大銀座から始まる東京小旅行
#カウンターが好き。SPECIAL
建築家の座二郎が、カウンターのある魅力的なお店を絵と文で紹介する連載「カウンターが好き。」の拡大版。今回は、数ある銀座のお店の中でも、異彩を放つカウンターを持つバーを訪ねてみました。とても長い形と、丸い形。数字の「0と1」、あるいは電源のオンとオフ(I/O)のような対照的な二軒です。
丸いカウンター/LITTLE SMITH(リトル スミス)
〈リトル スミス〉は30年の歴史あるバー。丸いカウンターはグループで座ってもゆったりと内側を向いていて話しやすい。円形の半分は壁の向こうにあり鏡にもみえる不思議な洞窟のようでもある。吸音用のルーバーが天井に吊られているが、吸音設計を上手に利用できる内装設計者は少ない。東京オペラシティを設計した建築家の故・柳澤孝彦がデザインしたというのも頷ける。また部屋は四角いのに円形に使うので客席数が少なくなっていて空間が贅沢に使われている。
ブラッディシーザーは蛤エキスのまろやかなスープのような味がして体に良い。「まろやか」は漢字で書くと「円やか」。まろやかなお酒が良いとよく言われるが、お酒と円形は相性が良いのだ。
長いカウンター/ATELIER MUJI GINZA Salon
(アトリエ ムジ ギンザ サロン)
〈無印良品 銀座〉のエスカレーターを上がっていくと、6F〈ATELIER MUJI GINZA Salon〉に10mの長いカウンターがある。カウンターの入り口付近は会計等に使われていて、その他は客席。幅も1m以上あるから自分の資料など広げて過ごせるし、向いのお客さんも気にならない。
ワッフルにサーモンがのったものとフレッシュハーブが美しいモヒートを頼んだ。ワッフルは甘いものだけじゃなくて食事にもよくあう。
オーダーからサーブ、会計まで全て一つのカウンターの上で行われる。銀座の海に浮かぶ大きな木の板で思い思いの時間を過ごす。そんな船に乗っているような気持ちになる。夜の営業が復活したら長い夜にふさわしいカウンターになると確信した。