美味しいパンの理由 〈中川農場〉の小麦がすごい！
人気パン職人がこぞって選ぶ小麦の秘密

全国的に国産小麦の可能性を見つめる動きが活発化しているなか、北海道音更町で小麦を育てる〈中川農場〉の中川泰一さんは、いま、なにを思うのか。「実家の農業を引き継ごうと決めたのは、人のためになる仕事をしたいという思いからでした。化学肥料や農薬を用いなくても小麦を育てられるかもしれないと少しずつ可能性を探ってみたんです」と中川さん。試行錯誤を繰り返しながら、化学肥料を使わない自然農法にたどりつき、現在は広大な畑で小麦と大豆の2作目を栽培。いつしか、中川さんを訪ねて日本全国からパン職人が訪れるようになった。

もともとはキタノカオリやホクシンといった現代品種を育てていたが、中川さんは8年前から古代品種のスペルト小麦の栽培に着手。「北海道が適作だったのか想像より難しくはなかった。小麦って不思議で、雑草が生えても大丈夫なんです。それに気づいてからはなにかをするのではなく、より自然に近づくには自己を消す作業が必要だと。そのなかで偶然生まれたのが、いろいろな品種を合わせたブ・レ・ドゥ・ポピュラシオンです。混ぜ物なんて売れないと思っていたけれど〈カタネベーカリー〉の片根さんが使ってみたいと言ってくれて。だから、僕はパン屋さんとそれを理解してパンを買ってくれるお客さんのおかげで自然に即した小麦を育てられるんです。ひとりでやっているので規模拡大は難しい。悟りが開けたらやめようかななんて話したりしていますけれど、それにはもう少し時間がかかるかな」と笑った。

中川農場の小麦を使ってパンを焼き上げる人気パン職人を紹介します。