街の雰囲気に溶け込むベーカリー。 白金〈Seiji Asakura COFFEE STAND〉&不動前〈大久保ベーカリー〉/池田浩明のまだ見ぬパン屋さんへ。

FOOD 2023.02.09

目黒駅の西と東で異なる顔。白金を擁する東口方面は、高級店が立ち並ぶ大人の町。西口はインテリアショップが集まる目黒通りへとつながる。街の雰囲気に合わせた店をみつけた。パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まだ見ぬパン屋さんへ。」からお届け。

白金〈Seiji Asakura COFFEE STAND〉世界一を、パンにもコーヒーにも求めた結果は?

チクタクチクタク……店内ではメトロノームが時を刻みつづける。BGMではない。コーヒーの抽出のための音。下にセットされたコーヒーに向け、ガラスの水瓶から秒に回水が滴り落ちる。テンポが少しでもずれれば求める味にならない。ペースの乱れがないか油断なく確認しつづける、そのための音。たった1杯を6時間かけて抽出する。
名店〈ブーランジェリー セイジ アサクラ〉は創業から15年目。朝倉誠二さんが新店に挑んだのは、中目黒の〈カフェファソン〉で飲んだカフェグラッセがきっかけ。漆黒のコーヒーと真っ白なミルクの層のうつくしい飲み物だ。「これやりたい。こんなおいしいもの、なんで知らなかったんだろう」やりはじめたら、世界一を作らなければ気が済まない性分。「もうできないんじゃないか」そんな袋小路に入りつつも、ついにたどりついたのが前述した製法だ。

このコーヒーに最高に合うパンを。思いついたのは、ド直球だ。フランス修業時代になじんだバゲットサンド。グリュイエールやハムの一級品をはさむのは、「僕の人生の最終形」と呼ぶ、自家培養レーズン液種のバゲット。魂に響くレーズン種の香り、それが小麦とあいまって恐ろしく甘い。硬い皮が、想像の上をいくスムーズな歯切れを獲得するのは、最新のスチームオーブンによるもの。
ファサードに店名さえない。ごくシンプルな店舗に、朝倉さんが最高にうまいと思うものだけを置く。「人生をかけた店です。そぎ落として、そぎ落として。本質を表現していきたい」

〈Seiji Asakura COFFEE STAND〉について

_MG_0084

住所:東京都港区白金台4-9-21 │ 地図
電話番号:03-6780-8219
営業時間:10:00〜18:00
定休日:月、火曜
チーズカレーパンで名を轟かせる〈ブーランジェリー セイジアサクラ〉がオープンした水出しコーヒー専門店。

不動前〈大久保ベーカリー〉上質でリーズナブル。うれしいパン屋さんの誕生。

名店〈カタネベーカリー〉から才能ある若手が巣立った。店主の大久保伊織さんは、製法だけでなく志も受け継ぐ。すべて自家製。看板さえも商店街組合理事長さんの手書き。商店街の古い店をリニューアル。なつかしさとぬくもりを感じさせるのだ。
なんということもない定番のアイテム、にこだわりが詰まる。オーガニックの素材から手作り。あんぱんのあんこやカレーパンのカレーもやさしい中に滋味を感じさせ、感動するレベル。

〈大久保ベーカリー〉について

_MG_0024

住所:東京都目黒区目黒4-12-2 │ 地図
営業時間:10:00〜16:00
定休日:日、月曜
代々木上原の名店〈カタネベーカリー〉出身。オーガニックなどの食材を使いつつ、リーズナブル。ご近所の日常に寄り添う。

photo:Kenya Abe text:Hiroaki Ikeda

Videos

Pick Up