフォーム姿のスタッフの方とラフに話をしている様子を目にします。
窓ガラスにも“私たちの”THOUGHTFUL MEAL(配慮ある食)“で体を温めてください”とポリシーが描かれているなど、地元の人に提供しているからこその想いのある食体験ができます。
長年地元に愛される〈LIFE son〉のカウンターで過ごせば、すっかり地元に受け入れてもらったような気分に。スタッフの心遣いとお料理で身も心も温まりますよ。
場所:東京都渋谷区代々木4-5-13 レインボービルⅢ1
営業時間:10:00〜11:00、11:30〜14:30、17:30〜20:30
定休日:月曜日
TEL:03-6276-1115
公式インスタグラム:@life.son
photo_Miyu Yasuda Text_Mariko Kojima