素朴な味にほっとする、くるみとデーツのビスコッティ|矢野仁穂の「日曜日の朝おやつ」

FOOD 2023.02.16

焼き菓子屋〈カサネ〉のオーナー・矢野仁穂さんが、日曜日の朝に食べたい「朝おやつ」をお届けする短期連載。今回のテーマは、くるみとデーツのビスコッティです。

2023年、新しい世界に動揺しています

ここ最近、初めましての方とお話しする機会が続いています。新年だからでしょうか(多分違う)。
実は名前だけ知ってる、なんて方もいたり。私の中の普通の日常がそんな新しい出会いによってぐわっと広がりつつあります。何気なく歩いていたのに、ふと周りを見たら知らない世界に迷い込んでた…そんな感覚。しかもなんか、あれ?空も飛べそう?みたいな浮遊感まで。
抑えきれないわくわくを連れてお家に帰ってきたのに、一息ついたら急に怖くなりました。なんでだろう。こういう時って、怖くなるんですね。
そんなこんなで今日もまだ、引きずっている気がします。こういう時はなぜかお菓子も失敗が多いんです。でも、こういう時こそ、ぜっっっっったいに失敗したくない。これ以上、私の心を動揺させたくない。
ということで、出番です。安心と信頼のとっておきを作ります。

1月寧日/曇りのち晴れ「くるみとデーツのビスコッティ」

素朴な味にほっとする、くるみとデーツのビスコッティ|矢野仁穂の「日曜日の朝おやつ」

私のとっておき、こと、ビスコッティ。イタリア出身のこの子は、どんな組み合わせでも受け入れてくれる懐の深い子なんです。作り方は混ぜて焼くだけ。あっという間に完成するかと思いきや、じっくり焼くので少し時間はかかります。そんなところも、なんだか、いい。
今日はくるみとデーツ。苦味とコクのある甘さの組み合わせが大好きで、よく登場するタッグです。

素朴なビスコッティに、少しの癖を。よし、丁寧に作ります。

素朴な味にほっとする、くるみとデーツのビスコッティ|矢野仁穂の「日曜日の朝おやつ」

■材料(5cm×2cmの長方形、約10枚分) 所要時間50分ほど
デーツ…30g
くるみ…20g
卵…1/2個
きび砂糖…25g
米油…大さじ1/2
全粒粉…60g
ベーキングパウダー…小さじ1/4

★準備物
ボウル(大きめ)
オーブンシート

【1】まずは下準備。デーツとくるみを粗く刻みます。食感を楽しみたいので、細かすぎなくて大丈夫。生地になじむよう、5mm角を目安に、といいつつ適当に刻んでください。
【2】今日は早めにオーブンを180度に予熱。生地があっという間にできちゃうのが、ビスコッティのいいところ。忘れないうちに温めちゃいましょ!

【3】ボウルに、卵ときび砂糖、米油を入れて泡立て器でよく混ぜます。イメージは、全体が混ざってもったり重たく感じるまで。写真では別のお椀で卵を溶いていますが、直接ボウルの中で溶いても◎。

【4】全粒粉とベーキングパウダーをふるい入れて、ゴムベラで混ぜる。素材の味をそのまま感じられるビスコッティには、風味豊かな全粒粉を合わせるのが好きなんです。

【5】くるみとデーツを加えて、ざっくざく混ぜる。全体に行き渡ったかな?と思ったらOKです。この2つの材料が、焼き上がった時の香り・味・食感を豊かに楽しくしてくれます。

【6】生地を長方形に成形!縦5cm、横15cm、厚さ2cmくらいが目安ですが、お好きな形で大丈夫。スライスして2度焼きするので、最終系をイメージして成形してみてください。生地がベトベトする時は、手に水を少しだけつけるのがおすすめ。手に生地がつきにくくなります。
【7】予熱済みのオーブンで、170度15分。まずは1度目の焼成です。今のうちに洗い物〜!今回は多分ボウルと調理器具だけ。優秀な朝おやつです。

【8】周りの生地が焼き固められたのを確認したら、包丁でカット。1.5〜2cmくらいの厚さがあると、食べ応えのある大きさになります。焼き立ての生地は崩れやすいので気をつけて!時間に余裕があるなら、粗熱が取れてからのカットがおすすめです(私は早く食べたくてすぐ切る)。
【9】オーブンを150度にセットし直して、再び焼成。25分ほどじっくり焼いて水分を飛ばします。この工程のおかげで、あの、かたい食感ができるんです。

【10】表面に軽く焼き色がついたら完成!ほわっといい香り、しませんか?

いざ、朝おやつ!

今月の朝おやつ、いかがでしたでしょうか。もっとシンプルに粉とスパイスだけだったり、仕上げにチョコレートをかけたり。ビスコッティはその時の気持ちに寄り添ってくれるやさしい子。出会ってから1番、私を助けてくれるお菓子かもしれません。

無心で、無言で、食べて、食べて。素朴な味に包まれて。ズンズン進んで行きたいけれど、空を飛ぶのはまだ怖い。まずは、地に足のついた、あたたかい人になりたいです。
今日はもう少しビスコッティとのんびりします。皆様も、のんびり癒しの日曜日を!

今月のプチアレンジ

そのまま食べてザクザク感を思う存分満喫するのもいいけれど、お気に入りのコーヒーにつけて食べるのもおすすめ。かたい生地にコーヒーが染み込んで、柔らか食感に。アフォガードとか、ティラミスとか、甘みと苦味が行ったり来たりするあの感じがまたたまりません。

photo:Wataru Kitao

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