プレハブ小屋で千葉を食す。中目黒のレストラン〈nou〉の宮地大介さん|星子莉奈のMeet the Chef
レストランのプロデューサーやディレクション、PR、ライターとして活躍する星子莉奈さんが、気になる店のシェフをクローズアップする短期連載。第3回は、中目黒にあるレストラン〈nou〉の宮地大介さんの登場です。
〈nou〉の宮地大介さんにインタビュー
みなさんこんにちは!冬の寒さが落ち着き、ゆるやかに春の気配が近づいてきましたね。私はそろそろ河津桜でも拝みに行こうかな〜と、お花見行脚の予定を企て始めた今日この頃です。
さてさて、第3回目は中目黒のプレハブ小屋で腕を振るう若きイケメンシェフ〈nou〉の宮地大介さんに会いに行ってきました。
神泉の〈ぽつらぽつら〉や系列店の〈うつらうつら〉で経験を積んだ宮地シェフと、アパレル出身のオーナー・板垣 亮さんがタッグを組んで2020年にオープンした、ジャンルレスで自由なレストラン〈nou〉。
プレハブ小屋の2階という稀有なロケーションに思わずびっくりしてしまいますが、扉の先に広がる光景はさらにびっくり。思わず「センスの塊…!」と、つぶやきたくなる洒落た内装。このギャップに魅了され、高揚感に包まれた初来店の日が記憶に新しいです。
地元の千葉県にある大学に通っていた頃に出会った2人。東京への上京をきっかけに親交が深まり、互いの家を行き来する仲に。
「毎晩、湯豆腐をつまみにお酒を酌み交わしながら、将来について語り合っていました。別々の道を歩みながらも、いつか一緒にお店を持ちたいというビジョンが生まれたのもこの頃です」。
その後も切磋琢磨しながらそれぞれの道を突き詰め、色々なタイミングが重なった3年前にようやくお店を出す運びに。しかし、コロナとタイミングが重なってしまい開店早々苦境に直面。そんな状況を一変させたのが、常連さんの口コミから舞い込んだ雑誌の取材。その記事をきっかけにお店の存在を知る人が増え、軌道に乗り始めたそう。
「お店をはじめた当初は“駅から離れたプレハブ小屋”というロケーションが不利だと感じていましたが、今となってはこのサプライズ感が功を奏していると感じます」と、当時から今に至るまでを振り返りながら語ってくれました。
大学卒業後、神泉の〈ぽつらぽつら〉に就職し、料理のいろはを一から学んだ宮地シェフ。「様々なジャンルの料理人が集まるお店で料理を教わったので、僕は雑種系なんです(笑)」と、はにかみ気味。多彩な料理の要素を詰め込んだ予想外な一皿でゲストの好奇心を刺激するのが得意なのも納得です。
下積み時代から、日々新しいメニューを考案し続けるという教えが身に付き、今でもその日に入荷した食材と向き合いながら毎日違うメニューを作り続けているそう。
この日の一皿目は鮮やかな色合いが眩しい「ブリと根菜と甘夏のサラダ」。島根県産の脂が乗ったブリと千葉県東金みろく農場のフレッシュなお野菜を使用。素材の旨味をしっかりと引き立てる爽やかな柑橘のドレッシングがアクセントに。ブリのプリっと具合がとにかく最高で思わず言葉にならない歓喜をあげました(笑)。
サラダに合わせて亮さんがコーディネートしてくれたのは、〈ドメーヌスローズ〉というワイナリーの「ガリネット」というプロヴァンス地方の白ワイン。白桃や洋梨のニュアンスを含んだ蜜っぽくほのかに甘い白ワインがドレッシングの酸と見事にマリアージュ。
毎回、密かにたのしみにしているのが〆に出てくる土鍋ごはん。この日はALL千葉県産の食材を使用したという「林SPFのパンチェッタとドライトマトの炊き込みご飯」。
「食材は、僕たちの出身地である千葉県産のものが中心。自分達で足を運んで見つけた信頼のおける生産者さんから仕入れています」。
丁寧に育てられた千葉県産の食材をたっぷりと使用した郷土色豊かなお料理は、食べ手に千葉の魅力を知るきっかけを与えてくれます。
先入観にとらわれない伸びやかな感性から生み出されるお料理に毎回感動のため息。頃合いよくコーディネートしてくれるワインもセンス抜群で、全て委ねて心置きなく心地良い空間にどっぷり浸れるなんとも贅沢な場所。宮地シェフ、ありがとうございました。
〈nou〉
■東京都目黒区東山1-9-11 2F
■03-6303-0034
■18:00〜23:00(金土のみ22:00〜26:00頃までBAR TIME)
■不定休 ※食べログにてご確認ください。