小石原はるかの“食事放談”EATING OUT
大衆酒場の嗜み方。

FOOD 2023.12.18

おしゃれなバーやビストロで飲むのもいいけれど、昔ながらの大衆酒場で一杯やるのも気分が上がる。数多ある店の中で、どんなところに行けばいいのか? 酒飲み賢者がおすすめの店と楽しむコツを教えてくれた。

photo_Kaori Ouchi illustration_Chihiro Yoshii text_Kahoko Nishimura

食に対してたゆまぬ情熱を注ぎ続けるライターの小石原はるかさんが、同志を招いて対談。今回は大衆酒場を巡り歩くモデル、倉本康子さんとトークすることに。

小石原はるか(以下、小石原) 私の飲み仲間でもあるモデルの倉本康子さんにお越しいただきました。倉本さんは『おんな酒場放浪記』に出演されていますが、お酒は昔から飲んでます?

倉本康子(以下、倉本) ボトルキープに憧れて、20歳になると同時に飲みに行きました(笑)。

小石原 さすが! プライベートでも飲み歩いていますよね。

倉本 もちろん! 去年からインスタにまとめるようになりました。そうしたらさらに出掛けるようになって、地域の特性を知れるのが面白くて、ますます楽しくなっちゃいました。

小石原 また一段階、深みにハマったんですね(笑)。

倉本 ちゃんと自分でリサーチするようになったんです。1人3000円未満とか、歴史があるお店とか、店員さんが素敵なところを見つけるとうれしい。

小石原 大衆的で歴史があって地域に根付いているお店が好きってことですね。お店の見極めってどうしてますか?

倉本 外から店内が見えるところは、客筋をチェックして様子を窺います。

小石原 見えないところは少しドキドキしますよね。逆に、事前情報なしで行ってみたら良かったお店ってありますか?

倉本 〈季節料理 車屋〉が大当たりでした。どれもおいしくて、旬のものが食べられるから、季節ごとに行くようにしています。

小石原 お刺身がとても綺麗!

倉本 ここは平塚なのですが、そういうなじみのない場所で当たりが出ると、喜びもひとしお。

小石原 都内では、この前連れて行ってもらったお店がおいしかったですねえ。

倉本 〈焼き鳥・もつ焼 新〉ですね。比較的新しいお店ですが、豚のチレが本当にうまい!

小石原 はい、丁寧な仕込みを感じました。

倉本 誰を連れて行っても喜んでもらえますね。

渋谷 〈焼き鳥・もつ焼 新〉 (焼き鳥)

上質な串焼きを、ほどよくカジュアルに。

常連客が連れてきたお客がまた常連に。こうしてファンを増やし続けるのは店主・岩渕新さんだ。「この肉屋さんと取引できなかったら独立は諦めていた」と、信頼するルートから仕入れる豚モツや鶏は、備長炭で丁寧に焼き上げ。クセのある部位もクリーンな味に。

下処理の手間を惜しまない、内臓系の串焼き。
自身も不得意だというレバーなどは、「いかに苦手な人にも食べてもらえるか」を目標に仕込む。柔らかく臭みのない味わいは感動的。

小石原 大衆感がありつつ、お店は綺麗でいいとこ取りですよね。そういえば〈大衆割烹 藤八〉は最近行ってますか?

倉本 ちょっとご無沙汰です。

小石原 久しぶりに行ったらやっぱり良かったですよ。今はビルの2階に入っているけれど、一軒家時代の雰囲気が残って。

中目黒〈大衆割烹 藤八〉(居酒屋)

新しい魅力を備えて守られるザ・大衆酒場のムード。
店内壁にはおびただしい数の品書き短冊が貼られ、サクッと一杯飲みたい人も、お腹いっぱいになりたい人も受け入れてくれる。古き良き雰囲気の中では、1977年の創業以来の名物「自家製腸詰め」はもちろん、2代目が考案するイタリアンおつまみも続々と増えている。

もう一人の店主”の看板犬が愛嬌たっぷりにお出迎え。
店内を自由に歩き回り接客するジャーマンシェパード「コタマル」は、立派なスタッフ。お客も予約時にお願いすれば犬同伴でOK。

“思う存分楽しむためには、身軽な格好で”(小石原はるか)

倉本 近々行かないと! 私が十数年前からちょくちょく行っているのが〈たちのみや喜平〉。ここは業務用酒類販売会社の休業店舗だった場所を、そこの営業マンがお店にしたのが始まり。一人で仕込みをしていて、小鉢がいろいろ。何よりお父ちゃん(店主)が最高なんですよ。

小石原 ぜひ行きたい!

倉本 1人から3人くらいで行くのがいいですね。

小石原 こういうお店って、少人数の方が楽しめるし、お店への配慮にもなりますよね。

倉本 支払いは現金のみのお店もあるので1000円札をたくさんファスナー付きポリ袋に入れて、手ぶらで行きます。荷物が多いと迷惑にもなりますし。

小石原 私も荷物をロッカーに預けて飲みに行くことがあります。リラックスして楽しむために、事前準備も大切ですね。

倉本 お店の人や常連さんに対して「お邪魔します」という気持ちで行くことも肝要。

池袋〈たちのみや喜平〉 (立ち飲み)

壁際にぐるりと陳列された多種多様な酒をちびちびと。

“店主と常連さんの雰囲気がいい店が正解”(倉本康子)

小石原 御意! 常連さんも多いけど、入りやすいお店といえば〈Andy’s 新日の基〉でしょうか。

倉本 まさに!

小石原 代目店主のアンディーさんがイギリス出身で元ラガーマンだったこともあり、ラグビーの選手やファンが多いんですよね。外国の方もたくさん。

倉本 魚がおいしいですよね。それで言うと〈本種〉は、築地で寿司飲みができておすすめ。

小石原 ああ! 行ってみたいお店です。

倉本 ご家族で経営されてて、めっちゃ江戸っ子のお父さんがいるんですよ。いや、いいお店を挙げたらキリがないです。

小石原 心から酒場を愛していることがひしひしと伝わってきました。またぜひ一献!

有楽町〈Andy’s新日の基〉 (居酒屋)

安くておいしい、を実現させる歴史。

次号のゲストは小寺慶子さんで、「パスタのおいしいイタリアン」がテーマです。

photo_Kaori Ouchi illustration_Chihiro Yoshii text_Kahoko Nishimura

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